JRA-VANコラム
ダービーの結果を受けて菊花賞に思いを巡らす
2021年上半期のJRA・G1はすべて終わり、夏競馬のシーズンに入った。今回はシャフリヤールが勝利した今年の日本ダービーを振り返り、秋の菊花賞の行方に思いを巡らせた。日本ダービーに出走した馬のなかで、菊花賞でも楽しみなのはどんな馬なのか。また、これから活躍して菊花賞戦線に入ってきそうな馬を探すのも、夏競馬の醍醐味の一つだ。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は2011年から20年の日本ダービーに出走し、菊花賞で3着以内に好走した馬をまとめたもの。日本ダービーの着順・人気・単勝オッズ、そして菊花賞の着順・人気、さらに注目したい主な実績を記載した。該当したのは2020年にクラシック3冠を達成したコントレイルら17頭で、菊花賞の全好走馬(30頭)に占める割合は約56.7%という計算になった。この数字が妥当かどうかは何とも言えないところ。あまり高い数字ではない気はするが、低いというわけでもなさそう。この両レースを比較すると、距離が2400m→3000mと延び、施行時期は約5か月ひらく。レース性質の差は、皐月賞と日本ダービーの差より大きいかもしれない。ただ、そんな状況でも必ず毎年1頭は日本ダービー出走組から菊花賞好走馬が出ている。
この17頭の日本ダービーでの着順をチェックすると、3着以内だった馬は6頭、5着以内だった馬は10頭だった。日本ダービーで好走・善戦した馬に対しては、やはり一目置く必要がある。この中で菊花賞を優勝した馬は11年オルフェーヴル、12年ゴールドシップ、13年エピファネイア、16年サトノダイヤモンド、20年コントレイル。15年キタサンブラックを除くこの5頭は、日本ダービーで5着以内に入っていた。
一方、日本ダービーは6着以下ながら菊花賞で好走した馬は7頭いる。好走馬17頭に占める割合は約41.1%と、意外と多い印象だ。14年サウンズオブアースは11番人気で11着、17年クリンチャーは9番人気で13着と日本ダービーで大敗していたが菊花賞で好走を果たした。また、16年レインボーラインは12番人気で単勝155.4倍と、日本ダービーではかなりの人気薄だった。しかし、菊花賞は9番人気で2着と好走した。
こうした結果を見ると、日本ダービーで人気がなく、着順が良くなくても菊花賞ではあまり気にする必要がないことがわかる。たとえレース内容が乏しくみえても見限ってはいけない。特に芝2200m以上の重賞やオープン特別で好走実績がある馬は、むしろ菊花賞では注目馬になる。表1に記載した「注目したい主な実績」をみると、菊花賞トライアルのセントライト記念と神戸新聞杯だけでなく、春の京都新聞杯や青葉賞、すみれSの好走馬がとても多いことがわかる。また、皐月賞は2000mでも優勝馬は軽視してはいけない。これらの実績がなくて菊花賞で好走した馬は16年エアスピネルとレインボーラインだけだった。レインボーラインに関しては、前述したように日本ダービーでは単勝万馬券という存在だった。同馬は後に古馬となり阪神大賞典→天皇賞(春)と連勝したことを考えると、ステイヤーとしての資質が相当高かったからこそなせた芸当ではないだろうか。
以上の考察を元に、表2では今年の日本ダービーの全着順・人気・単勝オッズ・注目したい主な実績を記載した。日本ダービーはペースが遅くなったものの、道中での各馬の動きが意外と激しくなった。最後の直線では単勝1.7倍と圧倒的1番人気に支持されたエフフォーリアが抜け出したが、強烈な瞬発力を繰り出したシャフリヤールが際どく差し切ってみせた。こうしたレース内容も当然重要なポイントではあるが、ひとまず上位に入線した5頭は菊花賞でも勝つチャンスがある馬とみたい(サトノレイナスは牝馬なので、秋は菊花賞ではなく秋華賞路線に向かうのが普通だが)。
6着以下に敗れた馬のなかでは、ワンダフルタウン(青葉賞)とレッドジェネシス(京都新聞杯)、ディープモンスター(すみれS)を挙げたい。菊花賞の2・3着候補だ。あとは日本ダービーには出走しなかったが、強くて楽しみな上がり馬が出てくるかどうか。セントライト記念と神戸新聞杯の結果次第では勝機もあるだろう。今年の夏競馬はどんな3歳馬が台頭してくるかという点にも大いに注目だ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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