JRA-VANコラム
「叩き2戦目」の最新事情をデータから分析する
今回のテーマは「叩き2戦目」。近年はG1でも休み明け初戦から好走するのが当たり前となり、叩き2戦目があまり注目されなくなってきた印象もある。そこで今回は、叩き2戦目の最新事情についてデータを調べてみたい。なお、本稿では「中12週(約3カ月)以上の出走=休み明け初戦」「そこから中4週以内で出走=叩き2戦目」と定義する。集計期間は18年1月6日~20年12月6日の約3年分で、集計対象は平地戦のみ。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は、本稿の定義における「休み明け初戦」と「叩き2戦目」の成績を比較したもの。好走率については、叩き2戦目のほうが高いものの、休み明け初戦との差は小さい。この数値を見る限り、叩き2戦目で大きく上昇というケースがそれほど多くないのは確かなようだ。このことを踏まえたうえで、表2以降のデータを確認していきたい。
表2は、叩き2戦目の前走着順別成績。言い換えると、休み明け初戦で何着だった馬が、叩き2戦目で狙い目となるのかを示すデータである。原則的に昇級となる前走1着を除き、好走率ベースでは休み明け初戦の着順がよかった馬ほど高い数値を残しており、これは素直な傾向が出ている。一方、回収率に着目すると、単勝では前走6~9着、複勝では前走1着や前走2着が80%以上の数値をマークしており、券種に合わせて狙っていきたい。
表3は、叩き2戦目の人気別成績。1番人気は勝率と単勝回収率がひと息で、2、3番人気の好走率も水準を若干下回っており、上位人気に推された場合の信頼性はさほど高いとは言えない。回収率的に有利なのは6、7番人気あたりで、叩き2戦目ではいわゆる中穴に妙味があるようだ。
表4は馬体重に関するデータ。ご覧の通り、叩き2戦目では馬体重が大きい馬ほど好走率が高く、特に「520~539キロ」や「540キロ以上」は回収率も優秀だ。つまり、500キロを優に上回る超大型馬に関しては、現在もひと叩きの効果が十分見込めると言えるのではないか。G1で例を挙げると、19年に休み明け初戦の金鯱賞(中15週・5着)をひと叩きして大阪杯(中2週・当日524キロ)を制したアルアインがいる。また、馬体重の増減については、決定的な差は見られない。イメージ的には「休み明け初戦を叩き、次走で馬体が絞れた馬」はよさそうな気もするが、実際のデータを見ると「今回減」は、「同体重」や「今回増」に比べて好走率が若干低いぐらいである。
表5は叩き2戦目の厩舎別成績(50走以上)で、勝率順と単勝回収率順にそれぞれ5位まで掲載した。両方のランキングに入っている藤沢和雄厩舎(勝率2位、単勝回収率4位)と音無秀孝厩舎(勝率4位、単勝回収率3位)は注目の存在。内容を確認すると、両者ともに条件戦での好走が大半を占める。前者は18年天皇賞・秋1着のレイデオロ、後者も18年ヴィクトリアマイル3着のレッドアヴァンセと叩き2戦目のG1で好走した例もあるが、どちらかといえば例外と言える。
表6は、叩き2戦目の種牡馬別成績(50走以上)で、表5と同じく勝率順と単勝回収率順にそれぞれ5位まで掲載した。勝率1位、単勝回収率4位と両方のランキングに入っている唯一の存在がシニスターミニスターだ。叩き2戦目における得意条件を調べると、ダートの1400mや1700mの成績がよく、合算して【8.2.1.29】、勝率20.0%、複勝率27.5%、単勝回収率297%、複勝回収率93%。19年8月10日のオープン特別・阿蘇S(小倉ダート1700m)では、産駒のアードラーが10番人気1着の激走を披露している。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。