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JRA-VANコラム

スーパーG2とも呼ばれる注目の一戦! 阪神Cを分析する

2021年12月20日 16:00配信
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2021/10/30 阪神11R スワンステークス(G2) 1着 9番 ダノンファンタジー

今回取り上げるのは、有馬記念の前日に行なわれる阪神C。スプリンターにもマイラーにも出走しやすい1400mで、時期的にも好メンバーが揃いやすく、例年レベルの高い熱戦が繰り広げられるG2戦。グランアレグリアが圧勝し、翌年の大活躍につなげた2年前のレースも記憶に新しい。来年をにらむ意味でも楽しみな一戦を、過去10年のデータから占っていこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

表1は人気別成績。1番人気は不振傾向で、過去10年で勝ったのは19年のグランアレグリアしかいない。2番人気も1勝にとどまっている。本命・対抗級の信頼性がそれほど高いとは言えず、計3勝の7、8番人気あたりまでは好走圏内とみなしていいのではないか。また、10番人気以下からも延べ6頭が好走しているが、単勝オッズが50倍以上の馬は【0.0.1.57】(9番人気1頭を含む)という結果で、40倍台には収まっておきたい。

■表2 枠番別成績

表2は枠番別成績。複勝率ベースで見ると全体的に大きな差はなく、極端な有利不利はないように見受けられる。一方、回収値ベースで見ると、100%以上の数値は1枠から4枠に集中。人気薄を狙うのであれば内枠とは言えるのではないか。

■表3 年齢別成績

表3は年齢別成績。5歳の好走が10頭と最多で、単複の回収率も良好。ただ、3歳や4歳の好走率も大差はなく、5歳が有利とまでは言いづらい。また、6歳も3勝を挙げ、勝率では3~5歳より高い数値を記録。安定感には欠けるものの、軽視はしないほうがよさそうだ。7歳以上は2、3着が1回ずつあるだけで、好走率を落とす。なお、7歳以上の好走2回はいずれも7歳によるものである。

■表4 東西別・牡牝別成績

表4は、所属の東西別と牡牝別(セン馬は牡馬に含む)の成績を表したもの。まず東西別から見ていくと、関東馬の7勝に対して関西馬は3勝にとどまり、好走率、回収率でも関東馬が大きく上回る数値を残している。関西の重賞でありながら関東馬が優勢というのは阪神Cの特徴のひとつだ。

牡牝別では牡馬7勝、牝馬3勝。ただし、そもそもの出走数に差があり、好走率自体は互角の範囲にある。また、3勝を含む牝馬の1~3着5回はすべて過去3年に集中しており、近年になって牝馬の好走が増えていることも併せて記しておきたい。

■表5 前走距離別成績

表5は前走距離別成績。なお、19年のメイショウショウブは前走予定の秋華賞が出走取消となったため、実際に出走したローズSを前走として扱っている。

この表を見ると、前走が芝1200mや芝1400mだった馬より、芝1600mや芝1800mだった馬の好走率が高いことがわかる。また、前走芝2000mも2頭中1頭が2着に入っており、距離短縮で出走する馬がいれば注目する価値がありそうだ。なお、前走がダートだった馬では、14年にコパノリチャードが2着に好走している。

■表6 前走4角通過順別成績

表6は4角通過順別成績で、上半分が今走、下半分が前走のものを表している。「今走」から見ていくと、基本的に阪神Cでは4コーナーを前の番手で通過した馬の好走率が高い傾向にある。複勝率ベースで20%以上なのは4角5~6番手までで、7~9番手も19.4%と僅差。しかし、4角10~12番手や13番手以降は特に勝率、連対率の落ち込みが激しい。最低でも4コーナーを9番手までで回って直線を向きたいところだ。

次に「前走」の4角通過順だが、前走4角1番手の成績が思った以上に悪い。対して前走4角2番手の成績は非常によく、これは狙い目になりそうだ。以下、前走4角10~12番手まで好走率の極端な差はないが、13番手以降だった馬の数値は落ちるようだ。

■表7 芝1400m実績別成績

表7は、芝1400mの実績に応じた成績を表したもので、2種類のデータを掲載している。上の3つは、クラスや競馬場を問わず「芝1400mで1着あり」「芝1400mの出走はあるが1着なし」「未出走」の成績。下のふたつは重賞に限ったデータで、「阪神芝1400m重賞1着あり」「阪神以外の芝1400m重賞1着あり」の成績をそれぞれ表している。

まず、クラスや競馬場を問わない芝1400m実績だが、未出走の6頭を除く好走馬24頭中23頭は芝1400m1着の実績を持っていた。例外は17年1着のイスラボニータだけで、同馬は前年の阪神Cで2着に入っている。このデータを見る限り、未出走でない限りは芝1400m1着の実績はほぼ必須と言っていいだろう。

次に重賞実績。阪神芝1400m重賞で1着の実績を持つ馬は4勝、勝率21.1%、単勝回収率370%とさすがの成績を残している。とはいえ、阪神以外の芝1400m重賞1着がある馬も複勝率では互角。ただし、勝ったのは1頭だけで、好走しても2、3着までということが多い。

なお、芝1400m未出走(=阪神Cが芝1400m初出走)だった馬の好走例は前述の通り6頭あり、複勝率40.0%を記録。思った以上に好走しており、これは注意したほうがよさそうだ。

【結論】

今年の阪神Cの登録馬は22頭。このうち必須と言える芝1400m1着の実績を持つ馬は16頭いる。さすがに多いので、その中から阪神芝1400m重賞の実績を持つ馬を見ていくと、昨年の勝ち馬ダノンファンタジーは阪神芝1400mで行なわれた今年のスワンSでも1着。コース適性は高く、連覇の可能性は十分にありそうだ。

阪神芝1400m重賞1着の実績を持つ馬にはもう1頭、20年阪急杯を勝ったベストアクターもいる。過去10年で1着がない7歳で、初ダートの前走は16着に終わっているが、コース適性を活かして巻き返したい。そのほか、阪神以外の芝1400m重賞1着があるのはサウンドキアラ、タイセイビジョン、ラウダシオン、ルークズネストと4頭おり、これらも好走候補となる。

阪神Cで強い関東馬のうち、芝1400m1着があるのは、前述のベストアクターのほか、ソングラインとセイウンコウセイがいる。前者は牝馬で、牝馬は阪神C3連覇中。前走芝1600mという臨戦も悪くない。後者は8歳の年齢がどうかだが、G1馬の底力を見せたい。もうひとつの好走率が高いパターンである前走4角通過順2番手にはヴィジュネルが該当。賞金ボーダーをクリアできるかが微妙な状況にあるが、出走が叶えば注目してみたい。

表7の通り、芝1400mに出走歴がありながら1着がない馬には厳しいデータがあり、今年は5頭が該当。ただし、そのうちの1頭であるホウオウアマゾンは阪神芝1400mで行なわれた今年のスワンSで3着。阪神Cと同コース、同じG2で好走例があるとなれば、軽視はしないほうがよさそうだ。

最後に、阪神Cで意外な良績を残す芝1400m未出走馬にはファストフォースがいる。苦戦傾向の前走4角通過1番手というのは気になるが、過去10年の阪神Cで逃げ切った馬自体は2頭おり、ハナを取りきることができれば粘り込みがあるかもしれない。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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