JRA-VANコラム
春の盾へと弾みをつけるのはどの馬? 阪神大賞典を分析
今週末に予定されている4つの重賞のうち、今回は天皇賞・春の前哨戦となるG2・阪神大賞典を取り上げたい。今年は本番も阪神で行なわれるため例年以上に重要度を増しそうな一戦に、昨年の菊花賞2着馬アリストテレス、連覇を目指すユーキャンスマイルなど14頭がエントリーしてきた。その趨勢を占うべく、過去10年のデータからレース傾向を読み解いていきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。過去10年で1番人気が6勝と非常に強く、馬券圏外に落ちたのは昨年のキセキだけとなっている。その反動なのか2番人気はやや不振傾向だが、3番人気は3勝を挙げて複勝率60.0%、5番人気も複勝率50.0%と、奇数の上位人気が好成績を収めている。一方、穴サイドは厳しめの数値にとどまっており、特に8番人気以下は3着が1回あるのみ。レース全体で単勝回収率38%、複勝回収率59%であることを考えても、上位人気馬がしっかり実力を発揮する傾向があるようだ。
表2は年齢別成績を「全体」と「1~5番人気」に分けて示したもの。全体の傾向から確認すると、連対例があるのは4~6歳に限られ、そのなかでも年齢の若い馬ほど好走率が高い。ただし、1~5番人気に限った成績を見ると、5歳の好走率も4歳に匹敵し、6歳の勝率も4、5歳と変わらない。7歳も3頭中2頭が3着に入っており、印が回っているような馬であれば過度に年齢を気にかける必要はなさそうだ。
表3は阪神芝重賞における実績別成績を示したもの。この通り、阪神芝重賞1着の実績を持つ馬の好走率は高く、出走があれば有力な存在となりそうだ。ところが、2、3着の実績はあまり好走にはつながらず、むしろ4着以下の実績しかない馬や未出走の馬のほうが好走率は高いぐらい。つまり、阪神芝重賞の実績は1着のみ重視すべきと考えられる。
本稿を執筆するにあたって過去10年の1~3着馬をチェックしていたところ、芝2200m以上で複数の勝ち鞍を持つ馬が多いように見受けられた。そこで調べてみたのが、表4の芝2200m以上の勝利数別成績。ご覧の通り、この距離の芝戦を3勝以上していた馬と2勝以下の馬では好走率に差がついており、もちろん3勝以上のほうが有利と考えられる。
表5は前走レース別成績で、好走例のある前走のみを掲載している。前走有馬記念は4勝を含む1~3着10回を記録し、特に9着以内だった馬は【4.4.1.2】と有望だ。年明けの古馬G2(日経新春杯、AJCC、京都記念)から臨む馬の好走も多く、合わせて延べ8頭が1~3着に入っている。この組については、次の表6の項で補足するデータを紹介する。前走ダイヤモンドSは出走例が最多。好走率はそれほどでもないが、6頭が1~3着を記録しているため無視はできない。こちらは表7の項で関連するデータを取り上げる。以上の3パターンが阪神大賞典の主流ローテとなる。
そのほか、前走ジャパンC組も4頭中2頭と好相性だが、今年は該当馬がいない。あとは、オープン特別や3勝クラスから好走した馬が4頭おり、そのうち3頭は前走1着だった。もう1頭の19年2着カフジプリンスは3勝クラス3着からの臨戦。ただし、同馬は重賞3着2回などすでにオープンでも実績を残しており、前走3勝クラス組としては例外的な存在とみるべきだろう。
表6は、前走で同年の古馬G2(日経新春杯、AJCC、京都記念)に出走していた馬に関するもので、この3レースを合算している。さまざまなデータをチェックしたところ、もっとも明確な傾向が出ているのが前走4角通過順だった。この組の好走例の大半は前走で4角を1~6番手で回っていた馬が占めており、7番手以降から好走したのは1頭しかいない。その馬というのが15年1着のゴールドシップで、これで阪神大賞典3連覇という大の得意レースだっただけにデータを覆したのも納得である。
表7は前走ダイヤモンドS出走馬について、着順別と斤量の増減別のデータをまとめたもの。前走着順から見ていくと、1、2着だった3頭は阪神大賞典でもすべて好走している。しかし、連対を外すと好走率がかなり下がってしまい、10着以下から巻き返した例はない。また、斤量の増減別では「増減なし」が好成績で、特に前走9着以内に限れば【1.1.2.0】とすべて好走を果たしている。
表8は種牡馬別成績で、連対例がある種牡馬のみ掲載した。ご覧の通り、ステイゴールド、ハーツクライ、ディープインパクトの3頭だけで好走馬の半数以上を占め、好走率も高い。産駒の出走があれば無視することはできないだろう。
【結論】
今年の阪神大賞典で注目を集めるのが、昨年の菊花賞でコントレイルと激戦を繰り広げたアリストテレスだ。今年は始動戦のAJCCを危なげなく勝利。表6の項で見た通り、前走で古馬G2(日経新春杯、AJCC、京都記念)を使っていた場合は4角を1~6番手で回っていることが好走条件だったが、AJCCで4角4番手だった本馬はその点もクリアしている。阪神芝重賞は初出走で、芝2200m以上の勝利数が2勝という点も割引になるが、阪神自体は3戦3連対、芝2200m以上も4戦4連対で、適性がまったくないということはないのではないか。
同じく前走古馬G2組では、日経新春杯を制したショウリュウイクゾも上り調子の1頭だ。こちらも前走4角3番手で好走条件を満たし、芝2200m以上で3勝というのも好材料。過去の戦績を確認すると、阪神で人気以下の着順に終わるケースが目立つのは少々気になるものの、昇り龍の勢いでカバーしたいところだろう。
好走率の高い前走有馬記念組は、昨年の勝ち馬でもあるユーキャンスマイルだけ。惜しむらくは有馬記念で11着と、この組で好走率の高い9着以内に合致しない点だが、今年の出走馬では唯一の阪神重賞勝ち馬で、芝2200m以上も4勝と実績としては申し分ない。好走率がやや落ちる6歳馬ではあるものの、上位人気が予想される存在であれば過剰に心配する必要はなさそうだ。
今年も最多勢力となったダイヤモンドS組は1、2着馬なら期待大だったが、登録のある3頭は該当せず。そのなかで触れるとすれば、好走率が高い斤量の増減なしに該当し、ディープインパクト産駒でもあるメイショウテンゲンか。この組では好走例のない前走10着以下に該当するのは大きなマイナスだが、昨年3着の適性を活かしたいところだ。また、前走8着で、斤量が今回増となるタイセイトレイルもダイヤモンドS組の好走データにはあまり合致しないのだが、芝2200m以上で3勝を挙げ、ハーツクライ産駒という点はプラス。そして、タイセイトレイルに触れるのであれば、同じく芝2200m以上で3勝のハーツクライ産駒であるゴーストの名前も挙げないわけにはいかないだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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