JRA-VANコラム
3歳の気鋭とグランプリ女王が激突! 有馬記念を展望する
今年の有馬記念でファン投票1位に選ばれたエフフォーリアは、前走の天皇賞・秋でコントレイル、グランアレグリアという超強豪2頭を撃破。続くファン投票2位には前年の覇者にして前人未到のグランプリ4連覇に挑むクロノジェネシス、3位には菊花賞馬タイトルホルダーが続いた。20万を超える票を集めたこの3頭から勝ち馬が出るのか、それとも割って入る第4の馬が現れるのか。年末の大一番を過去10年のデータから展望したい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。1番人気が6勝と強さを見せ、2番人気が複勝率50.0%、3、4番人気も複勝率40.0%とコンスタントに好走している。この1~4番人気までで過去10年の1~3着馬30頭中21頭を占め、上位人気馬がしっかり馬券圏内を確保している様子が見て取れる。5~7番人気の好走は2着2回だけと少なく、むしろ8~9番人気のほうが1勝を含む1~3着5回と走っている。ふたケタ人気では10番人気と11番人気から2着が1回ずつあるだけで、大きな激走はあまりなかった。
表2は枠番別成績。明らかなのは8枠の苦戦で、好走したのは18年3着のシュヴァルグランしかいない。また、1、2枠は複勝率がいずれも20%を切っており、意外にも内枠も有利とまでは言えない。安定しているのは3枠から6枠にかけて。また、7枠も3着が多めではあるが、複勝率は5枠に次ぐ数値で決して悪い成績ではない。
表3は、牡牝別(セン馬は牡馬に含む)と年齢別の成績を表したもの。まず牡牝別では、牝馬のほうが勝率・連対率は高い。19年リスグラシュー、20年クロノジェネシスと連覇中で、20年は2着にもサラキアが入って牝馬ワンツーと近年の勢いもある。年齢別では3歳と5歳が4勝ずつ、2勝の4歳をリード。特に3歳は好走率も高く、古馬に対して2キロ軽い斤量面の恩恵を感じさせる結果ともなっている。一方、6歳以上は18年3着のシュヴァルグラン(6歳)が唯一の好走で、苦しい戦いを強いられている。
表4は、前走の人気別と着順別の成績を表したもの。なお、前走人気は中央戦のみが対象で、前走海外戦(有馬記念の成績は【2.0.1.5】)は集計外となっている。前走人気別から見ていくと、前走1番人気が7勝を挙げている点が目を引く。あとは前走2番人気が1勝で、海外戦を除いて前走3番人気以下が勝った例はない。また、前走10番人気以下が3着以内に入った例はなく、最低でも前走9番人気までには収まっておきたい。
前走着順別では、前走4着と前走5着の間に溝が横たわっており、ここを境に好走率が大きく変わる。勝ち馬10頭がすべて出ていることを考えても、なるべく前走1~4着には入っておきたいところだ。
前項で確認した通り、前走では1~4着に入っておきたいところだが、5着以下だった馬も延べ8頭が好走している。単純計算ではあるが1年に1頭近くはここから好走馬が出ていることになり、どんな馬なら巻き返せるのかを確認しておく必要はある。
それをまとめたのが表5。該当馬の戦績をチェックしたところ、8頭中7頭はG1連対の実績を持っていた。11年3着のトゥザグローリーだけはG1の最高着順が3着だったが、それが前年の有馬記念。つまり、G1連対かすでに有馬記念で好走した実績を持つ馬であれば、前走5着以下からの巻き返しも可能とみたい。
表6は前走レース別成績。4勝を挙げている前走菊花賞は好走率も抜群で、なかでも1着だった馬は【3.0.2.0】と抜群の相性を示している。前走ジャパンCは出走例、好走例ともに最多ではあるが、好走率自体は特筆すべきものではない。また、過去3年は連対なし、過去2年は3着もなしと、特に近年になって結果が出なくなっているのは気がかりだ。同じ東京の古馬混合G1でいえば、天皇賞・秋から直行した馬のほうが高い好走率を記録している。そのほか、前走凱旋門賞だったオルフェーヴルが13年に1着、前走コックスプレートのリスグラシューが19年に1着と、前走海外G1出走馬も計2勝。この2頭はいずれも5歳で、引退レースだったことも共通している。なお、海外戦を含め、好走例のある前走はG1かG2に限られ、G3やオープン特別、条件戦などから出走した馬は【0.0.0.10】となっている。
表7は同年の勝利数別成績。単純にたくさん勝っている馬ほど成績がいいかといえばそうではなく、もっとも好走率が高いのは「同年3勝」だ。「同年4勝以上」ということは、それ相応にレースを多く走っているということでもあり、有馬記念で重要とされる消耗度に影響があるのかもしれない。なお、同年4勝以上で好走した3頭は11年のオルフェーヴル、12年のゴールドシップ、15年のキタサンブラックという内訳で、いずれも3歳時のことだった。好走率が高い「同年3勝」は回収率もよく、勝ち馬も4頭が出ている。また、「同年2勝」も1~3着10回と好走例が多く、複勝率や複勝回収率も悪くない。「同年1勝」や「同年0勝」の好走例も少なくはないが、好走率、回収率はだいぶ下がってしまう。
今年の有馬記念登録馬17頭について、ここまで述べてきた好走条件に合致しているかどうかを表8にまとめた。グレーの色をつけた項目は、好走率が低い(もしくは好走がない)「7歳以上」「前走G1・G2以外」「前走10番人気以下」「前走5着以下」に該当することを表している。これをもとに、今回のデータ分析から導かれる有力馬を紹介していきたい。
近10年の有馬記念では3歳馬が好成績を収めている。皐月賞馬のエフフォーリアは、すでに天皇賞・秋で古馬の一線級を撃破。有馬記念で好成績の同年3勝馬でもあり、3つめのG1制覇を飾って年度代表馬の座に近づきたいところだろう。
有馬記念で好結果を出している前走菊花賞組は3頭がエントリー。もちろん最大の注目馬は5馬身差で逃げ切ったタイトルホルダーだ。菊花賞が4番人気の支持にとどまり、有馬記念で1着馬が出ていない前走3番人気以下に含まれるものの、【3.0.2.0】の前走菊花賞1着馬を軽視することはできない。また、菊花賞で2番人気4着のステラヴェローチェも大きな瑕疵はなく、好走の可能性は秘めている。
一方、古馬に全項目をクリアする馬は見当たらず。ただし、前走海外戦のクロノジェネシスとディープボンドは別枠で考えるべきとも言えるし、両馬ともにG1連対歴を持つため前走5着以下からの巻き返し条件を満たす。また、前年の覇者であるクロノジェネシスはもちろん有馬記念好走歴を有しており、グランプリ4連覇とともに有終の美を飾っても誰も驚きはしない。
古馬ではもう1頭、エリザベス女王杯1着から臨むアカイイトにも触れておきたい。その前走が10番人気である点はマイナス材料と言わざるをえないが、今年の登録馬では数少ない同年3勝馬。近年の有馬記念で勢いのある牝馬であることを考えても、侮ってはいけないだろう。
前走ジャパンCからは5頭が登録。ただし、この5頭で最先着したシャドウディーヴァでも
7着で、今年の勝利数も多くて1勝にとどまる。巻き返しがあるとすれば、G1連対歴を持ち、年齢も4、5歳のアリストテレス、モズベッロということになるが、3年ぶりのJC組の好走はあるだろうか。
あとは表2の項で述べた通り、枠順も重要なファクターとなる。本日(12月23日)17時から行なわれる公開抽選会などを確認して、予想に役立てたいところだ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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