JRA-VANコラム
上半期を締めくくる宝塚記念を分析する
上半期のG1戦線を締めくくる宝塚記念。シンザンやディープインパクト、オルフェーヴルというクラシック三冠馬をはじめとする多くの名馬が人気に応えて優勝してきた一方で、メジロパーマー(9番人気)、スイープトウショウ(11番人気)など波乱を演出した馬も少なくない一戦だ。今年はどんな結果が待っているのか、過去の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
過去10年の人気別では1番人気が【3.2.1.4】で複勝率60.0%、2番人気が【2.1.2.5】で同50.0%。1、2番人気は3(4)歳以上のG1としては平均的な成績だ。しかし3~5番人気は【2.2.1.25】同16.7%の不振。その分6~8番人気が【3.2.3.22】同26.7%と多く好走し、単複の回収率も174%、108%を記録している。加えて9番人気以下からも6頭が馬券に絡んでいるように、穴馬も無視できないレースだ。
なお、3連単の配当は過去10年のうち4回が18万円以上。2015年6→10→11番人気52万馬券、2018年7→10→12番人気49万馬券と人気馬総崩れの年もある。その他は1万円以上3万円未満が5回、7万円台が1回となっている。
年齢別では5歳が【7.5.4.36】、4歳が【3.1.6.29】で優勝馬は10頭すべて4~5歳馬。特に5歳は2020年以外の9回で連対を確保している。6歳以上は【0.4.0.46】と劣勢だ。また性別では牡・セン馬【6.9.5.98】複勝率16.9%に対し、牝馬は【4.1.5.14】同41.7%。ここ3年はリスグラシュー、クロノジェネシス(2回)と牝馬が3連勝を飾っている。
枠番別の成績では、8枠が【7.0.2.13】複勝率40.9%と抜群の好成績をマーク。一方で1~2枠も【1.3.5.21】同30.0%と複勝率は高い。8枠の成績が良いからといって、内枠が不利だと勘違いしないよう注意したい。京都競馬場改修の影響で今年は阪神開催4日目(例年は8日目)に行われるが、本年と同じく開催4日目だった昨年は5→1→2枠(7→1→2番)と内の馬が2頭馬券に絡んでいた。
前走のクラス別では中央G1組の好走が多いが、好走確率はまずまずといった程度。該当馬の半数以上を占める天皇賞(春)組が複勝率23.1%なのに対し、同レース以外で好走馬を出している大阪杯(G1)とヴィクトリアMの合計では【2.1.4.15】同31.8%になる。
その大阪杯+ヴィクトリアMをさらに上回る複勝率を記録しているのが前走海外組。日本調教馬ではドバイシーマクラシックとクイーンエリザベス2世Cから好走馬が出ており、この2レースの合計は【2.2.2.10】複勝率37.5%だ。
表5は前走天皇賞(春)組の好走馬9頭である。この組は同レース1~3着馬がなんと【0.0.1.14】に終わっており、天皇賞(春)で馬券圏外に敗退した馬が巻き返すケースが圧倒的に多い。典型例はゴールドシップで、天皇賞(春)で5、7着に敗退した2013年と14年は宝塚記念を連覇。15年は3度目の挑戦でついに天皇賞(春)を制したが、この宝塚記念では大きな出遅れを喫し15着に敗れている。
また、この組の芝2200~2400mにおける重賞成績を調べると、好走馬9頭中7頭にG2以上で優勝した実績があった。残る2頭、2015年のデニムアンドルビーと20年のキセキはジャパンCで2着。天皇賞(春)の芝3200mから大幅な距離短縮となるため、この芝2200~2400mでG1連対かG2優勝くらいの実績は欲しい。
天皇賞(春)以外の国内G1からの好走馬は7頭で、前述の通り大阪杯とヴィクトリアMから出ている。こちらは前走連対馬4頭、6~8着馬が3頭と、前走着順はあまり気にしなくて良さそうだ。また、この7頭はすべてG1馬で、うち5頭は芝2000~2400mのG1を制した実績があった。これに該当しないヴィルシーナはオークス、秋華賞、エリザベス女王杯と芝2000~2400mのG1で2着3回。キセキはジャパンCと大阪杯で2着に入っていた。
前走海外組(日本調教馬)は表7の6頭が好走しており、いずれも芝2000~2400mのG1優勝実績馬。前走はドバイシーマクラシック(芝2410m)かクイーンエリザベス2世C(芝2000m)で3着以内に入っていた。
最後に表8は前走国内G2、G3からの好走馬7頭で、すべて前走は鳴尾記念か目黒記念で4着以内。また5頭は芝2000~2200mのG2以上優勝経験があり、残る2頭は前走の重賞初連対を宝塚記念好走につなげた形だった。なお、表4にあったように鳴尾記念組は連対率や複勝率で天皇賞(春)組を上回っているため、G3だからというだけで軽視しないようにしたい。
【結論】
今年の宝塚記念は、天皇賞(春)組(表5)や海外組(表7)に好走条件をすんなりクリアする馬が見当たらないため、天皇賞(春)以外の国内G1組(表6)が中心になる。
該当馬のうちG1優勝実績を持つのはエフフォーリア、デアリングタクト、ポタジェの3頭。中では5歳牝馬(表2)のデアリングタクトに目がいくが、前走ヴィクトリアM組は複勝率こそ高くても連対馬が出ていない点は気がかりだ(表4、6)。大阪杯組のポタジェは好成績の5歳馬(表2)である一方、人気面で3~5番人気になってしまうとやや狙いづらい(表1)。そして減点材料はないが強調できるほどでもないのが、大阪杯組の4歳で1~2番人気が予想されるエフフォーリア。3頭甲乙つけがたい印象で、最終的な判断は枠(表3)や当日の人気も踏まえて下したい。3連単の組み合わせで1~2万円台か18万円以上(表1本文)になるところに組み入れる、という手もあるだろう。
穴で注目したいのは前走・鳴尾記念で4着のギベオンだ。10番人気だった昨年の金鯱賞でデアリングタクト(2着)やポタジェ(3着)を下して優勝し、表8の「芝2000~2200mのG2以上優勝」という条件はクリア。連覇がかかった本年の金鯱賞(2走前)は12番人気5着という結果だったが、4着のポタジェとはクビ差だった。まったく人気はなさそうなだけに、7歳という年齢(表2)には目をつむって狙う価値はある。その他、好成績の5歳馬で減点材料が少ない馬としてはオーソリティ、ディープボンドあたりが挙げられる。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通
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