JRA-VANコラム
2020年にデビューした新種牡馬の産駒成績をチェック!
今週末に阪神ジュベナイルフィリーズ、再来週には朝日杯フューチュリティSと2歳G1が控える。そこで今回は今年ここまでの2歳戦成績を調べることにした。そのなかでも2020年にデビューした新種牡馬に注目、勝利数ランキングと産駒の特徴をみていく。データの集計期間は11/29開催終了時点まで。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1はJRAの芝・2歳戦の種牡馬成績。勝ち星数をもとにトップ20の種牡馬を記した。1位は29勝でディープインパクト。勝率22.3%、連対率37.7%、複勝率50.8%と、今年も非常に優秀なスタートを切った。残念ながら昨年亡くなってしまったので「実質今年が最後の世代」(2021年の産駒は少ない)と言われたりもするが、3冠馬コントレイルに続く大物があらわれるかどうか。
2020年に産駒がデビューした新種牡馬は2位にモーリス、3位にドゥラメンテがランクインした。この2頭は新種牡馬のなかでも登録産駒数(JRA)が多い。順当な結果かもしれないが、今のところ期待に応えて勝ち星を積み重ねている。
その他の新種牡馬では11位にリオンディーズがランクイン。ミッキーアイルは14位だが、小倉2歳S、ファンタジーSと重賞連勝中のメイケイエールを出している。18位に入ったマクフィはイギリス産のフランス調教馬として2010年の2000ギニー(英G1・芝1600m)とジャック・ル・マロワ賞(仏G1・芝1600m)を勝利している。引退後は一旦イギリスやフランスの牧場で繋養されたが、16年に日本軽種馬協会が購入し、17年から日本で供用されている。父にDubawiを持つミスタープロスペクター系の種牡馬で、日本の芝にも適性があったようだ。函館2歳Sで2着に入ったルーチェドーロを出すなど、早くも活躍をみせている。
表2はJRAのダート・2歳戦の種牡馬成績。1位は12勝を挙げているヘニーヒューズ。2位はマジェスティックウォリアー、3位サウスヴィグラスと、上位の顔ぶれは芝と全く違う。新種牡馬は5位ダノンレジェンド、6位アジアエクスプレス、7位マクフィ、9位ホッコータルマエ、10位ドゥラメンテ、15位ディスクリートキャット、16位リオンディーズ、17位ミッキーアイル、19位モーリスと9頭がランクインした。
芝で2位だったモーリスはダートで大きくランクを落としており、ダートよりも芝向きであることがうかがえる。芝で3位だったドゥラメンテもダートでランクを落としたが、ダートの連対率は34.5%と非常に優秀だ。ヘニーヒューズ産駒の30.5%を上回りトップの成績となっている。芝・ダートどちらでも活躍馬を出せそうな雰囲気がある。
ダノンレジェンドは父Macho Unoの外国産馬で、現役時代は地方の交流重賞を中心に活躍。16年のJBCスプリント(川崎)を制するなど、短距離の快足馬としてならした。アジアエクスプレスは父にHenny Hughes(ヘニーヒューズ)を持つ外国産馬。現役時代は13年の朝日杯フューチュリティSや14年のレパードSを制した。ホッコータルマエは14年のJRA賞最優秀ダートホース。16年の川崎記念で当時の最多勝記録となるG1/Jpn1(中央・地方)10勝目をあげている。この3頭に関しては現役時代の成績・血統のイメージ通り、産駒もダート向きとなりそうだ。
ここからは芝で2位のモーリス産駒をもう少し詳しくみていくことにする。表3はモーリス産駒の競馬場別成績(芝)。まず目につくのが東京の【4.11.1.20】という成績で、2着の数が非常に多い。その影響で勝率は11.1%にとどまり、「勝ち切れない」というイメージを持たれるかもしれない。しかし、連対率は41.7%、複勝率は44.4%と優秀だ。勝率でみれば京都の方が6.7%と低いし、連対率・複勝率も冴えない。よって、東京が苦手と決めつけるのは早い。このあたりはもっとデータを集めてから判断したい。
一方、札幌や函館の成績が優秀。まだレース数は少ないが、洋芝に適性があるのかもしれない。中山も【3.1.0.8】で勝率25.0%、連対率・複勝率はともに33.3%となかなか良い。総合的に考えると、力がいる芝を得意としている可能性がある。
続いてモーリス産駒の距離別成績(芝)をみていく(表4参照)。1200mの成績が意外と良く、単・複の回収率も100%を超えている。しかし、1400mは勝率が6.5%と大きく下がり、連対率も19.4%だ。1600mでは最多の8勝をマークしているものの、勝率は13.8%と1200mよりも低い。1800mは3勝2着6回と、2着数が1着数の2倍ある。連対率や複勝率は1600mとさほど変わらない。2000mは6勝で2着も6回。勝率23.1%で連対率46.2%、複勝率50.0%も非常に優秀だ。2000m戦で明らかに成績が向上しており、中長距離向きの可能性を感じさせる。今後は2000m超のレースも増えてくるので、そうしたレースに出走してきたときは注目したい。
表5はミッキーアイル産駒の競馬場別成績(芝)。不思議な結果が出ているので取り上げることにした。東開催【0.3.2.27】に対し、西開催【8.3.3.19】という結果。小倉や阪神に良績が集中し、東京や中山、新潟は不振。札幌や函館、福島では3着以内に入った馬が1頭もいない。今までデビューした栗東所属の馬が強いだけという可能性はあるが、めずらしい結果だ。
最後にダートで5位のダノンレジェンド産駒の距離別成績をみていく。1000~1300mの成績は【3.1.2.8】だが、1000mと1200mを比較すると差がある。今のところ1000mは連対率・複勝率100%だが、1200mは連対率11.1%だ。1400mも【1.1.1.8】で連対率は18.2%と控えめだ。
一方、1700~2000mは【2.0.0.0】。1700mと1800mでそれぞれ1勝を挙げている。まだサンプル数が少なすぎるので何とも言えないところだが、中距離でもすぐに結果を出した。ダノンレジェンド自身はダートのスプリンターだったが、そのイメージにとらわれるのは良くないだろう。産駒は中距離がベストという可能性も予感させる。今後のレースではそのあたりにも注目していきたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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