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インタビュー

T.T彩たま・上田仁(前編):全日本社会人選手権優勝~休んだからこそ得たものがある~

2021年12月16日 12:00配信
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近年、日本が飛躍的に力をつけ、世界一の座にも手が届きつつある卓球。

試合では、スピード、回転、コースの変化を組み合わせ、戦術を練り、その勝敗には、メンタル面も大きく影響する。選手たちは、わずか直径40mm、重さ2.7gのボールに人生をかけ、それぞれの物語を紡いでいる。

この連載コラムでは、さまざまな選手たちにインタビューし、そのプレーや人間性の魅力に迫る。

今回は、オーバートレーニング症候群による1年間の休養を経て、10月に行われた全日本社会人選手権で4回目の優勝に輝き、復活を果たした上田仁選手。(インタビューは11月12日実施)

(聞き手・文=山﨑雄樹)

<前編・全日本社会人選手権優勝~休んだからこそ得たものもある~>

※写真は上田仁選手(左)と英田理志選手


―まずは、全日本社会人選手権での優勝、おめでとうございます。振り返っていかがですか。

上田仁選手(以下、「」のみ)

「ありがとうございます。病気を経験してT.T彩たまに移籍をしましたが、なかなかチームに貢献できていないという状態(シングルスは1勝1敗、ダブルスは0勝6敗)での全日本社会人選手権でした。自分ではよくなっているという実感はありましたが、うまく結果とマッチしていませんでした。ですので、今回、優勝という結果が出たことで、自分のやってきたことが間違いじゃなかったと思うことができました」


―よくなっているという実感があったのは、練習の成果ですか。

「去年に比べてかなり練習は積めています。去年復帰はしましたが、約1年間の休養期間がありましたので、口では『以前の自分を超える』とは言っていますが、実際に以前のよかったときの自分に戻れるかと言えば、ハードルは高いです。そこで、少し卓球のスタイルや用具を変えようと考えました。しっかり練習ができるからこそ、変化を意識してきました。ちょっとした変化ですが、何かを変えるとさまざまな感覚が変わってしまうので、長年卓球をやっていると、ちょっとした変化でさえ怖いものなんです」


―プレースタイルの変化について教えてください。

「僕の中学時代は、右利きの選手は右足を後ろに下げて、左足を前にして半身に構えて、重心を右に寄せて左に乗せるというフォアハンドの打ち方を、当たり前のように教わって、当たり前のようにプレーして、その打法が身に付いています。

ですが、今の卓球は速いバックハンドが主流です。皆、両足が平行か、右足が少し前にあって、自分とは逆です。自分の良さでもあるフォアハンドをいかすのであれば、これまでの打法のままでいいのですが、年齢を重ねるに連れて、身体のキレや動きは落ちてきてしまいますので、このままでは難しいと考えました。ですので、今は特に前陣でプレーするときなどに、思い切って両足を平行か、右足を少し前にする意識でプレーしています。そうすることでバックハンドが振りやすくなりました。

4月にT.T彩たまに移籍して、坂本(竜介)監督と話をして取り組んできました。ただ、実はこの取り組みは結構難しくて、スタンスを数cm変えるだけで感覚は気持ち悪いぐらい変わってしまいます。ですので、いきなり変えるのではなくて、1~2か月で2cm~3cmという具合に少しずつ変えていきました。ようやく今、両足が平行か右足が少し前で卓球ができるようになりました。スタンスが変わればもちろん戦い方も変わります。

また、プレースタイルを変えるきっかけになった出来事もありました。(世界選手権日本代表の)張本(智和)、戸上(隼輔)、宇田(幸矢)といった若い選手のプレーはやはり速いです。なぜだろうとすごく考えました。ヒントを得たのは6月に行われたアジア選手権の代表選考会でした。

T.T彩たまからは神(巧也)選手と英田(理志)選手が出場しましたので、練習相手兼ベンチコーチとして帯同しました。選手として参加した過去の選考会では、『選考会を通りたい、勝ちたい』という気持ちばかりで殺気立っていて、周りが見えませんでした。ですが、今回は選手としての参加ではありませんでしたので、客観的に皆を見ることができました。調子のいい選手を見て、いろいろなことに気づきました。共通していたのは、自分の身体の使い方と少し違うということでした。初めての出来事でしたが、素直に『僕に足りないな』とか『真似できたら面白いな』とか、思うことができました。

なかなか選手の立場で参加していると、気づくことはできませんし、仮に他者が気づいてアドバイスをしてくれたとしても、自分の考えが先行しがちですが、違う視点で見ることができました。そこでヒントを得て、さらに練習に取り組んだところ、すごくプレーがよくなりました。

