JRA-VANコラム
新馬戦で1秒差以上の圧勝を飾った馬の次走を分析する
先週土曜に行なわれた東京スポーツ杯2歳Sは、クラシックの登竜門として知られるレース。今年からG2に昇格し、さらに重要度を高めそうな一戦を制したのはイクイノックスだった。前走の新馬戦で2着馬に1秒0差をつけて勝ち上がった同馬は、東スポ杯では1番人気に推されることになったが、その支持にしっかりと応えてみせた。そこで今回は「新馬戦を1秒0以上のタイム差で勝ち上がった馬の次走」について調べてみたい。集計対象は、2015年1月4日~2021年11月13日の新馬戦を1秒0差以上で勝った馬の次走(2021年11月21日まで)。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は、新馬戦を1秒0以上差で勝ち上がった馬の次走の全体成績と、年齢別・牡牝別の成績を示したものだ。
まず、全体成績は【25.9.8.27】、勝率36.2%、複勝率60.9%、単勝回収率91%、複勝回収率93%。ただ、優秀そうな数値ではあるが、これだけでは判断がつきかねるところもある。そこで比較材料として、同期間のすべての新馬戦1着馬の次走成績を記すと、【259.217.173.1231】、勝率13.8%、複勝率34.5%、単勝回収率72%、複勝回収率71%。これを標準とみなして比べると、1秒0差以上で勝った馬の好走率はかなり高いことがわかる。加えて、単複の回収率も90%台と水準を上回っており、基本的には優秀な成績を収めていると考えていいだろう。
年齢別成績では、2歳と3歳でそこまで大きな差は見られない。ただし、単勝回収率のみ、2歳の116%に対して3歳では62%と差がついている。3歳新馬戦を1秒0差以上で勝った馬の次走では、単勝が人気を集めやすい傾向があるようだ。
牡牝別成績では牡馬の成績が優秀。一方の牝馬は、勝率では牡馬と差がないものの、2、3着が少ない傾向が見られる。単複の回収率が50%前後にとどまることを考えても、新馬戦を圧勝した牝馬の次走に関しては慎重な判断が求められそうだ。
表2はクラス別成績。次走でオープンクラスに出走する馬は2割強とそれほど多くはなく、8割近い馬は1勝クラスを選択し、確実に結果を出していることがわかる。とはいえ、オープンクラス(オープン特別、リステッド競走、重賞の合算)に出走した馬も【5.3.1.7】、勝率31.3%、複勝率56.3%、単勝回収率56%、複勝回収率106%という成績。このケースでは単勝が売れやすい傾向はあるものの、十分に通用していると言えるだろう。
表3は、ジョッキーが継続騎乗した馬、乗り替わりとなった馬の成績を比較したもの。5項目すべてで継続騎乗の数値が上回っており、これは妥当な傾向と言えるだろうか。とはいえ、乗り替わりとなっても好走率そのものは高いため、軽視できるわけではない。
表4は馬場に関するデータで、4つのパターンに分けている。ただし「新馬戦:芝→次走:ダート」に当てはまる馬は1頭もいなかったため、実際には「新馬戦、次走ともに芝」「新馬戦、次走ともにダート」「新馬戦:ダート→次走:芝」の3パターンとなる。
基本的には新馬戦と同じ馬場を走る馬が多く、「新馬戦、次走ともに芝」「新馬戦、次走ともにダート」の好走率はどちらも非常に高い。しかし、「新馬戦:ダート→次走:芝」の場合は6戦で2着1回のみ。新馬戦を圧勝した馬であっても、異なる馬場で前走同様の走りを見せるのはなかなか難しいようだ。
表5は距離に関するデータで、前走の新馬戦と比べて「今回短縮」「同距離」「今回延長」で出走した馬の成績をそれぞれ示したもの。いずれも興味深い傾向を示しているので、上から順に見ていきたい。「今回短縮」は勝率が60.0%ともっとも高い。反面、2、3着に入った馬はおらず、1着以外はすべて4着以下という極端な傾向がある。出走例がもっとも多いのが「同距離」で、複勝率はこれがベスト。圧勝した前走の新馬戦と同じ距離で、安定して力を発揮しやすい条件と言えそうだ。一方「今回延長」は、「同距離」や「今回短縮」に比べて好走率が落ちる。とはいえ、回収率は高く、仮に人気が落ちていても侮らないほうがいいだろう。
表6は人気別成績。該当馬の6割近くは1番人気に推されており、その好走率は非常に高い。しかし、2番人気の成績はよくなく、3番人気ももうひと息。むしろ4、5番人気のほうが好走率は高いぐらいだ。新馬戦の圧勝を受けて1番人気に推された馬の信頼性は高いが、2、3番人気にとどまった場合は少し気をつけたいところだ。
表7は前走人気別成績。つまり、圧勝した新馬戦における人気別成績を表している。該当馬の約半数は新馬戦の段階で1番人気に推されており、その評判通りの圧勝を飾ったことになる。ただ、前走2~5番人気でも好走率は変わらないか、むしろ高いぐらい。回収率では有利な傾向が見られるため、意外な狙い目となるかもしれない。しかし、前走6番人気以下では好走率が明らかに落ちる。このケースに関しては、新馬戦のレース内容を改めて確認してもいいかもしれない。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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