JRA-VANコラム
データでもわかる牝馬の活躍が際立った2020年の重賞戦線
昨年(2020年)の重賞戦線を振り返ると特に牝馬の活躍が目立った印象だ。天皇賞(秋)を制して史上最多の芝G1(JRA+海外)・8勝を挙げたアーモンドアイは、続くジャパンCも制覇。「世紀の一戦」と呼ぶにふさわしい好レースを勝ち、同記録を9勝と伸ばした。先に発表されたJRA賞でも無敗のクラシック3冠を達成したコントレイルらを抑えて年度代表馬に選出された。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
G1の勝ち星数で言えばグランアレグリアは3勝(安田記念、スプリンターズS、マイルチャンピオンシップ)を挙げた。特に安田記念ではアーモンドアイを2着に退けて勝利しており、内容・インパクトの面でも高く評価できるものだ。また、クロノジェネシスは6月の宝塚記念に続き、年末の有馬記念も制覇。グランプリを1番人気に応えて勝利という素晴らしい結果だった。
2020年に行われた平地重賞のうち全性が出走可能なレース(牝馬限定戦、牡馬・牝馬戦を除く)は全部で95あった(表1参照)。内訳は芝が80レース(まだグレード認定されていない葵Sも含む)で、ダートが15レース。そのうち牝馬が勝利したレース数は26だった。この数字だけを聞いてもピンとこないかもしれないが、他の年と比較するとこの成績の凄さがわかる。
19年はリスグラシューが宝塚記念と有馬記念を優勝。さらにアーモンドアイが天皇賞(秋)を制し、グランアレグリアは阪神Cを勝った。しかし、牝馬の勝ち星数は12にとどまった。18年はアーモンドアイがジャパンCとシンザン記念を勝つものの、牝馬の勝ち星数は11。17年はスマートレイアーが京都大賞典、ルージュバックがオールカマーを勝ったがG1を勝った馬はいなかった。合計勝ち星も6しかなく、これは過去10年で最も低い成績となっている。
16年はマリアライトが宝塚記念を優勝。ルージュバックは毎日王冠とエプソムCを制した。15年はショウナンパンドラがジャパンCとオールカマーを優勝。牝馬の勝ち星数は14で、一応過去10年では2番目に多かった。
12年から14年にかけてはジェンティルドンナが毎年G1を勝利したが、牝馬の勝ち星は14年10、13年9、12年10だった。11年はカレンチャンがスプリンターズS、ブエナビスタがジャパンCを勝ち、勝ち星数は13だった。
こうしてみると牝馬が牡馬を相手に古馬のG1を勝つことは当たり前になっている。特に中央競馬の花形ともいえる芝中距離の大レースで主役を張れる牝馬が続々と出てきている印象だ。ただ、そんな中でも昨年マークされた勝ち星数26は驚異的で、他の年の平均に比べてダブルスコア以上の差をつけている。アーモンドアイは20年のジャパンCをもってターフを去ったが、クロノジェネシスとグランアレグリアは今年も現役を続行する。無敗で牝馬3冠を達成してジャパンCは3着だったデアリングタクトの存在もあるので、今年の重賞も牝馬の活躍から目が離せないことになりそうだ。
ちなみに20年前の2001年についても同じようにデータを表1に記載した。対象レース数は89で今よりも若干少ないものの、牝馬は12勝を挙げていた。主な勝ち馬はビハインドザマスク(スワンS)やスティンガー(京王杯スプリングC)。他にはブロードアピールが阪神ダート1400mで行われたシリウスSとプロキオンSを優勝。そしてメジロダーリングが函館スプリントSとアイビスサマーダッシュを勝った。この年は1400m以下のレースで活躍が目立った。ただし、G1の勝利はなかった。
最後に今から30年前にあたる1991年はどうだったか。対象レースは74(芝71、ダート3。アラブのレースは除く)と現在よりもかなり少ない時代だった。そんな中で牝馬は18勝も挙げていた。レース数に対する割合は約24.3%だった。2020年の同割合は約27.4%なので、1991年も牝馬がとても活躍したと言っていいだろう。具体的にはダイイチルビーが安田記念とスプリンターズSを優勝。そして3歳(現2歳)のニシノフラワーが札幌3歳S(札幌芝1200m)とデイリー杯3歳S(京都芝1400m)を勝利した。
牝馬が牡馬を負かして重賞を勝つことは30年前も意外と多かった。最近10年の間で特別増えたという感じではなかった。しかし、2020年だけは26勝と異例と言えるほどたくさん勝った。前述した3頭以外にもラッキーライラックが大阪杯、モズスーパーフレアが高松宮記念を勝っており、G1は9勝と中身も素晴らしいものだった。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。