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JRA-VANコラム

2021年のJRA平地ダートの種牡馬成績を振り返る

2022年1月17日 16:00配信
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2021/12/5 中京11R チャンピオンズカップ(G1) 1着 6番 テーオーケインズ

今回は昨年(2021年)のJRA平地ダートの種牡馬成績にスポットを当てることにした。先日発表されたJRA賞・最優秀ダートホースにはテーオーケインズが選ばれた。同馬の父であるシニスターミニスターに再注目する意味でも、種牡馬のランキングを振り返ってみたい。成績は3歳戦以降(3歳、3歳上、4歳上)と2歳で分けて集計。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 2021年のJRA平地ダートの種牡馬成績(3歳、3歳上、4歳上)

まず表1は2021年のJRA平地ダートの種牡馬成績(3歳、3歳上、4歳上)。上位20頭のランキングで、血統別にミスタープロスペクター系、サンデーサイレンス系、ボールドルーラー系、ストームバード系、ロベルト系の5系統(その他の系統は無色)には色を付けた(以下の表組みも同様)。1位に輝いたのはヘニーヒューズ。勝利数の78は断然トップで、2位ルーラーシップや3位ロードカナロアの49に比べるとかなり多い。勝率も10.8%とランキング上位馬のなかでは目立っていて、連対率は20.0%とトップの数字だった。

ミスタープロスペクター系は、ランキング上位20頭のうち7頭を占める最大勢力。2位ルーラーシップと3位ロードカナロアは、前述したように勝ち星は49と同じで、2着や3着の成績もほとんど差がない。レースの出走頭数が600というのも同じだった。ただ、ダートにおけるイメージとしては、ルーラーシップよりもロードカナロアの方が好印象だ。何故かというと、ロードカナロア産駒はレッドルゼル(根岸S)という重賞ウイナーを出しているからだ。同馬はドバイゴールデンシャヒーン(UAE)で2着と好走し、秋にはJBCスプリント(金沢)を優勝。大きいレースでの活躍馬を出した種牡馬の方が、強く印象に残る。

■表2 ルーラーシップ産駒のJRA平地ダート・クラス別成績(2016年~2021年)

ルーラーシップがダートで大物産駒を出せていない、というのは何も昨年一年間だけの話ではない。表2は16年から21年におけるルーラーシップ産駒のJRA平地ダートのクラス別成績。産駒デビューから5年以上の成績を集計したものになるが、今までJRAのダート重賞で連対した馬が一頭も出ていない。G1においては出走したケースもなかった。基本的にルーラーシップ産駒は芝向きで、ダートのイメージはあまりなかったが、それにしても厳しい成績のように見える。それでもダートでのランキングが2位なのは、下級条件で勝ち星を量産していることを意味している。

実はランキング4位のキズナもルーラーシップ産駒と同様の傾向が出ている。下級条件ではポンポン勝つが、クラスが上がると厳しくなっていき、オープンクラスでバリバリ活躍するような馬が出ていない。キズナ産駒も本質的には芝向きなので、ダートの上のクラスで戦うには厳しいようだ。

ミスタープロスペクター系のなかではキングカメハメハが別格の存在だろう。過去に芝ではロードカナロアやドゥラメンテ、ダートではホッコータルマエなどの超大物馬を輩出している。表1の1年間だけを見ても、勝率11.3%はトップだった。産駒のチュウワウィザードは昨年、勝利こそなかったがドバイワールドカップ(UAE)やチャンピオンズCで2着と好走した。

ボールドルーラー系はシニスターミニスター、パイロ、マジェスティックウォリアーの3頭がランクイン。冒頭で触れたシニスターミニスター産駒のテーオーケインズは、昨年2つのJRA重賞(チャンピオンズCとアンタレスS)を優勝。同産駒のJRA・G1制覇はこれが初めてとなった。

パイロ産駒はメイショウハリオがみやこSを優勝。また、表1の成績には含まれないが、地方馬として初めてJBCクラシック(金沢)を制したミューチャリーもパイロ産駒だ。そして、マジェスティックウォリアー産駒はサンライズホープがシリウスSを優勝した。ボールドルーラー系は、ミスタープロスペクター系やサンデーサイレンス系に比べて頭数ではかなわないが、大きなレースで勝ち切る勝負強さを見せている。

■表3 2021年の2歳JRA平地ダートの種牡馬成績

続いて表3は2021年の2歳・JRA平地ダートの種牡馬成績。ランクキングの顔ぶれは、3歳戦以降と比べると大きく変わっている。まず1位になったのがドレフォン。社台グループが購入したストームバード系の新種牡馬が、いきなり結果を出した。他にも新種牡馬(表内の名前が太字)はザファクター、コパノリッキー、サトノアラジン、イスラボニータがランクインした。

ランキング上位の顔ぶれで興味深いのは、シニスターミニスターがヘニーヒューズよりも上位の2位に入った点と、ホッコータルマエが4位に入った点だ。この両頭は2021年にデビューした新種牡馬ではなく、前年の2歳戦よりも成績が向上している(詳細は後ほど)。このあたりも非常に興味深い。

■表4 シニスターミニスター産駒の距離別成績(2021年・2歳JRA平地ダート)

特にシニスターミニスター産駒の1番人気は【9.1.1.1】という成績で、勝率75.0%・連対率83.3%・複勝率91.7%という凄まじい数字だった。距離別成績(表4参照)も素晴らしく、1200m・1400m・1800mいずれの距離も好走率が高かった。

ホッコータルマエは、ミスタープロスペクター系の中では最高となる4位にランクイン。同馬の父であるキングカメハメハがランク外になったことと、ホッコータルマエ自身の現役時代の成績を考えると、ホッコータルマエにはダート路線におけるキングカメハメハの後継種牡馬となるポテンシャルが十分ありそうだ。ただ、繋養先が父とは異なるため、基本的には非ノーザンファーム生産馬というのが特徴だ。それでいて、これだけの成績を収めているのは立派だ。

同じミスタープロスペクター系のArrogateは19位ながら、勝率36.4%・連対率63.6%・複勝率72.7%という高い好走率をマークした。外国産馬なのでJRA登録馬が少ないのは仕方ないが、こちらもポテンシャルの高さを感じさせる種牡馬だ。ただ、Arrogateは2020年に亡くなっているので、産駒は限られているのが非常に残念だ。

■表5 2020年の2歳JRA平地ダートの種牡馬成績

表5は一昨年、2020年の2歳JRA平地ダートの種牡馬成績。この年、シニスターミニスターは7位で、ホッコータルマエは11位だった。ちなみに新種牡馬だった馬はホッコータルマエのほか、ドゥラメンテ、アジアエクスプレス、ダノンレジェンド、マクフィ、モーリス、ディスクリートキャット、リオンディーズがランクインしている。ここで表3と比較すると、翌年の2歳戦の成績はダウンしている馬の方が多いことがわかる。新種牡馬の方がランクインしやすい傾向があるなか、シニスターミニスターやホッコータルマエはランクを上げてきたことになる。今、JRAのダートで勢いがある血統だと言えるだろう。

表3で1位となったドレフォンを中心に、シニスターミニスターやホッコータルマエの産駒が、今年のダートでどのような活躍を見せ、最終的にランキングがどのようになるかが、今からとても楽しみだ。

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。

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