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インタビュー

木下マイスター東京・及川瑞基(前編):全日本選手権初優勝、大激戦を振り返る

2021年2月15日 11:22配信
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近年、日本が飛躍的に力をつけ、世界一の座にも手が届きつつある卓球。

試合では、スピード、回転、コースの変化を組み合わせ、戦術を練り、その勝敗には、メンタル面も大きく影響する。選手たちは、わずか直径40mm、重さ2.7gのボールに人生をかけ、それぞれの物語を紡いでいる。

この連載コラムでは、さまざまな選手たちにインタビューし、そのプレーや人間性の魅力に迫る。

今回は、1月に行われた全日本選手権で、見事、初優勝に輝いた及川瑞基選手。

(聞き手・文=山﨑雄樹)



<前編:全日本選手権初優勝、大激戦を振り返る>

―全日本選手権、初優勝、おめでとうございました。素晴らしい戦いぶりでした。お気持ちはいかがですか。

及川選手(以下、「」のみ)

「正直、全日本が終わってからも、まだ実感が湧いていません。Tリーグの試合も続いていて、落ち着いて、『チャンピオンになったんだ』とゆっくり試合を振り返る時間もありませんでした。もちろん、優勝したいとは思っていましたが、嬉しい気持ちより、驚きの方が大きいです」


―「驚き」とは。

「今までの最高成績はベスト16だったので、次はベスト8、次は表彰台と、目標を置いていました。まさか、本当に決勝まで行って、優勝できるとは思っていませんでした。高校や大学の日本一と違って、日本の一番大きな大会でのトップなので、口では『優勝したい』とは言っていましたが、いざ実現したとなると、自分でもびっくりしています」


―全日本選手権では、高校2年生のときにジュニアで、大学4年生の去年はダブルスで、それぞれ優勝していますが、気持ちは違いますか。

「天皇杯の本当の価値はまだわかっていないのかもしれませんが、菊の御紋が入っていて、ずっしりと重かったです。一般の部のシングルスで優勝しないと、触れることができないものなので、今までの努力の重みも同時に感じました。もちろん、ジュニアでの優勝も嬉しかったですし、ダブルスもパートナーがいて、一般の部でしたので自信になりました。ただ、一般の部のシングルスはテレビ中継などもあり注目されますし、優勝することによって、いろいろなものが変わっていきます。自信にもプレッシャーにもなりますが、逃げていれば、いつまでたっても大成しないので、『自覚と責任を持ってやっていこう』と、すぐに切り替えました」


―「すぐに」ですか。

「優勝した日は、実感もなかなか湧いてこなかったので、嬉しい気持ちと『本当に優勝したのかな』ともやもやした気持ちもありましたが、次の日からは、切り替えたというか、『慢心があってはいけない』と思って切り替えました。周りの目も変わりますし、期待もあると思います。プレッシャーを感じずにいることはなかなか難しいので、それをはねのけて、逃げずに、どんどんチャレンジして進化したいです」


―張本智和選手との準々決勝は、幼なじみ、同門対決として注目を集め、ラブオール(0-0)からの1球目からものすごいラリーになって、及川選手が身体を1回転させて返球する場面もありました。

「組み合わせが出たときから、勝ち上がっていけば、当たるなとは思っていましたが、自分の過去最高成績がベスト16でしたので、そこまでの自信はありませんでした。それでも、動画サイトを見れば、彼のプレーは出てきますし、小さい頃から知っていますし、最近の国際大会もずっとライブで見ていました。頭のなかで対戦したときのイメージを持って、試合を見ていましたので、戦術の部分での準備はしっかりとできていました。同時に、今までドイツでやってきたことが、彼に通用するのか、試したいというわくわくした気持ちもありましたので、気持ちの面でもまったく引いていませんでした。

また、彼が2~3歳の頃から知っていますし、昔のイメージは、もちろん今でもあります。試合をしている最中も、昔と変わらない癖があって、自分は懐かしいと思いながらプレーしていました。細かい技術ですが、ツッツキ(下回転での返球)やストップが他の選手より、切れていて低いことや、バックハンドももちろん速いのですが、回転がかかっていること、フォアハンドもチャンスボールに対しては、腰をしっかり入れて打つのでコースがわかりづらいことなどです。それでも、『幼なじみとの対戦』という意識は5%~10%ぐらいでした」



―準決勝は青森山田中学・高校の先輩、𠮷田雅己選手に勝って、決勝戦も青森山田中学・高校と2学年上の森薗政崇選手が相手でした。

「高校生のときも、大学生のときも、ドイツのブンデスリーガでも対戦して、対戦成績は勝ったり負けたりで、自分から見て、4勝5敗ぐらいだったと思います。森薗さんも、僕が決勝まで上がってくると考えていなかったと思いますし、自分も森薗さんが上がってくるとは思っていませんでした。びっくりという感じはありましたが、僕は張本選手に勝った自信もありましたし、優勝したいという強い気持ちもありました」


