JRA-VANコラム
衝撃の結末に呆然!? 前半のダートJpn1を振り返る
今月14日に大井競馬場で行われたジャパンダートダービーは船橋所属の12番人気キャッスルトップが優勝した。ゴッドセレクションらJRA勢との熱い競り合いを制して3歳ダート王者に輝いた。勝ち馬の人気が示す通りこの結果は波乱であり非常に驚かされた。そこで今回は今年前半のダートJpn1を振り返ってみることにした。レースの成績表はJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを使って抽出した。
まず今年5月5日に船橋競馬場で行われたかしわ記念(Jpn1)を振り返る。このレースでは船橋所属の2番人気カジノフォンテンが優勝(画像1参照)。1月の川崎記念に続きJpn1・2勝目を飾った。同馬は昨年の東京大賞典でオメガパフュームの2着(9番人気)に入り脚光を浴びた。この激走がフロックではなかったと十分にわかる活躍を果たしている。
同馬の経歴で興味深い点として、生え抜きの南関東(地方)所属馬であることを挙げたい。船橋でデビューし、JRAに所属した経験はないのだ。しかも3歳(2019年)春の主な成績は京浜盃5着、羽田盃4着、東京ダービー6着。南関東のクラシックでは結果を残すことができなかった。JRAで例えれば、皐月賞や日本ダービーに出走はしたが、上位争いにはもう一歩足りなかったようなもの。エリート街道を進んで注目を浴びてきた存在ではなかった。クラシック後の条件戦で勝ち星を重ねて、じわじわと力をつけていったと考えられる。こうしたキャリアもとても興味深い馬だった。
地方馬で同じ年に川崎記念とかしわ記念を勝利したのは2011年フリオーソ以来の快挙だ。同馬はこの両レースの間にフェブラリーSで2着(1着トランセンド)と好走した。カジノフォンテンがJRAのG1に挑戦するシーンも見てみたいものだ。
かしわ記念に話を戻すと1番人気に支持されたJRAのカフェファラオは5着と敗れた。前走フェブラリーSを勝ったが、船橋のコース形態と中央との馬場の違いに対応しきれなかったようだ。JRAの実績馬が地方のレースを苦手にするようなケースはめずらしくないものの、ダート界でトップの座に君臨するためには乗り切ってほしい課題だった。その後は先日の函館記念に出走。初めて芝に挑戦したが、結果は9着だった。これでまたダートに戻るのか、もう少し芝の挑戦を続けるのか、動向が気になるところだ。
6月30日に行われた帝王賞(Jpn1)はJRA所属の4番人気テーオーケインズが3馬身差で勝利した(画像2参照)。今年に入り名古屋城Sを勝ち、4月のアンタレスSで重賞初制覇。特にアンタレスSの勝ちっぷりは素晴らしく、実績的に帝王賞では格下だったが、連勝の勢いに乗っていた。本競走で金星を挙げたことに関してはあまり意外な感じはしなかった。
ただ、上位人気に支持されたオメガパフューム、チュウワウィザード、カジノフォンテンが揃って4着以下に敗れたことには驚いた。チュウワウィザードに関しては、前走ドバイワールドカップで2着と好走する快挙を果たしたが、海外遠征明けだったので仕方がない面はある。一方、大井で無類の強さを誇ったオメガパフュームと絶好調のカジノフォンテンの敗因ははっきりしない。馬場状態が重ではあったが、どこまで影響があったかはわからない。力を出し切れずに終わってしまった印象だ。
人気馬に替わって2着に入ったのは10番人気ノンコノユメ、3着は6番人気クリンチャーだった。馬連は10万円台、3連単は238万円台という高額配当。同レースの馬券は比較的堅い傾向だったが、今年はとんでもない大荒れになった。波乱の主役になったノンコノユメは元JRA所属の実績馬。キャリアは認めても9歳という年齢と近走成績を考えると狙いづらく、驚きの激走だった。
最後に冒頭で述べた一戦、7月14日に行われたジャパンダートダービー(Jpn1)を振り返りたい。勝ったのは船橋所属のバンブーエール産駒・12番人気キャッスルトップだった。ブービー人気が示す通りノーマークでも仕方がないという超穴馬が勝った。同馬の成績を調べると、デビューから9戦目でようやく初勝利。その後もポンポンと連勝して勢いに乗っていたが、南関東重賞も1600m超の距離も経験がなかった。このようなキャリアの馬が交流Jpn1をいきなり勝つケースは異例中の異例。JRA勢も飛び抜けて強そうな馬はいない雰囲気だったが、重賞勝ち馬は揃っていたので地方馬が負かすのは容易ではなかったはず。レース後の驚き・衝撃度は帝王賞以上だった。
レースの流れとしてはキャッスルトップが先手を奪いマイペースに持ち込んだ。これが大きかったのは確かだが、最後の直線はゴッドセレクションらとの激しい叩き合いに競り勝つという勝負根性もみせた。展開に恵まれただけでは大井2000mのJpn1は勝てない気がするし、3連勝の間で急激に力をつけたのだろう。前述したカジノフォンテンも昨秋にいきなりパワーアップして重賞(勝島王冠)を含む連勝を飾り、東京大賞典でも好走した。積極的なレース運びができ、JRA勢との末脚比べにも負けないパフォーマンスを身につけたようだった。
今年前半のダートJpn1は、「船橋で育った叩き上げ」という共通項を持つ2頭の存在感がとても光った。もしJRA勢に負けない育成・調教ができる環境が整ってきているのであれば、こうした活躍馬が今後も出てくる可能性が高くなりそうだ。そうなれば地方の重賞がさらに盛り上がるだろう。秋以降のダート戦線もこの点に注目して見ていきたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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