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インタビュー

琉球アスティーダ・戸上隼輔(後編):Tリーグ前期MVPとパリ五輪、必殺技「カミソリドライブ」の秘密

2021年5月6日 12:36配信
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近年、日本が飛躍的に力をつけ、世界一の座にも手が届きつつある卓球。

試合では、スピード、回転、コースの変化を組み合わせ、戦術を練り、その勝敗には、メンタル面も大きく影響する。選手たちは、わずか直径40mm、重さ2.7gのボールに人生をかけ、それぞれの物語を紡いでいる。

この連載コラムでは、さまざまな選手たちにインタビューし、そのプレーや人間性の魅力に迫る。

今回は、今季のTリーグで前期のMVPに選ばれ、チームの初優勝に大きく貢献した琉球アスティーダの戸上隼輔選手。

(聞き手・文=山﨑雄樹)



<後編:Tリーグ前期MVPとパリ五輪、必殺技「カミソリドライブ」の秘密>

―20-21シーズンは前期(11月~12月)で8勝を挙げ、マッチ勝利数1位で前期MVPにも選ばれるなど、大活躍でした。

「前期MVPを取れる可能性があると考えたのが、琉球アスティーダの前期最後の試合となった岡山リベッツ戦の前日でした。夕食のときに、『岡山との試合で僕が勝てば、MVPあるな』と自分で気づきました(笑)。それまで、吉村真晴さんが7勝、水谷隼さんと僕が8勝で並んでいました。(水谷選手が所属する)木下マイスター東京は、先に試合を終えていました。試合当日は、まず先に(吉村)真晴さんがグナナセカラン選手に勝って、8勝としました。そして、僕が勝てば『9勝で単独トップになって、もしかしたら(MVP獲得が)あるな』と考えていました。でも、結果的に𠮷田雅己さんに0-3で負けてしまいました…。その瞬間、MVPは真晴さんだと思いました」


―そんな裏話があったとは!それでも、MVPに選ばれましたね。

「報道で、僕と早田ひなさん(女子・日本生命レッドエルフ)が前期MVP獲得という記事を見て、『えーっ⁈』って驚きました。大学の寮にいたのですが、周りに同級生が2~3人いて、Twitterに掲載されていた記事を『見て!見て!』と自慢しました(笑)。MVPも受賞できて、(東京オリンピック代表に内定している)張本智和選手にも、丹羽孝希選手にも、2回勝つことができて、ビクトリーマッチ(1ゲームマッチの「延長戦」)にも2回勝てて、充実した前期でした」


―副賞の大型テレビ(ノジマ 55インチ有機ELテレビ)は、三重に実家に贈ると、インタビューで話していましたね。

「もうすぐ届くようです。父(義春さん)が楽しみに待っていて、『まだか、まだか』といつも連絡してきます(笑)」


―張本選手との試合をそれぞれ振り返っていただけますか。

「1回目の対戦(12月5日)は、僕が今シーズン未勝利(シングルス・ダブルスともに0勝1敗)のときでした。オーダーを組むときに、張本選手との相性が良い選手として、(張本選手に勝った経験がある)宇田幸矢選手と有延大夢選手と僕がシングルスに起用されて、僕が対戦することになりました。試合前は自信がありませんでしたが、試合を進めていくうちに『チャンスがあるかもしれない』と思い始めました。マッチポイントを取ったのですが、簡単なミスで追いつかれてしまいました。(3-4で敗れた2020年の)全日本(準決勝)も同じような感じでミスをしてしまったのですが、今回は、最後まで攻め切ることができたのが勝因だと思います。2回目(12月22日)は、僕も、正直、あんなにうまくいくとは思っていなかったです。絶対に競るという気持ちで臨んだ結果、うまく相手の的を外せたり、リードしていても気持ちを切らさずにプレーできたりしたことは、勝ちたいという気持ちが強かったからだと思います。『2回連続で勝てば、本物』と思っていたので、自分のなかで自分を認めることができた部分は、少しだけあります」


―「少しだけ」ですか。

「はい。国内で勝つことも大事ですが、世界で勝ちたいと思っています。世界の大舞台で勝つための一歩目として、張本選手に2連勝したことは、大きな一歩目かもしれませんが、オリンピックでメダルを取るためにはまだ小さな一歩だと考えています」


―他に印象に残っている試合はありますか。

「及川瑞基選手との試合(12月17日・対木下マイスター東京・2-3で敗戦)です。本当に悔しかったです。(長年、ドイツ・ブンデスリーガでプレーしている)及川選手は海外選手寄りのプレースタイルです。僕がやり慣れていない選手に勝ちたかったです。勝てば自信にもつながるので、日本人らしいプレースタイルの選手より、及川選手のような(台から距離をとってラリー中心のプレーをする海外選手のような)プレースタイルの選手に勝てた方が嬉しいです」


