JRA-VANコラム
参考レースの勝ちタイムと皐月賞との関連性は?
今週は日曜日に中山競馬場で皐月賞が行われる。今年も実績馬・素質豊かな馬が揃い、どんなレースになるのか今から非常に楽しみだ。レースを展望するにあたって、一つ大きな注目ポイントをあげておきたい。それは勝ちタイムが非常に速くなる可能性が高いこと。先週日曜日のメインレース・春雷S(芝1200m)の勝ち時計が1分06秒8と、コースレコードと0.1秒差だったからだ。今週も良馬場であれば、かなり速い時計が出るだろう。2017年に皐月賞でアルアインがマークしたレースレコード(コースレコードタイ)1分57秒8(良)に迫るタイムが出ても不思議はない。
そこで今回は参考レースの勝ちタイムに注目し、皐月賞との関連性を探ってみることにした。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
まずは皐月賞と同じ中山芝2000mで行われるトライアル・弥生賞ディープインパクト記念をみていく。表1は過去10年の同レース勝ち馬と勝ちタイム。最も速いタイムで弥生賞を勝ったのは、2016年に1分59秒9(良)をマークしたマカヒキだった。同馬は次走皐月賞で2着と好走し、続く日本ダービーで優勝を飾った。
競馬は単純にタイムが速ければ良い(強い)というわけではないが、弥生賞ディープインパクト記念においては重要かもしれない。良馬場以外で行われた12年、15年、19年、20年の勝ち馬の中で、皐月賞で好走した馬はいなかった。12年や20年は皐月賞が稍重で行われ、実際にレースの時計は少しかかったのだが、弥生賞ディープインパクト記念の勝ち馬はいい結果を出せなかった。一方、良馬場で勝ったトゥザワールド(14年)、タイトルホルダー(21年)は皐月賞で2着と好走。皐月賞がどんな馬場状態になろうとも、弥生賞ディープインパクト記念は良馬場で勝った馬を評価するべきという傾向だ。よって、今年2分00秒5(良)で制したアスクビクターモアも、本番で楽しみがあると考えられる。
表2は過去10年のスプリングSの勝ちタイム。この中で最も速かったのは、1分47秒8(良)で勝利した13年のロゴタイプと19年のエメラルファイトだった。ロゴタイプは2勝目を挙げたベゴニア賞(東京芝1600m)を当時の2歳コースレコードで制し、続く朝日杯フューチュリティSを優勝。皐月賞では当時のコースレコードとなる、1分58秒0(良)で勝利と、速いタイムが出るレースに適性があった。
その他では15年キタサンブラック、20年ガロアクリークが皐月賞で3着と好走。18年はスプリングS1着のステルヴィオではなく、2着エポカドーロが皐月賞で優勝した。スプリングSも良馬場で行われた時の方が、本番につながりやすい印象だ。
今年のスプリングSはビーアストニッシドが逃げ切り勝ちを果たしたが、あいにく稍重馬場でのレースだった。ただ、勝ち時計は1分48秒4と、良馬場並みのタイムが出た。単純に軽視していいものか、判断が難しい。
表3は過去10年の若葉Sの勝ちタイム。この中で皐月賞でも好走したのは、12年ワールドエースと19年ヴェロックス。前者は若葉Sを2分04秒4、後者は2分02秒1と稍重のレースを勝っていた。弥生賞ディープインパクト記念とは違い、良馬場で速い時計をマークしていた馬ではなく、若葉Sは少し馬場が渋り時計がかかったレースを勝っていた馬が、本番で結果を出している傾向だ。今年の若葉Sも稍重となり、デシエルトが2分00秒2のタイムで逃げ切った。実際には若葉Sよりも時計を短縮できるかが課題になりそうだが、注目するべきかもしれない。
表4は過去10年の共同通信杯の勝ちタイム。12年ゴールドシップ、14年イスラボニータ、15年リアルスティール、16年ディーマジェスティ、19年ダノンキングリー、そして昨年のエフフォーリアと勝ち馬6頭が皐月賞でも好走を果たしている。昔から「クラシックへの登竜門」と言われていたレースだが、近年はトライアル以上に本番との結びつきが強くなっている。
勝ちタイムを比較すると、1分46秒0(良)の速いタイムで勝ったメイケイペガスター(13年)が本番では結果を出せなかった一方で、稍重のなか1分47秒4で勝ったディーマジェスティが皐月賞を制した。よって勝ちタイムはあまり気にする必要がないレースかもしれない。今年はダノンベルーガが、稍重のなか1分47秒9で勝利。果たして同馬は皐月賞でどんなパフォーマンスをみせるだろうか。
表5はG1に昇格した2017年以降のホープフルSの勝ちタイム。他のレースに比べるとサンプル数は少ないが、すでに皐月賞と強い関連性があることがうかがえる。18年サートゥルナーリア、19年コントレイルが休み明けで、次走皐月賞を勝利した。今年はキラーアビリティが、同じローテーションで皐月賞に挑む。ホープフルSの勝ちタイムは、キラーアビリティがマークした2分00秒6が、18年以降では最速となっている。もっと速い時計の決着になっても対応できる可能性が高そうだ。
最後に東スポ杯2歳Sの勝ちタイム(表6参照)を見ていこう。こちらもトライアルやG1ではないが、クラシックにつながる重要な一戦になっている。そして勝ちタイムが速いかどうかが、大きなポイント。このレースを当時の2歳コースレコードで制した12年コディーノと13年イスラボニータ、そして19年に1分44秒5(現在の2歳コースレコード)で制したコントレイルが、皐月賞でも好走を果たしている。今年はイクイノックスが勝利し、勝ち方も強いと評価を受けた。しかし、勝ちタイムは1分46秒2(良)と、レコードタイムとは差があった。この点だけみると、好走できるかは微妙。東スポ杯2歳Sを勝った後、一度もレースを使っていないので、速い時計の決着に対応できるかどうか、他の馬よりも推測しづらい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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