JRA-VANコラム
実力馬が多数参戦! エルムSを分析する
札幌競馬場のダート1700mを舞台に行われるエルムS。1996年の第1回は函館ダート1700mのシーサイドSとして行われ、翌97年から札幌のエルムSとなったが、その後も施行時期の変更や代替開催などがあり、現在の時期に定着したのは2015年から。そのため今回はそれ以降の5回を対象とし、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用してデータを分析してみたい。
過去5年、人気別の複勝率上位は1、2、4番人気でいずれも60.0%。3番人気こそやや不振なものの、1~4番人気で計【4.3.3.10】と3着以内馬15頭中10頭を占める。残る好走馬5頭は5~10番人気。11番人気以下の馬はすべて馬券圏外、単勝オッズでみると40倍以上の馬は【0.0.0.24】と好走がない。
年齢別では5歳馬が連対率33.3%、複勝率46.7%と抜群の好成績。勝率では4歳馬が5歳馬を上回るものの、【2.0.0.6】と勝てなければ馬券圏外という成績だ。優勝馬5頭はすべてこの4~5歳から出ており、6歳以上の馬は計【0.3.3.38】。複勝率でも13.6%にとどまり、4~5歳馬の同37.0%とは大きな差がある。
枠番別の成績をみると、2、3、4枠がいずれも複勝率40%以上の好成績。2~4枠の合計では【4.3.3.12】複勝率45.5%となり、単複の回収率もそれぞれ231%、120%と高い。ほかに、外では8枠が複勝率30.0%と悪くないが、6~7枠は【0.0.1.19】。また1枠からは好走馬が出ていない。
前走クラス別では、中央競馬のG3組とオープン特別組の好走が多く、特に連対馬は10頭中9頭がここから出ている。オープン特別組は3勝を挙げる一方で、連対率や複勝率はやや低め。中央G3組は1勝止まりだが、連対率23.5%、複勝率29.4%と好走確率は高い。また、前走地方競馬組は好走しても3着止まりだが、ダートグレード競走出走馬にかぎると【0.0.3.7】で複勝率は30.0%になる。
オープン特別組の3着以内好走馬は表5の6頭で、いずれもエルムSと同距離のマリーンSか大沼S(ともに函館)の出走馬。そのうち5頭は前走を上位人気で好走し、エルムSでも2番人気以内に支持されていた。残る1頭、昨年2着のハイランドピークは、前年のエルムS優勝馬だ。
続いて表6は前走中央G3組の好走馬。こちらの5頭はプロキオンS(中京ダート1400m、本年は阪神で代替)か平安S(京都ダート1900m)と、エルムSとは200m以上離れた距離のレースに出走していたが、2走前以前にダート1800mの重賞で連対するか、エルムSで3着(以内)に入った実績があったことで共通している。
そして表7は地方競馬組で、この組は札幌・函館のダート1700m成績に注目。好走した3頭すべてに出走経験があり、複勝率60%以上と安定した走りを見せていた。昨年1番人気で7着のグリムや、2017年2番人気7着のピオネロは、このエルムSが北海道のダート戦初出走で掲示板外敗退を喫した。
前走でオープン特別か中央競馬のG3に出走していた馬が連対馬10頭中9頭を占めるエルムS。今年まず注目したいのはオープン特別組(表5)から、マリーンSを3馬身半差で圧勝してきたタイムフライヤーだ。そのマリーンSは2番人気で、今回も上位人気は必至。表5の好走条件はすんなりクリアできそうだ。4歳だった昨年は休養明けに加え初ダートで6着に敗退したが、4コーナーで2番手まで押し上げた走り自体は悪くなかった。5歳馬は好成績を残しており(表2)、ダート経験を積んだ今年は好勝負が期待できる。
オープン特別組ではほかに、ここ2年の本競走1、2着と好相性のハイランドピークにもチャンスがある。昨年は前走・大沼Sで6着に敗れ、オープン特別組の好走条件からは外れながらも2着に好走した。年齢をひとつ重ね6歳になった点は割引が必要でも(表2)、今年は大沼Sを3着にまとめており相殺できそうだ。
一方、中央G3組(表6)は前走平安S出走馬が不在で、プロキオンS組にはダート1700~1800mの重賞で好走歴を持つ馬がいない。また、今回上位人気が予想されるアンタレスSの1、2着馬、ウェスタールンドとアナザートゥルースは重賞実績こそクリアするものの、そのアンタレスS組は過去5年【0.0.0.4】(2017年モンドクラッセ3番人気10着など)に終わっている。それぞれ8歳、6歳という年齢も減点材料となり、データからは強く推しづらい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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