JRA-VANコラム
「G1を勝った馬の次走」についてのデータを分析する
昨日の安田記念では、ヴィクトリアマイルを快勝したグランアレグリアが単勝1.5倍の1番人気に支持されたものの、2着に敗れた。さらに振り返れば、オークスではソダシ、日本ダービーでもエフフォーリアと、前走でG1を勝った1番人気馬が敗れるレースが3週続いたことになる。そこで今回は、「G1を勝った馬の次走」について考えてみたい。集計対象は16年以降の平地G1。ただし、1位入線馬の降着があった20年高松宮記念は集計から除外する。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1はクラス別成績。G1を勝った次走でオープン特別に出走した馬が1頭いるが、それを除く延べ94頭は重賞に出走し、半数以上の55頭は次走でもG1に出走している。好走率がもっとも高いのはG3で、これは格を思えば当然ではあるだろう。ただ、G1やG2の好走率と極端な差があるわけではなく、G3でも勝ち切れるのは3頭に1頭の割合。G1を勝った馬が次走でG3出走というと有利にも思えるのだが、決して簡単なわけではない。
表2は人気別成績。1番人気の勝率42.3%は、一般的な1番人気の勝率より10ポイントほど高く、2番人気の好走率も水準以上だ。このデータから言えば、いずれも1番人気に推されたオークスのソダシ、ダービーのエフフォーリア、安田記念のグランアレグリアには、それぞれ勝利する資格があったとも言えるのだが……。この3頭は残念ながら1着という結果を出せなかったものの、実際のデータとしてはG1勝ちの次走で1番人気に推されることは基本的にはプラス材料であることは述べておきたい。
一方、G1を勝った次走で3番人気以下だった延べ25頭が勝った例はない。それでも3番人気であれば複勝率71.4%と2、3着は十分期待できるものの、4番人気以下にとどまると合わせて複勝率27.8%で、馬券圏内を確保する確率が大幅に下がってしまう。
表3は前走人気別成績。つまり、前走でG1を勝ったときの人気を示したものである。これを見ると、1番人気や2番人気でG1を勝っていた馬は、その次走でも信頼できることがわかる。しかし、3番人気でG1を勝った馬の次走はひと息で、3番人気以下でまとめても【3.8.6.23】、勝率7.5%、複勝率42.5%、単勝回収率24%、複勝回収率78%という成績。前走5番人気のように部分的に優秀な人気はあるものの、G1を連勝する確率は決して高いとは言えない。
表4は前走タイム差別成績。ポイントは「0.1~0.2秒」と「0.0秒」の間に隔たりがあることで、特に勝率と連対率の落ち幅が大きい。タイム差が「0.1秒」だった馬に限った成績を示しておくと、【9.2.2.9】、勝率40.9%、連対率50.0%、複勝率59.1%。これを見ても、G1を勝ったときのタイム差が「0.1秒」と「0.0秒」では大きな違いがあることがわかる。このデータを見る限り、タイム差なしでG1を勝った馬の次走は過信禁物と判断したい。
表5は前走からの出走間隔別成績。出走例が2頭だけの中2週を除くと、前走のG1勝ちから出走間隔が開くほど高い好走率を記録していることがわかる。なお、中2週で臨んだ2頭は20年安田記念のアーモンドアイと21年安田記念のグランアレグリア。いずれもヴィクトリアマイルを快勝して単勝1倍台の1番人気に支持されたものの、2着という結果に終わった。
表6は年齢別成績。これも綺麗な傾向が出ており、年齢の若い馬ほどG1勝ちの次走で好走する確率が高く、3歳馬の成績は非常に優秀だ。特に「3歳で中9週以上」なら【14.3.3.6】、勝率53.8%、複勝率76.9%、単勝回収率107%、複勝回収率98%の好成績。さらに、20年皐月賞のコントレイルや21年桜花賞のソダシなど「2歳G1を勝ち、次走で3歳G1に出走」したケースでは【3.1.0.0】とすべて連対していることも記しておきたい。
表7は前走脚質別成績。複勝率ベースの数値から際立った有利不利までは見られないものの、逃げてG1を制した馬が次走で勝ったケースがないことは指摘しておきたい。逃げてG1を勝った直後のレースでは、厳しくマークされるところがあるのかもしれない。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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