―森薗選手はどんな先輩でしたか。

「森薗さんは、本当に優しい先輩で、僕は一度も怒られたことがありません。言葉遣いなどには、それほど厳しくなかったのですが、掃除などのやるべきことに関しては、後輩を指導するときもありました。それでも、後輩が掃除をしていなかったら、3年生で卓球も一番強いキャプテンの森薗さんが、率先して掃除をしていました。卓球以外の面でも本当に尊敬される存在でした」


―流れがどちらにあるのか、まったくわからないような激戦でした。

「全日本の決勝は独特の雰囲気で、『全日本には魔物がいる』とよく言われるのですが、最初は自分も少しのまれていたと思います。ですので、ゲームカウント1-3になって、あと1ゲーム取られたら、負けるというところまで追い込まれました。でも、守って負けたくはありませんでした。攻めたいと思っていて、まだ諦めていない自分というか、開き直った自分がいました。1位と2位では全然違います。自分は今まで『2位のキャラ』だったので、欲が出ました」


―「2位のキャラ」とは。

「小学校6年生の全日本ホープス(12歳以下)、中学校2年生の全日本カデット(14歳以下)、中学校3年生の全中(全国中学校体育大会)、高校1年生のインターハイも2位、高校2年生と3年生のときは3位でした。気持ちの面で押されていたのはわかっていたのですが、準決勝まではすごく良い戦いをしていても、決勝になると、相手に対する苦手意識が出て、力を発揮できませんでした。ただ、大学生になってからは、むしろ『優勝キャラ』に変わったぐらい、結果を出すことができました」


―試合のお話に戻りますが、ゲームカウント2-3とリードされた第6ゲーム、9-10とマッチポイントを握られましたが、激しいラリーで追いつきました。

「得点板を見て『あと1本取られたら終わる』と考える時間がありました。特に何かをしようというわけではなかったのですが、『ここまで来たので、負けても仕方がない』と思って、振り切って、自然に攻めて、攻めて、点を取ることができました」


―その後、10-10の場面でも「横入れゼロバウンド(ネットの横から回転をかけて返球し、相手のコートでほとんどバウンドせず、滑るボール)」のようなビッグプレーまで出ました。

「サイドに出てくるサーブに対して、うまくレシーブができていませんでしたが、それまでよりも、よりサイドに出てきたので、『いけるかな』と思って打点を落として、レシーブしたら、うまく滑りました。特に、狙ったプレーではありませんでした。僕も、あそこまで滑るとは思いませんでした。イベントやエキシビションマッチだと、逆に入らないと思います(笑)」


―優勝の瞬間はいかがでしたか。

「ほっとして、喜びを噛み締めました。と、同時に嬉しさよりも、驚きの方が大きかったです」


【プロフィール】

及川 瑞基(おいかわ みずき)

1997年6月26日生まれ。宮城県黒川郡大和町出身。5歳(幼稚園年長)のとき姉・さくらさんとほのみさんの影響もあり、張本智和の両親が指導していた「仙台ジュニア」で卓球を始める。名門・青森山田中学・高校から専修大学に進む。中学3年生から大学4年生までドイツ・ブンデスリーガでプレー。高校2年生のときに全日本選手権ジュニアの部で優勝、大学3年生、4年生と全日本学生総合選手権で連覇を飾り、全日本選手権では三部航平(現・シチズン時計)と組んだダブルスで優勝に輝いた。Tリーグでは今シーズンから木下マイスター東京でプレー。世界ランキングは63位(2021年第5週現在)。戦型は右シェークハンド両面裏ソフトのドライブ攻撃型。得意なプレーはフリック。

【著者プロフィール】

山﨑 雄樹(やまさき ゆうき)

1975年生まれ、三重県鈴鹿市出身。小学生、中学生と懸命に卓球に打ち込んだが、最高成績は県4位、あと一歩で個人戦の全国大会出場はならず。立命館大学産業社会学部を卒業後、20年間の局アナ生活を経て、現在は、フリーアナウンサー(圭三プロダクション所属)として、Tリーグ(dTVチャンネル・ひかりTV・AmazonPrimeVideoなど)や日本リーグ(LaboLive)、全日本選手権(スポーツブル)など卓球の実況を担当。

また、愛好家として、40歳のときにプレーを再開し、全日本選手権(マスターズの部・ラージボールの部)に出場した。

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