JRA-VANコラム
今年最後の大一番・有馬記念を分析する
今週日曜の中山競馬場では、グランプリ・有馬記念が行われる。ジャパンCで大熱戦を演じた三冠馬3頭こそ不在ながら、2019年以降に芝2000m以上の国内G1を制した馬のうち、その3頭とサートゥルナーリア以外の現役馬はすべて出走予定。ジャパンCに劣らぬ白熱した戦いを期待できそうだ。この一戦を制するのはどの馬か。JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して過去10年の傾向を分析したい。
過去10年、1番人気馬は【5.2.1.2】で複勝率80.0%、単勝3倍未満の馬は【5.3.0.1】同88.9%と、厚い支持を集めた馬が安定した走りを見せている。続く単勝3~5倍台は連対なしだが、3倍台なら複勝率は66.7%。そして単勝6~9倍台の馬が【4.2.3.6】複勝率60.0%をマークしており、昨年はリスグラシュー(単勝6.7倍)とサートゥルナーリア(単勝7.8倍)によるワンツー決着だった。
また単勝10倍以上の穴馬なら、極端な人気薄(単勝50倍以上や11番人気以下)でさえなければ馬券に絡む確率に大差はないため、配当妙味重視であまり人気のない馬を優先して買い目に加えるような馬券作戦も考えられる。
枠番別では1枠と3~6枠が複勝率20%以上。3、4枠は連対率も20%以上と、ここ10年は中枠が優勢だ。馬番別にみると6~11番が複勝率28.8%、複勝回収率101%を記録している。
性齢別の成績では、3歳の牡・セン馬が【5.2.3.15】と優勝馬の半数を占め、複勝率は40.0%。過去10年のうち8回で馬券に絡んでいるため軽視は禁物だ。牝馬は4歳馬【0.1.0.9】に対し5歳馬が【2.1.0.8】。昨年は1番人気の4歳牝馬・アーモンドアイが9着に敗れ、2番人気の5歳牝馬・リスグラシューが圧勝を飾っている。
3着以内に好走した牝馬4頭をみると、全馬に芝2200m以上のG1を制した実績があり、うち3頭は牡馬相手を含むG1・3勝以上を挙げていた。残る1頭のクイーンズリングは、デビュー当初に中山競馬場で2連勝。引退レースとなった2017年の有馬記念(2着)はそれ以来約3年ぶりとなる中山での出走だった。
続いて表5は前走レース別の成績(本年の登録馬の前走のみを抽出)である。菊花賞【4.1.2.3】とジャパンC【3.4.6.47】の2レースで、表5に含まれる3着以内馬24頭中20頭。その他では、アルゼンチン共和国杯、天皇賞(秋)、そしてエリザベス女王杯組が好走馬を出している。
菊花賞組の好走馬7頭について3歳クラシックでの成績をみると、日本ダービーでの結果はあまり問われず、前走の菊花賞優勝馬や、有馬記念と同じ中山で行われる皐月賞で馬券に絡んだ馬が多く好走している。また、三冠馬・オルフェーヴルを除き3歳クラシック以外では馬券圏内を外していないことも共通点だ。
なお、前走が菊花賞以外だった3歳馬は3頭が好走しており、それぞれの国内G2以下での成績をみると、2010年1着ヴィクトワールピサ【4.1.0.0】、同3着トゥザグローリー【4.2.0.1】、そして2019年2着サートゥルナーリア【3.0.0.0】。3歳馬ならG2以下で馬券圏外敗退の経験がない馬が狙いになる。
前走ジャパンC組では表7の13頭が3着以内に好走している。以前はそのジャパンCで大敗を喫したゴールドシップ(2013年)などの好走もあったが、2014年以降は好走した7頭すべてジャパンCで5番人気以内かつ5着以内だった。また、前年以前の有馬記念や、同じ中山のG1・皐月賞で3着以内に入った実績があればプラス材料ととらえて良さそうだ。
最後に表8は、天皇賞(秋)、エリザベス女王杯、アルゼンチン共和国杯からの好走馬4頭である。牝馬クイーンズリングと3歳馬サートゥルナーリアについては、それぞれ表4と表6本文で触れた通りだ。
残るゴールドアクターとレイデオロを見ると、ゴールドアクターは前年夏以降【5.0.1.0】で前走アルゼンチン共和国杯1着、レイデオロは同【3.1.1.0】(国内のみ)で前年秋に神戸新聞杯制覇と、有馬記念前までの1年半で「複勝率100%かつ芝2400m以上での重賞勝ち」を記録していた。
【結論】
過去10年の有馬記念では表3で挙げたように、3歳の牡・セン馬が好成績を残しているが、今年は菊花賞優勝馬や皐月賞上位馬(表6)が不在。そこで3歳牡・セン馬に次いで勝率が高い5歳牝馬(表3)・ラッキーライラックにまず注目したい。エリザベス女王杯連覇や、牡馬相手の大阪杯優勝など、表4に挙げた牝馬の好走条件はクリア。5歳牝馬、芝2400m以上で香港ヴァーズ2着という実績は昨年引退レースを圧勝で飾ったリスグラシューと同じだ。
3歳馬ではオーソリティが筆頭格。今春は青葉賞を好時計で制した後、剥離骨折のため日本ダービー出走はかなわなかったが、復帰戦となった前走・アルゼンチン共和国杯で古馬を撃破。G2以下【4.0.1.0】複勝率100%(表5本文)と、3歳馬の好走パターンに当てはまっている。
同じくG2以下【4.2.0.0】で複勝率100%の3歳馬・バビットにも一発がありそうだが、こちらは前走の菊花賞で10着に敗れているのが気がかり。過去10年の優勝馬はすべて前走4着以内のため、こちらは2~3着の穴候補としたい。
その他、牝馬のクロノジェネシスやカレンブーケドールは、G1勝利数やそれを補う中山実績が不足しているが、クロノジェネシスは芝2200mの牡馬相手(宝塚記念)も含むG1・2勝、カレンブーケドールは中山【1.1.1.0】で表4に準ずる成績と考えられる。牡馬では直近1年半【1.1.1.1】(国内)で今春の天皇賞を制したフィエールマン(表8)、昨年の有馬記念3着馬ワールドプレミア(表7)あたりが候補になりそうだ。これらは当日の人気・単勝オッズ(表1)や枠順(表2)も参考に取捨を考えたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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