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インタビュー

T.T彩たま・神巧也(後編):プロ卓球選手としての覚悟と背番号「15」の秘密

2020年12月28日 13:00配信
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近年、日本が飛躍的に力をつけ、世界一の座にも手が届きつつある卓球。

試合では、スピード、回転、コースの変化を組み合わせ、戦術を練り、その勝敗には、メンタル面も大きく影響する。選手たちは、わずか直径40mm、重さ2.7gのボールに人生をかけ、それぞれの物語を紡いでいる。

この連載コラムでは、さまざまな選手たちにインタビューし、そのプレーや人間性の魅力に迫る。

初回は、実業団でプレーする「会社員」からプロ選手に転向し、世界ランキングを急上昇させたTリーグ・T.T彩たまの主将、神巧也選手。

(聞き手・文=山﨑雄樹)



<後編>

―子どもたちにとって、プロ野球選手やJリーガーのように、プロ卓球選手は、憧れの職業になることができますか。

神選手(以下、「」のみ)「難しい質問ですね。でも、そこは超大事なことですよね。2つの面があると思います。1つ目は、Tリーグに入って、たくさんの観客の前で勝ったときの快感や喜びを味わったり、ファンの方が熱狂している姿を見ることができたりするのは、何にも代えがたいことで、やりがいがあることは間違いないです。国際大会にも出て、自分が今、世界で何番目の人間か知ることができたり、全日本選手権に出て、準決勝、決勝でスポットライトがひとつになったところで戦う緊張感と、緊張感のなかにある喜びと楽しさを味わえたりすることは、何にも代えがたいです。これは、やったことがある人しかわからないと思います。まだ、僕はこれぐらいのレベルですけど、オリンピックでメダルをとった水谷(隼)さん、(吉村)真晴、(丹羽)孝希には、そこに立った人しかわからないもっと大きな喜びがあると思います」


―2つ目は。

「2つ目は生きていくうえでの収入面です。どれだけ強くても収入が0円だと生きていけませんので。僕は、どう伝えたらいいのかわからないのですが…。お金のことを伝えるのは難しいですね。でも、堂々と言えるぐらいにならないと、卓球界はよくならないですね。勝てば勝つほど、収入は増えます。ただ、逆を言えば、そうじゃないリスクもあります。だからこそ、1試合1試合が勝負ですし、真剣です。勝ったときでさえ、喜びだけでなく、次、駄目だったらという恐怖心が常にあります。負けたときは、地獄だという気持ちに陥ります」


―神選手と言えば、大きな声やガッツポーズがトレードマークですね。

「自分を勢いづけるためのものですし、今、人生を捧げて戦っているところですので、自ずと、内から秘めたものが出てくるような感じでもあります。僕の一番の仕事は、もちろん試合で勝つことですが、プラスアルファで何かがあるとしたら、勝って勢いをつけて、チームに勝利をもたらすことやベンチにいても声を出して、何とかしてチームに良い流れをくるようにすることです。そういうことも自分の役割だと思います」



―現在、チャレンジをしている人、これから挑戦しようと思っている人にとって、神選手のプレーぶりや今回語っていただいた覚悟からは、勇気や元気をもらうことができると思いますが。

「自分自身は、そんな大それたことができる人間だとは、思っていません。もし、そうであったら、プロのスポーツ選手として、一番ハッピーなことです。でも、それを、狙ってはいませんし、狙ってできるものではありません。目の前のことをひとつひとつ頑張って出てくる人間味などから伝わるものだと思いますので、まずは自分のベストを尽くしたいです。僕は、憧れの存在と言うより、近しい感じで『神でもこれだけできるなら、自分もできる』と思ってもらえるような存在になれれば嬉しいです」


―趣味やオフの過ごし方などリフレッシュ方法についても教えていただけますか。

「Mr. Childrenが大好きなので、コンサートに行けるときは行きますし、曲もずっと聴いています。今は、結婚して妻がいるので、妻とも一緒にコンサートにも行きます」


―実は、背番号「15」の秘密も、そこに隠されていますね。

「Mr. Childrenの9作目のアルバム『Q』のなかの最初に収録されている『CENTER OF UNIVERSE』という曲があります。その曲に『悩んだ末に出た答えなら15点だとしても正しい』という歌詞があって、自分がプロになるうえで、すごく迷いも葛藤もありましたが、歌詞の言葉にすごく勇気づけられました。ですので、15にしています」



―最後に今後の目標を教えて下さい。

「コロナ禍で、自分の目標を叶える場所があるか不安もありますが、個人としては、もちろん日本代表になりたいと思って頑張っています。世界選手権やオリンピックに出ることが大きな目標です。Tリーグでは、目標は優勝と言っていますが、口で言うのは簡単です。昨シーズンも、あと1点に泣きました。現状でも、自分自身も苦しんでいますのが、本当に優勝したいです」


【プロフィール】

神 巧也(じん たくや)

1993年3月2日生まれ。青森県黒石市出身。8歳(小2)のときに父・智昭さんと兄・一也さんの影響で卓球を始め、名門・青森山田中学・高校から明治大学に進む。大学4年生の2014年度全日本選手権で準優勝。大学卒業後の2015年4月から約4年間、実業団のシチズン時計でプレーし中心選手として活躍、2018年度後期日本リーグではチームを23年ぶりの優勝に導いた。2019年1月に退社、TリーグのT.T彩たまに加入。主将を任された2019-2020シーズンには、リーグ最多の13勝を挙げ、後期MVPを獲得。2019年に東京で行われたチームワールドカップ(団体戦)では日本代表に選ばれる。世界ランキングは45位(2020年12月現在)。戦型は右シェークハンド両面裏ソフトのドライブ攻撃型。得意なプレーはサーブからのフォアハンド攻撃。


【著者プロフィール】

山﨑 雄樹(やまさき ゆうき)

1975年生まれ、三重県鈴鹿市出身。小学生、中学生と懸命に卓球に打ち込んだが、最高成績は県4位、あと一歩で個人戦の全国大会出場はならず。立命館大学産業社会学部を卒業後、20年間の局アナ生活を経て、現在は、フリーアナウンサー(圭三プロダクション所属)として、Tリーグ(dTVチャンネル・ひかりTV・AmazonPrimeVideoなど)や日本リーグ(LaboLive)など卓球の実況を担当。

また、愛好家として、40歳のときにプレーを再開し、全日本選手権(マスターズの部・ラージボールの部)に出場した。

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