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JRA-VANコラム

今年も波乱の予感か? 函館記念を展望する

2023年7月13日 16:00配信
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2022/3/6 中山 9R 湾岸ステークス 1着 14番 キングオブドラゴン (Photo by JRA)

今週の重賞は、函館で土日に各1レースが組まれている。日曜の函館記念は、波乱の決着が多いことでも知られるハンデG3。昨年、芝・ダート重賞勝利を達成した白毛馬ハヤヤッコは、今年も登録がある。もちろん、ほかの出走予定馬も連覇を許すまいと手ぐすねを引いていることだろう。波乱が多いということは、それだけ難解とも言い換えられるが、過去10年のデータを元に傾向を読み解いてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

表1は人気別成績。勝ち馬10頭中8頭は1~5番人気から出ており、波乱が目立つといっても人気薄が勝ち切るケースは多くはない。ただし、1、2番人気はいずれも2連対、4、5番人気も複勝率20%以下にとどまる。3番人気こそ好成績だが、上位人気を信頼しづらいのも確かだろう。一方、驚異的な成績を残しているのが7番人気で、8、9番人気も上位人気と差がない複勝率を記録。また、10番人気以下の馬券絡みも計8回あり、人気薄まで手広くカバーする必要がありそうだ。

■表2 単勝オッズ別成績

単勝オッズ別の成績も確認しておきたい。過去10年、単勝1倍台どころか2倍台だった馬もおらず、さらに単勝3倍台の馬がすべて4着以下というのはハンデ戦らしい。勝ち馬を多く出しているのは単勝4倍以上10倍未満のゾーンで、10頭中8頭が該当する。その一方で、単勝100倍以上で3着以内に入った馬はおらず、穴を狙うにしても100倍未満に収まっていることは条件となりそうだ。

■表3 枠番別成績

表3は枠番別成績。まず勝ち馬に注目すると、10頭中8頭は1~4枠から生まれている。同様に複勝率に関しても1~4枠はいずれも25%以上と、5~8枠より高い数値を記録している。この通り、基本的には1~4枠に優位性が見られる。ただし、7、8枠は回収率が非常に高く、外枠の馬が穴をあけるケースには注意しなければならない。ただし、16番枠は【0.0.0.9】と、フルゲート時の大外枠に関しては苦戦の傾向がある。

■表4 前走距離との比較

表4は、前走距離との比較で「今回延長」「同距離」「今回短縮」に分け、それぞれの成績を表したもの。なお、好走例がない前走ダートは表4の集計から省いている。

「今回短縮」は勝率、連対率、複勝率、複勝回収率の4項目でトップ。なお、この場合の好走は、前走が天皇賞・春、目黒記念、日経賞の3レースに限られ、該当馬は【3.4.1.15】、勝率13.0%、複勝率34.8%、単勝回収率140%、複勝回収率196%の好成績を残している。言い換えれば、同年の芝2500m以上のG1もしくはG2が前走という馬がいれば注目する価値がありそうだ。なお、関連するデータを次の表5の項で確認したい。

「同距離」の成績も悪くない。勝率、複勝率、複勝回収率は「今回短縮」とさほど変わらず、単勝回収率では大きく上回っている。この場合は、前走で(芝2000m)重賞に出走していた馬が好走の大半を記録しているので、表6の項で改めてデータを紹介する。

「今回延長」は全体に数値がよくない。ただし、1~3着計11回は「同距離」と同数で、無視することはできない。この11回のうち、半数以上の6回を記録している前走巴賞出走馬については、表7の項でデータを取り上げる。

■表5 前走天皇賞・春、目黒記念、日経賞出走馬の各種データ

表5は、前走で天皇賞・春、目黒記念、日経賞に出走していた馬に関するデータをまとめたもの。この場合、前走1~5着なら凡走なしと絶好だが、前走6~9着および10着以下から巻き返した馬も多く、前走着順はそこまで神経質にならなくてよさそう。

そこでチェックしておきたいのが、前走における馬体重の増減だ。このケースで前走時に馬体重がマイナスだと【3.3.0.2】と抜群の成績を残している。たとえば、昨年1着のハヤヤッコも前走の天皇賞・春がマイナス8キロの出走だった。この通り、あくまで前走時の増減であることにご注意いただきたい。

