JRA-VANコラム
平地競走最長距離決戦・ステイヤーズSを分析する
冬競馬といえばダート戦。今週は中京競馬場でダート1800mのG1・チャンピオンズCが行われるが、同時に冬~春前半は長距離戦のシーズンでもある。JRAで行われている3000m以上の競走のうち、G1の天皇賞(春)、菊花賞以外のレースは12月(11月末)から3月に集中しているのだ(本年は10月末に古都Sも行われた)。今回は、そんな長距離戦シーズンの開幕戦となるステイヤーズSを分析する。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、集計期間は過去10年とした。
過去10年、1番人気は【5.1.2.2】複勝率80.0%で、単複の回収率も100%を突破。2013年以降は8年連続で馬券に絡んでいるため、今年も1番人気の軽視は禁物だ。ただ、近2年はその1番人気が馬券に絡んでいながら、3連単は25万、12万馬券の波乱になった。ほかに2011~12年も荒れている一方、2016~18年のような極めて平穏な決着もあり、年によって波乱度に大きな差が出ていることには注意したい。
年齢別で好走馬が多いのは4~6歳。中でも4歳は【2.2.3.14】で複勝率33.3%と優秀だ。同じく複勝率33.3%を記録する3歳は3頭の出走で2着1回のみ。2009~10年にはフォゲッタブル、コスモヘレノスが連覇するなど以前は3歳の好走馬も多かったが、ここ10年は出走する馬自体がほとんど見られない。逆に8歳以上が複勝率25.0%を記録するなど経験豊富なベテラン馬が力を発揮している。
前走クラス別で特に際立った好走確率を残すものはないが、好走数はG2組が【7.3.7.51】で断トツ。アルゼンチン共和国杯組【6.0.5.36】複勝率23.4%と、京都大賞典組【1.3.1.8】同38.5%がその中心だ。また前走が条件戦だった馬も3着以内に計8頭と、このG2の舞台で通用している。
レース別で出走数・好走数とも最多になるアルゼンチン共和国杯組の3着以内好走馬は表5の11頭だ。掲示板外から巻き返した馬も多いが、同レース4着以内だった馬は【2.0.2.2】で複勝率66.7%となるため、この組はまず前走4着以内馬がいれば注目したい。また、2016年2着のモンドインテロ以外の10頭には、3000m以上の重賞で5着以内に入った経験があった。このうち7頭は3000m以上での連対実績馬で、残る3頭も経験こそ少ないが掲示板を外していなかったことでは共通している。
前走京都大賞典組の好走馬はそこで7着以下に敗退していた馬ばかりだが、そもそも同レース5着以内からの直行馬は1頭しかいない(昨年2番人気9着シルヴァンシャー、前走4着)。この組は本競走4番人気以内なら【1.3.1.2】複勝率71.4%で、京都大賞典組以外の【6.4.6.17】同48.5%を大きく上回る。また、アルゼンチン共和国杯組以上に長距離実績のある馬ばかりで、好走した5頭すべてが3000m以上の重賞で3着以内に入った経験があった。
最後に表7は、アルゼンチン共和国杯・京都大賞典以外からの好走馬である。前記2レースとの大きな違いは6歳以上の馬が少ないことと、そのせいもあってか3000m以上のレースに出走経験を持たない馬も多く好走していることだ。たとえば後に本競走連覇を飾るデスペラードの2012年(3着)は3000m級初出走。2015年~17年に3連覇を飾ったアルバートも、1回目の2015年は3000m以上未経験だった。
この組は距離実績よりも、前走の人気・着順を重視したい。好走した14頭中13頭が前走では5番人気以内の支持を受けており、そのうち11頭は5着以内に入っていた。この「前走5番人気以内かつ5着以内」を満たす馬は【2.5.4.13】複勝率45.8%を記録し、複勝回収率も149%と高い。
以上、JRAの平地競走としては最長距離となるステイヤーズSの傾向を分析してみた。前走でアルゼンチン共和国杯や京都大賞典に出走していた馬は3000m以上の長距離実績が重要で、その他の組は距離実績不問という大きな違いがある。全体としてはアルゼンチン共和国杯・京都大賞典組の好走が多いものの、ここ3年は別路線組が2頭ずつ馬券に絡んでいるため(表7)、どちらか一方だけに偏らないような馬券の組み立てを考えたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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