JRA-VANコラム
京成杯で有力な1勝馬の見分け方は?
今週は日曜日に中山競馬場で京成杯が行われる。クラシックへ向けて賞金を加算したい3歳馬が中山芝2000mを舞台に戦う。今年の出走予定馬を見渡したところ、すべて1勝馬というメンバー構成となるのが確定している。先日(11日)行われたフェアリーSも全16頭中15頭が1勝馬と、実績はほぼ横一線という状況であった。そんな中、前走東京芝1400mの未勝利戦を勝ち上がった3番人気ファインルージュが勝利を収めた。
今回の京成杯も単純な実績(格)での比較は難しく、レース内容を吟味するなどして有力馬を見分けていく必要があるだろう。昨年(2020年)の京成杯を振り返ると、上位にきた3頭はすべて1勝馬だったので、これらの成績を参考にして今年のレースを考えてみたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
まずは基本情報として京成杯出走馬の前走クラス別成績(過去10年)を調べた(表1参照)。全体的には前走1勝(500万)クラス組の出走が最も多く、勝ち馬は4頭出していた。前走G1・G2・G3組をまとめると、出走頭数は1勝クラス組とほぼ同じだが、勝ち馬は1頭しか出ていない。勝率で言えば前走新馬組が11.8%と最も高く、連対率(17.6%)や複勝率(35.3%)もトップの数字だった。それに伴い単・複の回収率も100%を超えた。前走新馬組の勝利は2019年ラストドラフト、20年クリスタルブラックと最近の2年続いている点も気になるところ。もしかすると2017年にホープフルSがG1に昇格したことも影響しているかもしれない。実績馬がホープフルSを目標にすることで、京成杯のメンバーが手薄になりやすいという理屈だ。
表2は京成杯出走馬の前走距離別成績(過去10年)。優勝馬10頭中9頭は中距離の1800~2000m組となった。2000m組の方が連対率や複勝率は優勢。勝率は1800m組の方が高く、単勝回収率もいい。単勝絡みの馬券を狙いたい場合は、前走1800m組の方が妙味はある。前走1600m組は勝率こそ4.2%で2000m組とあまり差はないが、連対率や複勝率で大きく見劣る。基本的に前走1800~2000m組以外は割り引きが必要だろう。
表3は20年の京成杯1~3着馬の前走成績を記したもの。前述したクリスタルブラックが勝利し、2着にスカイグルーヴ、3着にディアスティマが入った。クリスタルブラックとスカイグルーヴは前走新馬戦で1着、ディアスティマは前走エリカ賞で3着という成績で、いずれも1勝馬だった。それぞれの前走上がり3ハロンタイムとレースラップに注目すると、クリスタルブラックとスカイグルーヴは上がり3ハロンで34秒台の末脚を繰り出し、それがメンバー中最速だった。さらにレースの後半4ハロンに着目すると、クリスタルブラックは12.7-12.3-11.5-11.5、スカイグルーヴは12.5-11.8-11.2-11.1の展開を勝った。つまりレース後半で上がりが速くなる展開を勝利していたことがわかる。その分序盤~中盤のペースは遅かったわけだが、こうしたレースラップを経験し、勝ってきたことがポイントだと考えてみたい。
また、ディアスティマの前走エリカ賞の後半4ハロンラップは11.6-11.2-11.3-12.0。ラスト1ハロンの時計はかかったが、全体としてはスローペースの上がり勝負だった。自身の上がり3ハロンはメンバー中4位だったが、34秒台の末脚をマークしたという意味では、クリスタルブラックやスカイグルーヴと同じだ。
以上のポイントを踏まえて早速今年の京成杯のメンバーをチェックしていきたい。出走予定馬は表4の通りだ。基本的には出走馬の前走成績とレースラップを記載したが、ダート戦を使っていた馬に関してはレースラップを割愛した。
まずは前走1800~2000mのレースに出走し、なおかつ上がり3ハロンがメンバー中3位以内だった馬はグラティアス、スウィートブルーム、タイソウ、タイムトゥヘヴン、テンバガー、ディクテイター、プラチナトレジャー、ラカン、ヴァイスメテオール。多数の馬が該当したが、レースラップタイムを参考にしてさらに絞り込んでみたい。
例えばグラティアスの出走した新馬戦の後半4ハロンは12.7-11.4-11.3-11.5と残り600mから一気にペースが上がり、11秒台の速いラップがゴールまで続いた。このレースは稍重馬場で勝ち時計は2分06秒2とかかったが、最後は瞬発力勝負になったことがわかる。タイソウも後半4ハロン12.5-11.9-11.6-11.4と、残り800mからゴールにかけて徐々にペースがアップした流れを勝ってきた。昨年の京成杯1、2着馬の勝ち方(前走)に通じるものがあり、好感触のイメージだ。
一方、タイムトゥヘヴンが勝ち上がった未勝利戦の後半4ハロンは11.9-12.6-12.1-12.5。このレースは中盤から淀みないペースになり、その流れがゴールまで続いた印象だ。また、テンバガーの前走は後半4ハロン11.5-11.5-11.8-12.1と、ゴールへ向かうにつれて徐々に時計がかかった。スウィートブルームやラカンの前走のレースラップも平均的な感じだった。このようなレースラップが良くないとか、評価しづらいというわけではなく、上がりが速い流れとは異なる展開だったということだ。
プラチナトレジャーは前走東京スポーツ杯2歳Sが4着だったが、レースラップは興味深い。後半4ハロンは12.7-11.9-11.0-11.4と上がりの勝負となった。特に後半2ハロンが速く、自身の上がりは33.6とメンバー中2位だった。ちなみに上がり1位をマークして優勝したのはダノンザキッド。同馬は次走ホープフルSも勝ったことを考えると、プラチナトレジャーも軽視はできないか。
あとはヴァイスメテオールにも注目。東京芝1800mの新馬戦をメンバー中2位の上がり(33.9)をマークして勝ってきた。後半4ハロンのラップは12.9-11.7-11.2-11.2と典型的な上がり勝負だった。グラティアスやタイソウと追い比べになっても好勝負ができるかもしれない。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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