JRA-VANコラム
コース実績は必須! 武蔵野Sを分析する
今週は土曜日に東京競馬場で武蔵野Sが行われる。東京ダート1600mで行われるG3競走で、1着馬にはチャンピオンズCの優先出走権が与えられる。いつものように過去10年の結果を分析し、レースの傾向と対策について考えていきたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は過去10年の武蔵野Sで3着内に好走した馬の一覧。2019年は9番人気のワンダーリーデルが勝利し、2着が8番人気タイムフライヤー、3着が13番人気ダノンフェイスで3連単は235万3630円という大波乱になった。17年には3着に15番人気アキトクレッセントが入るなど、伏兵馬の食い込みが目立つ。一筋縄ではいかない難解なレースという印象だ。
また、同一馬が複数回好走している点も特徴。ダノンカモンは10年から12年にかけて3年連続で好走した。また、アドマイヤロイヤルやタガノトネールが2回馬券になっている。近年はそうした事例がみられないが、常に頭に入れておきたい傾向だ。
性別の傾向は圧倒的に牡馬・セン馬が強い。牝馬で好走したのは10年3着のブラボーデイジーだけだ。年齢に関してはあまり特徴がない。3歳から7歳まで幅広く勝ち馬・連対馬が出ている。次は脚質だが、こちらは興味深い傾向が出ている。
表2は過去10年の武蔵野Sの脚質・上がり3ハロン順位別の成績。まず脚質だが、連対率や複勝率は先行が優勢ながら、勝率は中団の方が先行よりも高い。中団は5勝2着4回3着2回と延べ11頭の好走馬を出しており、先行して好走した馬と同数だった。後方の勝率も6.4%と先行を上回っており、中団~後方の差しが決まりやすい印象だ。また、上がり3ハロン1位の成績は【5.0.3.4】で単・複の回収率はともに300%を超えている。シンプルに一番速い上がりを使えそうな馬を狙えば好結果が期待できる。
一方、逃げで好走したのは16年1着タガノトネールしかいない。しかもこの年は重馬場の影響でかなり脚抜きが良く、速い時計が出やすい状況だった。勝ち時計の1分33秒8はレコード。同日12Rのダート1300m・1000万下(2勝クラス)も1分16秒1のレコード決着だった。よって普通の馬場状態で行われる武蔵野Sでは、逃げ切り勝ちは困難で2~3着に粘るのも大変と考えたい。
表1の一覧に戻り好走馬の上がり3ハロンを調べると、メンバー中1位(黄色)、同2位(水色)、同3位(緑色)の脚をマークしていた馬が多い。そうした馬が毎年1頭は好走している。
次に好走馬の過去実績に注目した(表3参照)。結論から言うと東京ダート・3勝クラス(1600万下)以上での好走実績は必須に近い。なおかつ速い上がりを使って勝っていればベストだ。
例えば19年1着ワンダーリーデルは同年のアハルテケSを上がり1位の脚を使って勝利していた。3着ダノンフェイスは17年霜月Sで上がり1位の脚をマークして勝利した経験があった。このように東京ダート1400~2100mのオープン特別で勝ったことのある馬が非常に多い。
重賞の武蔵野SやユニコーンS、根岸Sの好走実績でももちろん構わない。3勝クラス(1600万下)の1600mを勝っていた馬もかなり多く、東京ダートで実績があるかどうかが非常に重要だ。
東京ダートの目ぼしい実績がなく好走した馬は、10年3着ブラボーデイジーや15年2着タガノトネール、19年2着タイムフライヤーぐらいしかいない。ただ、ブラボーデイジーは09年のヴィクトリアマイルで2着、タイムフライヤーは17年ホープフルS1着と芝G1で好走実績があった。タガノトネールは盛岡のマイルCS南部杯(Jpn1)で2着の実績があった。G1の実績がある馬だけは、東京ダートの経験が乏しくても地力を警戒したい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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