JRA-VANコラム
4歳馬の成績が抜群! 富士Sを占う!
今週は土曜日に東京競馬場で富士Sが行われる。3歳以上のマイル戦で、本競走1着の馬にはマイルチャンピオンシップへの優先出走権が与えられる。また、昨年(2020年)からG3→G2に昇格した。いつものように過去10年のデータを分析し、レースの傾向を探っていくことにする。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は過去10年の富士S年齢別成績。4歳が【5.4.2.12】で勝率21.7%、連対率39.1%、複勝率47.8%と抜群に成績がいい。出走頭数が3歳や5歳に比べて少ないのに、勝ち馬5頭、連対馬9頭が出ている。単勝・複勝の回収率も100%を超えている。昨年はヴァンドギャルドが5番人気で優勝した。
3歳と5歳の比較は、勝率・連対率は3歳が上で、複勝率は5歳が上。回収率は5歳の複勝率が101%と優秀。単勝は3~4歳馬が有力で、複勝圏内に入る可能性がありそうな穴馬は5歳馬も狙い目だ。
一方、不振なのは6歳以上の馬。好走したのは17年2着(4番人気)イスラボニータのみ。同馬は皐月賞を勝ち、天皇賞(秋)やマイルチャンピオンシップなど、古馬のG1でも度々好走していた。6歳以上はかなりの実力馬でないと、若い世代に割って入るのが難しいとみたほうが良さそうだ。
ここからは富士S好走馬を、年齢別に見ていくことにする。まずは富士Sに出走した3歳馬のなかで5番人気以内だった馬をまとめた(表2参照)。表1で示した全3歳馬の成績は【3.2.2.31】だが、5番人気以内に絞ると【3.2.1.10】で勝率18.8%、連対率31.3%、複勝率37.5%と、成績はかなりアップする。昨年はラウダシオンが3番人気で2着と好走した。同馬は前走NHKマイルCを勝っており、実績的には好走して当たり前と思われるかもしれないが、実はそうではない。
19年はアドマイヤマーズ(前走NHKマイルC1着)、16年はロードクエスト(3走前がNHKマイルC2着)がともに1番人気で9着と敗れているのだ。12年はクラレント(3走前はNHKマイルC3着)が5番人気で1着だが、NHKマイルC好走馬だからといって安易に飛びつくのは危険だ。そう考えると、古馬と初対戦だったラウダシオンが斤量56キロを背負って2着に入ったのは、十分評価に値する。
その他の好走馬を見ていくと、15年1着ダノンプラチナは朝日杯フューチュリティSの覇者。14年1着ステファノスの主な重賞成績は毎日杯3着。12年ファイナルフォームは前走ラジオNIKKEI賞で重賞初制覇。11年3着マイネルラクリマは2走前にラジオNIKKEI賞で2着に入った。さすがに重賞での好走実績は必要だが、マイル戦の経験はあまり重要ではなさそうだ。ただ、この4頭のうちマイネルラクリマを除く3頭は東京マイル重賞の勝ち馬が数多く出ているディープインパクト産駒だった。東京芝1600mの適性は、気にする必要があるかもしれない。
続いて表3は富士Sに出走した4歳馬の成績。4着以下だった馬も含め、出走全馬を記した。1着が5頭、2着が4頭、3着が2頭いて、好走馬の斤量は56~57キロが大半を占めた。11年2着アプリコットフィズは牝馬で54キロなので、牡馬換算だと56キロ、19年1着ノームコアは牝馬で56キロなので、牡馬換算だと58キロだ。よって、ノームコアだけが例外といえる。同馬は前走ヴィクトリアマイルを勝っており、実績的には目立つ存在だった。例えば、同じ年に芝1400~2000mの重賞で3着以内(※1)、または過去に東京芝1400~2000mの重賞で3着以内(※2)の実績があるか、という点に注目した場合、ノームコアは両方の実績があったことになる。表3の他の馬たちもこの点をチェックし、該当した場合は表組に印(〇)を記載してみた。
すると両方の実績に該当していた馬が良く走っていることがわかった。前述のノームコア以外では、20年1着ヴァンドギャルドや、19年2着レイエンダ、17年1着エアスピネル、15年2着サトノアラジンなどがいる。13年サンレイレーザーは2番人気で14着と惨敗したが、この手のタイプは高い確率で好走が期待できそうだ。
少なくとも※1か※2いずれかの実績が欲しいところで、特に※2は重要だ。どちらの実績も持たずに好走したのは14年3着レッドアリオンだけだった。
続いて富士Sで好走した5歳馬を見ていく。こちらも表3でチェックした実績があったかどうかに注目してみた。1着2頭、2着3頭、3着6頭の計11頭のうち、※1と※2両方の実績を持っていたのは、19年3着レッドオルガ、18年3着レッドアヴァンセ、13年1着ダノンシャーク、12年3着ヒットジャポットの4頭だった。5歳でも有力馬になりうる条件として、真っ先に注目していいだろう。
※1と※2の実績の比較では、※1だけでも侮れない。というのも18年1着ロジクライ、同年2着ワントゥワン、15年3着ロゴタイプと3頭も好走馬がいた。18年の連対馬に関しては、同じ年に1600万(現3勝)クラスの東京芝1400~1600mを勝っていたという共通項があった。そこで、過去に3勝(1600万)クラス以上の東京芝1400~1600mで1着という実績(備考欄に記載)に注目したところ、他にも該当馬はいた。18年3着レッドアヴァンセや、12年3着ヒットジャポットも勝っていた。また、20年3着ケイアイノーテックは18年にNHKマイルCを勝ち、13年2着リアルインパクトは11年の安田記念を勝っていた。東京のマイルG1馬は、仮に人気が下がっていても、軽視しない方が良さそうだ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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