JRA-VANコラム
外国産馬の重賞成績を振り返る
去る5月9日に行われたNHKマイルCではシュネルマイスターが優勝。これがドイツ産・日本調教馬による初のJRA・G1制覇で、外国産馬によるNHKマイルC制覇も2001年のクロフネ以来20年ぶりのことだった。そのクロフネなどが活躍していた当時に比べると、大レースを制する外国産馬はめっきり少なくなった印象だが、数字としてはどの程度の違いが出ているのか。重賞競走における外国産馬の成績を振り返ってみたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、集計期間は1996年以降本年5月9日までとしている。
表1は1996年に創設されたNHKマイルCについて、その優勝馬と各年の外国産馬出走数をまとめたものである。1995年まではニュージーランドT4歳Sが今のNHKマイルCに相当するレースとして日本ダービー前後に行われており、1994年にはヒシアマゾン、95年はシェイクハンドと外国産馬が2連勝を飾っていた。そしてNHKマイルCが創設されるとタイキフォーチュンからクロフネまで6連勝。2000年までの日本ダービーには外国産馬が出走できなかったため、このNHKマイルCが「外国産馬(マル外)のダービー」などと呼ばれていた。
しかし2001年に日本ダービーが外国産馬に開放されたのを皮切りに、2002年に皐月賞、2003年にオークス、そして2004年には桜花賞にも外国産馬が出走可能となった。これにより、NHKマイルCは「外国産馬のダービー」から、「3歳マイル王決定戦」という位置づけへと変化していった。
こうしてNHKマイルCの成績だけをみると、春のクラシックが外国産馬に開放されたためにNHKマイルCへの外国産馬参戦が減ったようにも見える。しかし実際は、日本で活躍する外国産馬の数そのものが減っていた、というのが表2である。平地重賞競走への外国産馬出走数は2000年ののべ380頭をピークに減少に転じると、2004年に200頭を割り込み、2012年には100頭を切った。平地重賞勝利数をみても1997年にはなんと43勝を数えたのが、2008年以降はひと桁で推移している。内国産馬がレベルアップを果たし、ディープインパクトなど種牡馬としても大成功を収める馬が増えると、外国産馬どころか輸入種牡馬の産駒すら活躍しづらくなったのが現状だ。
ただ表2にあるように、平地重賞における外国産馬の好走確率は上昇傾向にある。昨年はモズスーパーフレア(高松宮記念)、モズアスコット(フェブラリーS、根岸S)など9勝を挙げ勝率は11.5%。そして今年はシヴァージ(シルクロードS)、カフェファラオ(フェブラリーS)、エリザベスタワー(チューリップ賞)、そしてシュネルマイスター(NHKマイルC)と既に4勝。勝率の14.8%は、1996年以降で最高だった1997年の13.4%を今のところ上回っている。新型コロナの影響は未知数だが、このまま活躍馬が増えれば今後輸入される馬も増えていくと考えるのが自然だろう。
最後に平地G1競走にかぎった外国産馬の成績もみておきたい。ここ2年は勝率が高くなっているが、出走数が少なすぎるためまったく参考にはならない。のべ50頭以上が出走し、6勝、7勝と挙げていた時代との違いは明らかだ。
このG1への出走数が増加してくるようなら本格的な外国産馬復権もありそうだが、果たしてどうだろうか。現役時に日本で活躍した馬の産駒が好結果を残す今の競馬がおもしろいという面も当然あるが、その一方で、多様な血統の馬が出走・好走してくれたほうがレース検討時の楽しみが広がるという面もある。そういう意味では1990年代後半~2000年代初頭のような事態には至らない程度で、外国産馬のさらなる活躍も期待したいところだ。
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