■表6 前走芝2000m重賞出走馬の各種データ

表6は、前走で芝2000m重賞に出走していた馬に関するデータをまとめたもの。まず前走着順は、9着までに入っていれば十分。また、10着以下だと好走の確率は下がるものの、複勝回収率200%と激走傾向が見られるため、これも侮ることはできない。

前走の上がり順位も注目に値する。というのも、前走上がり順が6位以下だった馬が好成績という意外な傾向が残っているからだ。対して、前走上がり順が1~5位だった馬は連対例がなく、3着が2回という結果が残っている。まとめると、前走でも同じ芝2000m重賞を走っていた場合、そこで上がり順が6位以下だった馬のほうがかえって好走しやすいのが函館記念の特徴となっている。

■表7 前走巴賞出走馬の各種データ

表7は、前走で巴賞に出走していた馬に関するデータをまとめたもの。前走着順は要注意で、1~5着だった馬は【0.0.1.28】の不振。6~9着だった馬のほうが好走しやすく、巴賞と函館記念は着順がまったく連動しない傾向が見て取れる。

注目のファクターは前走4角通過順で、巴賞で4角6~10番手だった馬が好走の大半を記録している。一方、4角1~5番手だった馬は【0.1.0.26】と、巴賞で先行していた馬は苦戦の傾向が見られる。なお、巴賞で4角1~5番手かつ1~5着だった馬は、過去10年の函館記念で【0.0.0.18】と1頭も好走していない。

■表8 前走レース別成績

※好走例のある前走のみ掲載

好走例はあるものの、ここまで触れられなかった前走について、表8の前走レース別成績で確認しておきたい。注目は前走エプソムC。この組の好走馬3頭は前走1~5着に入っており、該当すれば【2.1.0.0】とオール連対を誇る。ほかに、前走NHKマイルC、都大路S、ジューンSから3着に入った馬が1頭ずついる。

【結論】

最後に、今年の函館記念に登録した21頭について、今回のデータ分析から有力と思われる馬を紹介していこう。

まずは函館記念で好成績の「距離短縮」から。この場合の好走は、前走が天皇賞・春、目黒記念、日経賞に限られることを表5の項で述べた。今年の登録馬で該当する2頭を比較すると、前走の日経賞出走時の馬体重がマイナス4キロで、好走率の高いパターンに当てはまるキングオブドラゴンに注目したい。

「同距離」では、好走例が多い前走芝2000m重賞出走馬をチェック。このケースでは前走1~9着および前走上がり6位以下に合致すると好走率が高いことを表6の項で述べた。ただし、両方を満たす馬は見当たらない。そこで、前走着順の条件を満たすスカーフェイス(鳴尾記念8着)、イクスプロージョン(新潟大賞典3着)、ハヤヤッコ(同6着)、マイネルウィルトス(函館記念2着)、前走上がり順の条件を満たすロングラン(新潟大賞典上がり12位)の名前を挙げておく。

「距離延長」では前走巴賞が中心となるが、函館記念とは着順が直結せず、むしろ6着以下に終わっていた馬のほうが好走しやすいことを表7の項で述べた。加えて、巴賞で4角1~5番手だった馬の成績も芳しくない。ところが、今年の巴賞は4角を1~4番手で回った馬が1~4着を占める展開となり、この4頭はいずれも登録があるもののデータ的には推奨しづらい。強いて言えば4角7番手だったルビーカサブランカだが、同馬も5着とこちらの条件は満たさない。また、「距離延長」でもうひとつ有望な前走エプソムCも、今年の2頭は6着以下に終わっており、こちらも好走データには当てはまらない。

以上、有力と思われる馬を紹介していこうと述べたものの、好走パターンに合致する馬が少ないというのが実情である。となると、今年の函館記念も波乱の決着を想定するべきなのかもしれない。あるいは、3勝クラスを勝ち上がってきたばかりのアルナシーム、ブローザホーン、ローシャムパーク、ローゼライトの勢いが上回る可能性も視野に入れておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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