―常に「世界」を意識しているのですね。

「本気で意識し始めたのは、本当に最近のことです。WTT(2月~3月に開催された新しい国際大会)に出られずに、悔しい思いをしました。2024年のパリオリンピックにむけて順調に世界ランキングを上げられるのか、と考えたときに、今のままでは駄目だと思いました。甘えていた部分があったと気づきました。これまでは、自分のなかの目標が定まっていませんでした。漠然とパリオリンピックをめざしていれば、世界ランキングも上に上がっていけると思っていましたが、国際大会の枠組みが変わって、出られないとなったら焦ります。

最近思うことは、2024年のパリオリンピックから逆算して、間に合うのかなということです。国際大会に出るための国内選考で負けてしまったら、間に合わないのではないかと思います。数少ないチャンスになりますが、国内選考からきっちり勝たなければならないと考えています。まだ日本国内でも負けてしまう選手がいますので、まず日本人に負けないレベルまでいかないといけません。そして、世界で勝つためにはまだ足りない技術が多いです。全体的なレベルアップが必要です」



―プレースタイルのお話ですが、私は実況のなかで「カミソリドライブ」と表現しているのですが、ドライブのキレがすごいですね。秘訣やコツはありますか。

「どうしてなんでしょう(笑)。僕も小学生の頃から『速い、速い』とは言われてきました。小学生のときのクラブの監督(三重県津市にある松生TTC・松生瞬さん)が、その長所を大切に伸ばしてくれた結果が今につながっていると思います」


―そのときのアドバイスや練習方法など記憶に残っていることはありますか。

「基本的に練習はフットワークが多かったです。多球練習が非常に多くて、卓球台を2台くっつけて2台分の幅のフットワークの練習をしました。きつい練習ですが楽しくできていました。そのおかげで、今もフットワークの力はあると思っています。それに加えて、フォアハンドの威力も年々上がっているので、小学生の頃に長所を理解してくれる良い指導者に出会えたことが大きいです」


―今、小学生や中学生、高校生、卓球愛好家の皆さんに、「ドライブで心がけていることは」と質問されたら、どうアドバイスしますか。

「最初は7割の力で大きくスイングしようと伝えます。大きなスイングは大切です。大きく、スイングスピードを速くできるようになれば、確実に威力もアップしますし、連打もできると思います。初心者の方にはあまりお勧めはできませんが、卓球をずっとやってきた方は絶対にできると思います。最初は5割~7割ではじめてもらえれば、必ずできるようになると思います」


―貴重なアドバイスをありがとうございます。戸上選手は、ボールを打つ練習以外のトレーニングはどれぐらい行っていますか。

「週に2回、筋力トレーニングを2~3時間です」


―趣味やオフの過ごし方などリフレッシュ方法は。

「僕、多趣味です(笑)。古着も大好きですが、一番はプロレス観戦です。学ぶことが多いです。特に、棚橋弘至選手の生き様は、僕にとって鑑です。勝敗を超えた言葉や行動が勉強になります。棚橋選手はどんなときでも弱音を吐きません。プロレスの人気が落ちたときでも、棚橋選手が出てきたことでプロレス人気を盛り返しました。諦めない姿勢は、小学生の頃からの憧れです。いつかお会いしたいです」


―今後の目標を教えて下さい。

「Tリーグでは、21-22シーズンも琉球アスティーダでプレーします。シーズンMVPを狙って2連覇に貢献できるよう頑張ります。個人として長期的な目標ですが、常に世界に目を向けてこれから始まる国内選考会を戦い、全日本選手権でも優勝し、2024年のパリオリンピックでメダルを獲得できるように頑張りたいです」


―最後に読者の皆さんに、一言、お願いします。

「これからの戸上隼輔に期待して下さい!」


【プロフィール】

戸上 隼輔(とがみ しゅんすけ)

2001年8月24日生まれ。三重県津市出身。明治大学2年生。3歳のとき、長男・翔一さん、次男・雄貴さんの影響で卓球を始める。山口県の野田学園高校1年生のときのインターハイで準優勝という好成績を残すと、2年生ではインターハイと全日本選手権ジュニアの部で優勝、さらに、3年生のインターハイではシングルスとダブルス(宮川昌大とのペア)の2冠に輝く。また、全日本選手権一般の部でもベスト4に入るなど躍進。Tリーグでは1st~2ndシーズンはT.T彩たまで、3rdシーズンは琉球アスティーダでプレー。2020年度からナショナルチームのメンバー。戦型は右シェークハンド両面裏ソフトのドライブ攻撃型。得意なプレーはフォアハンド。


【著者プロフィール】

山﨑 雄樹(やまさき ゆうき)

1975年生まれ、三重県鈴鹿市出身。小学生、中学生と懸命に卓球に打ち込んだが、最高成績は県4位、あと一歩で個人戦の全国大会出場はならず。立命館大学産業社会学部を卒業後、20年間の局アナ生活を経て、現在は、フリーアナウンサー(圭三プロダクション所属)として、Tリーグ(dTVチャンネル・ひかりTV・AmazonPrimeVideoなど)や日本リーグ(LaboLive)、全日本選手権(スポーツブル)など卓球の実況を担当。

また、愛好家として、40歳のときにプレーを再開し、全日本選手権(マスターズの部・ラージボールの部)に出場した。

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