JRA-VANコラム
今年は混戦? 日本ダービーを分析する
競馬の祭典・日本ダービー。今年で89回目を迎えるこのレースでは、後のクラシック三冠馬8頭をはじめとする数多くの名馬が勝利を飾ってきた。近年では、一昨年の優勝馬・コントレイルが秋に菊花賞も制し無敗での三冠を達成。昨年のシャフリヤールは今春、ドバイシーマクラシックで海外G1制覇を果たしている。今年はどの馬が栄光をつかむのか、過去の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
過去10年の人気別では、1番人気と3番人気が3勝ずつ。昨年は4番人気のシャフリヤールが優勝しており、これら過去10年の連対馬20頭中19頭は5番人気以内から出ている。その一方で3着馬は10頭中6頭が7番人気以下だった。ここ4年のうち3回は3着に9番人気以下の馬が入り、残る1回は12番人気のロジャーバローズが優勝しているため、3連複や3連単なら穴馬を絡めた組み合わせを狙っていきたい。
ここでもうひとつ、人気にまつわるデータを紹介しておきたい。JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降、皐月賞馬が次走日本ダービーで1番人気に支持されると【9.3.2.2】複勝率87.5%を記録するのに対し、2番人気以下にとどまると【1.2.2.12】同29.4%。ダービー2番人気以下で春のクラシック二冠を制覇した馬は1997年のサニーブライアン(6番人気)しかおらず、翌98年のセイウンスカイ(3番人気4着)以降は【0.1.1.7】同22.2%に終わっている。皐月賞馬はダービー当日の人気も重要なポイントだ。
枠番別の成績は、8枠だけが複勝率10%を割って6.7%。この外枠不利という傾向はよく耳にするが、内よりの3~4枠も決して良くはない。表の右に記したように、5番人気以内の人気馬にかぎれば8枠よりも3~4枠のほうが複勝率は低く、1番人気で馬券圏外に敗退した3頭のうち2頭はこの3~4枠。また過去10年の皐月賞馬【2.3.1.4】のうち、4着以下に敗れた4頭はすべて3~4枠を引いていた。
主な前走レース別の成績をみると、クラシック1冠目・皐月賞組が全出走馬の約半数にのぼり、【7.8.5.66】と3着以内馬30頭中20頭を占めている。ただ、その20頭中16頭が3番人気以内に支持されていたため単複の回収率は低い。皐月賞以外の組は合計で【3.2.5.82】複勝率10.9%と好走確率では皐月賞組に及ばないものの、好走馬10頭中8頭は4番人気以下で単複の回収率117%、92%をマークしている。
表4、5では前走皐月賞組について特徴的なデータを拾ってみた。まず皐月賞で3着以内に入った馬の好走確率が高く【4.7.3.15】複勝率48.3%。4着以下だった馬でも【3.1.2.51】と好走例は少なからずあるものの、複勝率は10.5%と皐月賞上位馬とは大きな差がある。
その皐月賞4着以下だった馬で注目したいのは、4コーナーの通過順だ(表5)。皐月賞の4コーナーを8番手以内で通過して4着以下に終わった馬は、日本ダービーで【0.0.0.24】と好走なし。4着以下から巻き返せたのは2018年のダービー馬・ワグネリアン(皐月賞4角12番手・7着)など、皐月賞の4コーナーが9番手以下だった馬ばかりだ。
表4に戻り、皐月賞での上がり3ハロン順位別成績をみてみたい。前走・皐月賞の上がり3ハロンタイムが5位以内に入っていた馬は、日本ダービーで【6.8.4.23】複勝率43.9%。しかし6位以下だった馬は【1.0.1.43】で同4.4%と、好走確率は極めて低い。中でも、皐月賞が良馬場で行われた年(本年も良馬場)に上がり6位以下だった馬は【0.0.0.27】と1頭も好走馬が出ていない。
そしてもうひとつ、鞍上が前走から継続騎乗か乗り替わりかも皐月賞組のチェックポイント。皐月賞から乗り替わりで日本ダービーに出走した馬は【0.0.0.26】と全馬が馬券圏外に敗退した。皐月賞以外の組は継続騎乗【2.1.3.50】複勝率10.7%、乗り替わり【1.1.2.32】同11.1%と好走確率に差がないのとは対照的だ。
最後に表6は、前走皐月賞以外からの好走馬10頭である。この組は前走の4コーナー通過順が5番手以内だった馬が10頭中8頭、そして前走を勝つかタイム差なしの2着だった馬が10頭中9頭を占めている。この2条件を満たす馬は【2.1.4.20】。複勝率は25.9%とさほど高くないが、単複の回収率は388%、248%を記録しているため、2018年16番人気3着のコズミックフォースのようにまったく人気のない馬でも要注意だ。
【結論】
日本ダービーは前走皐月賞で3着以内だった馬の好走確率が高い(表4)。今年の皐月賞1~3着はジオグリフ、イクイノックス、そしてドウデュースだ。このうち、イクイノックスは皐月賞の上がり3ハロンが34秒6で8位タイ。2走前の東京で上がり32秒9を記録したように切れる脚も持つ馬だが、良馬場の皐月賞で上がり6位以下というのはマイナス材料で(表4本文)、この3頭の中ではやや評価が下がる。
一方、皐月賞馬のジオグリフは上がり34秒3で4位タイ。皐月賞3着のドウデュースは33秒8で1位だった。ジオグリフは福永騎手、ドウデュースは武豊騎手が引き続き騎乗予定で、2頭とも表4から特に問題は見当たらない。ただ皐月賞馬のジオグリフは当日の人気がカギを握り、1番人気か2番人気以下かで明暗が分かれる(表1本文)。下馬評では1番人気になるほどの支持を得るのはやや難しそうな雰囲気のため、現時点ではドウデュースを上位にとりたい。皐月賞の上がり3ハロン1位馬は、日本ダービー【4.0.0.7】で勝率36.4%。2~3着がないため、買うなら馬単・3連単の1着候補だ。
皐月賞4着以下の馬はいずれも表4や表5で減点材料を抱えている。そんな中からあえて1頭挙げれば、皐月賞の4コーナー8番手でぎりぎり「8番手以内」に入ってしまったオニャンコポンだろうか。上がり34秒3は4位タイで、菅原明騎手が継続騎乗の予定だ。
別路線組では毎日杯の優勝馬ピースオブエイト、青葉賞を勝ったプラダリア、そしてプリンシパルSの覇者セイウンハーデスがいずれも前走の4コーナーを5番手以内で通過していた(表6)。特に、近年好走が続く9番人気以下になる馬がいれば穴候補としてぜひ買い目に組み込みたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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