ちなみに、僕の中学、高校の先輩である水谷(隼)さんは、『半身の体勢で打て』と指導者から言われていた中学、高校時代でさえ、スタンスは平行でした。もちろん、そのスタンスについて『あれでは動けない』、『フォアハンドを力強く打てない』など、よく言わない人も何人かいらっしゃいました。でも、今思えば時代を先取っていたのだと思います。いろいろな技術の進化に対応して勝ち続けることは、やっぱりすごいです。さらに、中国人選手の練習の映像を動画投稿サイトでたくさん見ましたが、足の使い方が僕とは違いました。こういったことは僕が日本代表にいるときには気づくことができなかったことです。

休んだからこそ素直に他の選手のよさを感じられるようになりました。休養前は、自分が勝ちたいという思いばかりが強くて、『あいつの弱いところはどこで…』という見方しかせず、他の選手の優れているところを自分に落とし込んで考える素直さがありませんでした」


―用具の変更についても教えていただけますか。

「ラケットは変えていませんが、休養から復帰したときに両面のラバーを変えました。1年も卓球をやっていないことを、いい意味でとらえて思い切って変えました。どうせやるなら、ニュースタイルでと考えました。

今まではバリバリのテンション系ラバー(反発力が高いラバー)を使っていましたが、今まで使ったことのない微粘着(表面が粘着質で摩擦力が高い)のものに変えました。これは相手のボールをうまく利用することが狙いです。テンション系のラバーは自分から攻めるためのラバーで、もちろん、今は攻撃的な卓球が主流で攻撃力がないと勝てないのですが、世界のトップ選手を見ると、攻撃が目立つなかで要所での守備もうまいです。そういった1本、2本の守備があるからこそ、より攻撃が際立って見えます。

以前の僕は、自分の持ち味である安定感をベースに、テンション系のラバーを使って、自分からどんどん攻めるスタイルでした。ただ、その一方で守備に自信がありませんでした。粘着性のラバーを使うことで、回転がかかりやすくなり、自分のプレーがやりやすくなると同時に、変化が生まれて相手にとっても少し打ちづらくなります。相手に打たせて点を取るボールも追求しようと考えました。(オリンピック金メダリスト)中国の馬龍選手も中国製の粘着ラバーを使っていて、そういった戦い方がすごくうまいです。そこにヒントがあり、お手本になります。自分は、ゴリゴリの超攻撃型の卓球よりも安定感という長所があるのであれば、そこを最大限にいかそうと考えました」


―休養から復帰しての優勝の喜びは、とても大きいものだったと想像します。

「練習をして以前の自分に戻ったとしても、同じプレースタイルであれば『限界が見えているよな』と感じていました。休んだからこそ思い切ってチャレンジができて練習も積めていたので、すごく結果が欲しかったのですが、なかなか結果に結びついていませんでした。ですので、全日本社会人で結果が出て、思い切ってチャレンジしてよかったと思いました。

休んだことによって失ったものがないとは言えませんが、休んだからこそ得たものもあると感じることができました。この年齢になってからですが、変わることや何かに挑戦することは大事だなとあらためて思いました。過去に3連覇はありますが、まったく別の喜びがあります。自分なりのいろいろなストーリーがありますので、今回の優勝が一番嬉しかったです」

(中編は、上田選手が苦しんだオーバートレーニング症候群について詳しくうかがいます。)


【プロフィール】

上田 仁(うえだ じん)

1991年12月10日生まれ。京都府舞鶴出身。3歳のときに兄と姉の影響で卓球を始める。出身校は青森山田中学・青森山田高校、青森大学。全日本社会人選手権では2015年の初優勝から3連覇を達成後、4年ぶりに出場した今年度も優勝に輝く。

国際大会では2018年のチームワールドカップに日本代表として出場し、準優勝に大きく貢献した。実業団の協和キリンを退社後、Tリーグの岡山リベッツで3シーズンプレーし、1stシーズンのダブルスのベストペアに選ばれ(パートナーは森薗政崇)、今シーズンはT.T彩たまに移籍。戦型は右シェークハンド両面裏ソフトのドライブ攻撃型。安定感ある緻密なプレーが持ち味。


【著者プロフィール】

山﨑 雄樹(やまさき ゆうき)

1975年生まれ、三重県鈴鹿市出身。小学生、中学生と懸命に卓球に打ち込んだが、最高成績は県4位、あと一歩で個人戦の全国大会出場はならず。立命館大学産業社会学部を卒業後、20年間の局アナ生活を経て、現在は、フリーアナウンサー(圭三プロダクション所属)として、Tリーグ(dTVチャンネル・ひかりTV・AmazonPrimeVideoなど)や日本リーグ(LaboLive)、全日本選手権(スポーツブル)など卓球の実況をつとめる。東京2020オリンピック・パラリンピックではNHKEテレのナレーションを担当。また、愛好家として、40歳のときにプレーを再開し、全日本選手権(マスターズの部・ラージボールの部)に出場した。

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