JRA-VANコラム
8年ぶりとなる函館芝1800mのクイーンSを分析する
今週は日曜日に函館競馬場でクイーンSが行われる。例年は札幌の開幕週に行われているレースだが、今年は変則開催になったため、2013年以来8年ぶりに函館芝1800mで行われる同レースを分析する。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は過去10年のクイーンS上位(3着以内)馬一覧。レースでの人気や走破タイム、前走レース名、前走着順、備考として注目したい実績を記載した。そもそも今回、例年(札幌)の結果がどこまで参考になるのか、という問題があることは当然理解している。札幌芝1800mと函館芝1800mのコースを比較した場合、北海道の洋芝でコーナーが4つの小回りコースという点においては同じ特徴を持つ。最後の直線距離も札幌が266.1m(Aコース時)、函館が262.1m(Aコース時)とほとんど差がない。しかし、コース形態には違いがある。
例えば、札幌はコース全体が丸みを帯びているのでコーナーが比較的緩やかだ。一方、函館はコーナー角度がきつく、それを緩和するため3~4コーナーにはスパイラルカーブが導入されている。一般的な小回りコースのイメージは函館の方で、コーナーリングの得手不得手が大きなポイントになるだろう。
12年と13年のクイーンSを連覇したアイムユアーズは、札幌と函館両方の開催で勝っている。今回のレースを考える上では貴重なサンプルだ。勝ちタイムを比較すると12年が1分47秒2(良)に対し、13年が1分49秒4(良)と2分2秒もの差があった。同じ良馬場なのにこれだけタイムが違うとレースの質が似ているとは言い難い。札幌芝1800mのクイーンSと函館芝1800mのクイーンSでは、求められる適性が違うかもしれない。アイムユアーズの場合は、自身の絶対能力でカバーしただけという可能性もありそうだ。今回もいつものように過去10年のデータを見ていくが、どんな結果になるか少々心配ではある。
好走馬30頭の前走レース内訳はヴィクトリアマイルが11頭でマーメイドSが6頭。この2レースで過半数を占めた。あとはドバイターフや福島牝馬Sといった他の重賞組が7頭。オープン特別組が2頭、3勝(1600万)クラス組が4頭だった。
さらに前走ヴィクトリアマイル組は11頭中10頭が4番人気以内(その内6頭が1番人気)だった。ヴィクトリアマイルでの着順は悪くても、それ以前の成績が評価されて今回上位人気に推されるというパターンが多い印象だ。
一方、前走マーメイドS組は6頭すべてが4番人気以下だった。基本的には前走成績なりの人気になることが多いが、上位人気にはなりづらい傾向だ。前走マーメイドSで2着と好走していた17年クインズミラーグロ、同3着と好走していた19年スカーレットカラーでもそれぞれクイーンSでは8番人気、5番人気という評価だった。前走ヴィクトリアマイル組よりも前走マーメイドS組の方が明らかに配当妙味はあるが、その分狙い方は難しい。
前走ヴィクトリアマイル・マーメイドS以外の重賞組は前走好着順の馬が多い。17年アエロリットは前走NHKマイルC1着、18年ディアドラは前走ドバイターフ1着とG1で勝利していた。前走オープン特別組は14年2着アロマティコ(巴賞1着)、16年3着ダンツキャンサー(安土城S2着)ともに前走は連対。前走3勝クラス組は12年2着ラブフール(五稜郭S8着)や13年2着スピードリッパー(夏至S13着)のように大きく負けていた馬の巻き返しがある。ただ、近年はこの好走パターンはなく、19年は好調カリビアンゴールド(五稜郭S2着)が格上挑戦で3着と結果を残している。
前走レース成績以外で注目したいのは、過去に芝1600~2000mのG1で3着以内の実績があるかどうかだ。備考に記したようにビーチサンバ、ソウルスターリング、レッドリヴェール、アイムユアーズは2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズで好走。ミッキーチャーム、スマートレイアー、アニメイトバイオは3歳時に秋華賞で連対。前走NHKマイルCを優勝したアエロリットを含めると、30頭中10頭は芝1600~2000mのG1で3着以内に好走したことがあった。中心馬を選ぶ際には、こうした実績も気にしたいところだ。
【結論】
それでは今年のクイーンSを展望する。出走予定馬(7/28午前時点)は表2の通りだ。
まず注目すべき前走ヴィクトリアマイル組はマジックキャッスル、シゲルピンクダイヤ、テルツェット。この3頭はいずれも今年の本競走で上位人気に推されるかもしれない。特にマジックキャッスルは昨年秋華賞で2着に入り、その後は愛知杯1着→阪神牝馬S2着→ヴィクトリアマイル3着と重賞で連続好走。今回1番人気になる可能性が高く、実際に最も有力とみたい。シゲルピンクダイヤは一昨年に桜花賞2着、秋華賞3着とG1で2回好走した経験がある。小回りコースが合っているイメージはないが、地力でどうにかできるか。
前走マーメイドS組はシャムロックヒルのみ。マーメイドSではハナにたってそのまま押し切ったが、ハンデ50キロと1枠発走という恵まれた条件が重なった勝利のように見えた。
前走福島牝馬Sで2着に好走したドナアトラエンテは有力。G1経験はないが、例年は同レース好走馬とクイーンSの相性はいい傾向だ。また、前走米子Sで3着と復調の兆しがあるクラヴァシュドールを警戒。2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズで3着に入ったことがある。前走ヴィクトリアマイル組以外ではこのあたりに注目したい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。