JRA-VANコラム
狙う価値の高い「父」と「母の父」の組み合わせをチェック!
今回は好成績を残している「父」と「母の父」の組み合わせ、いわゆる「ニックス」について考えてみたい。ニックスとは「優秀な競走馬が出やすい血統の組み合わせ」を意味する競馬用語。今回は特に単勝回収率に着目し、馬券的な価値の高い「父」と「母の父」の組み合わせを調べていく。集計期間は2016年1月5日~2020年8月16日。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は、芝におけるニックスを表すデータで、集計期間内に100走以上し、勝率10%かつ単勝回収率90%以上を満たす「父」と「母の父」の組み合わせを単勝回収率順で掲載した。トップの単勝回収率239%を記録したのはロードカナロア×アグネスタキオン(この場合、ロードカナロアが父、アグネスタキオンが母の父を表す。以下も同様)。ほかの組み合わせと比べて、好走率に関しては特別高いわけではなく、オープンでの勝ち鞍もないが、1勝~3勝クラスでよく勝っている。これに続くダイワメジャー×ジャングルポケットの組み合わせからは、16年函館スプリントSを制したソルヴェイグが出ている。複勝系の数値がより優秀なのは3着が多いことの裏返しとも言えるが、安定感は評価できる。そのほか、ひときわ高い勝率を記録しているのがディープインパクト×Unbridled's Songで、この組み合わせから生まれた代表馬はもちろん、今年春のクラシックで無敗の二冠を達成したコントレイルだ。
表2は、ダートにおけるニックスを表すデータで、掲載の基準は表1と同様。単勝回収率トップのゴールドアリュール×キングカメハメハは好走率も高く、19年3月3日の総武S(オープン特別)ではマイネルオフィールが最低14番人気で勝利するなど激走も少なくない。これに続くシンボリクリスエス×スペシャルウィークとキングカメハメハ×フレンチデピュティも150%を超える単勝回収率を記録。前者は4~9番人気の中穴クラスの数値がよく、後者は10番人気以下の大穴に注意したい。
表3~6ではもうすこし細かく、距離別のデータを見ていきたい。表3は1000~1300mのニックスを芝・ダート別で示したデータで、掲載の基準は50走以上、勝率10%かつ単勝回収率90%以上とした(表4、5も同様。表6は30走以上)。
芝で単勝回収率100%以上となったのはヨハネスブルグ×サンデーサイレンスとクロフネ×サンデーサイレンスの2組。どちらも1着に対して2、3着の数が少なく、好走したときには勝ちきる傾向が見られる。産駒がさらに増えてくるだろうロードカナロア×ディープインパクトは今後注目の組み合わせで、重賞でも18年小倉2歳Sをファンタジストが制してすでに結果を出している。
一方、ダートで基準を満たした3組のうち、父サウスヴィグラスの組み合わせが2組。サウスヴィグラス×ブライアンズタイムは全6勝中3勝が7番人気以下と激走が目立ち、サウスヴィグラス×ダンスインザダークの連対率32.8%は馬連の軸馬にもってこいの数値だ。
表4は1400~1600mのニックスを示したデータで、単勝回収率200%を超えたのは2組。ただし、このうちディープインパクト×サクラバクシンオーは全6勝中5勝をエントシャイデン1頭が挙げており、やや再現性に乏しいきらいがある。もうひとつのハーツクライ×ブライアンズタイムは異なる3頭が勝利を挙げ、そのすべてが複数の勝利をマーク。うち1頭は、重賞のダービー卿CTやターコイズSを勝ったマジックタイムだ。ルーラーシップ×ディープインパクトでは菊花賞馬キセキが代表例だが、その印象とは違ってマイル近辺での活躍が目立つ。ほかに好走率が高いのはダイワメジャー×シンボリクリスエスやディープインパクト×キングカメハメハといったあたり。なお、ダートで基準を満たしたのはキングカメハメハ×アグネスタキオンのみだった。
表5は1700~2000mのニックスを示したデータ。この距離はレース数が1000~1300mや1400~1600mより多く、基準を満たしたニックスの組み合わせもぐっと増えた。
芝で単勝回収率200%を超えた唯一の組み合わせがハーツクライ×Unbridled's Songで、主な馬に18年大阪杯を制したスワーヴリチャードがいる。勝率24.1%が示す通り、しっかり勝ちきっていることが高い単勝回収率につながっている。同じ母の父では、ディープインパクト×Unbridled's Songがさらに上回る勝率29.2%を記録。これは表1の項で前述した通り、今年の二冠馬コントレイルの組み合わせで、1、2番人気に推されたときは【16.4.4.7】、勝率51.6%、単勝回収率138%とかなり優秀な数値が残っている。勝率20%を超えるもうひとつの組み合わせはディープインパクト×Acatenangoで、これも昨年の菊花賞馬ワールドプレミアや16年紫苑Sを勝ったビッシュを送り出した好ニックスだ。
ダートではゼンノロブロイ×エンドスウィープ、カジノドライヴ×スペシャルウィーク、ゴールドアリュール×キングカメハメハの3組が単勝回収率300%をオーバー。あるいは、勝率23.5%、複勝率56.9%と好走率が極めて高いアイルハヴアナザー×フジキセキのような組み合わせもあり、ダート中距離には注目のニックスが数多く存在している。
表6は2100m以上のニックスを示したデータ。芝で単勝回収率285%を記録したのがハービンジャー×キングカメハメハで、17年エリザベス女王杯のモズカッチャン、18年有馬記念のブラストワンピースと2頭のG1馬が出ている。続くディープインパクト×Sholokhovは同じ母を持つ産駒3頭で全9勝を記録しており、これは参考記録とすべきか。オルフェーヴルやゴールドシップを出した「黄金配合」として有名なステイゴールド×メジロマックイーンもランクイン。また、好走率が高い組み合わせとしてルーラーシップ×サンデーサイレンス、ハーツクライ×シンボリクリスエスの2組も挙げておきたい。ダートはこの距離のレースが少ないこともあって1組のみとなったが、そのクロフネ×サンデーサイレンスの数値は非常に良好だ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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