JRA-VANコラム
今年は大物誕生の順番!? 3歳ダート重賞・ユニコーンSを占う
今週末の重賞は、東京のユニコーンSと阪神のマーメイドSの2レースが組まれている。今回は、3歳ダート重賞の前者を取り上げたい。このところ、16年のゴールドドリーム、18年のルヴァンスレーヴ、20年のカフェファラオと2年おきに大物が出ており、順番でいえば今年も期待がかかる。そんなダートの出世レースを、過去10年の結果から分析していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。過去10年で1~3番人気が綺麗に3勝ずつを挙げ、特に3番人気は複勝率90.0%の安定感を誇る。しかし、その下の人気となると、1勝、3着2回の7番人気を除いて、4番人気以下は概して苦戦の傾向が見受けられる。昨年こそ7番人気のスマッシャーが1着、14番人気のサヴァが2着という波乱になったが、通常は上位人気が強いレースと言えそうだ。
表2は出走馬の勝利数別成績。なお、集計の対象は中央だけで、地方や海外の勝利はカウントしていない。4勝を挙げていたのは19年のデュープロセスが唯一で、同馬は2番人気2着ときっちり走った。以下、勝利数が多い馬ほど勝率、連対率、複勝率も高いという綺麗な相関関係が出ており、基本的には勝利実績がそのまま結果にも反映されている。
表3は前走着順別成績。出走例の半分近くが前走1着馬で、ユニコーンS1~3着馬31頭(13年が3着同着)のうち15頭はここから出ている。内容を確認すると、ユニコーンSで1番人気に推された前走1着馬は【2.2.0.0】とオール連対を果たし、2、3番人気も【1.3.3.5】と高確率で好走している。対して、4番人気以下は【0.0.4.56】。この通り、前走1着馬の信頼性は当日1~3番人気に収まるかどうかで劇的に変わってくるため、忘れないよう人気をチェックしたい。
数字がいいのは前走2着と前走4着で、いずれも勝率20%以上、複勝率40%以上を記録。また、前走3着も単複の回収率が100%以上と優秀だ。これらを合算した前走2~4着馬は【6.4.3.22】、勝率17.1%、複勝率37.1%、単勝回収率124%、複勝回収率150%の好成績で、該当馬がいれば注目する価値がある。
しかし、前走5着以下は合算して【1.1.1.42】と苦しい。しかも、前走5着以下から好走した3頭のうち、前走も国内ダートだったのは21年2着のサヴァだけ。あとの2頭は、13年3着のケイアイレオーネが前走UAEダービー10着、19年1着のワイドファラオが前走NHKマイルC9着と、海外や芝からの転戦だった。巻き返しを狙うとすれば条件が激変する馬、という考えも成立するかもしれない。
表4は、前走1着馬に限った前走クラス別成績。出走例の7割以上は1勝クラスを勝ってきた馬だが、その成績は【1.0.5.49】と苦戦気味。好走しても3着までということが多い。例外は12年1着のストローハットで、同馬は前走が初ダートだった。つまり、前走1勝クラス1着馬を狙うのであれば、ダートの経験が浅く伸びしろが大きそうな馬という考え方はありうるのではないか。
対して、前走オープン特別(リステッド競走を含む)や地方交流重賞、あるいは海外戦で1着だった馬は、合わせて【2.5.2.12】、勝率9.5%、複勝率42.9%、単勝回収率31%、複勝回収率64%。人気になりやすい様子もうかがえ、2着の多さにも注意したいところだが、堅実に走っているのは間違いない。
表5は、前走2~4着馬に限った前走人気別成績。表3の項で述べた通り、前走2~4着馬はユニコーンSで好成績を収めており、そのなかでも前走1~4番人気だった馬は【4.3.3.10】、勝率20.0%、複勝率50.0%、単勝回収率85%、複勝回収率196%と安定して走っている。加えて、前走5番人気4着のレッドアルヴィスが14年に、前走6番人気3着のスマッシャーが21年にそれぞれ勝ち、前走8番人気2着のハルクンノテソーロが17年に2着に入った例もある。前走10番人気以下でさえなければ、前走2~4着馬には注意を払っておきたいところだ。
表6は、距離が「今回延長」「同距離」「今回短縮」の成績をそれぞれ示したもの。好走率がもっとも高いのは「今回短縮」で、「同距離」がそれに次ぐ。しかし、「今回延長」は明らかに好走率を落としており、不利なローテーションと判断してもいいだろう。
表7は過去の1600m実績(芝・ダートは問わない。中央のみ)に関するデータをまとめたもの。大きく「1600m出走あり」と「1600m出走なし」に分けている。
まずは「1600m出走あり」の馬から。当然ではあるのだが、ユニコーンSと同じ1600mで1着の実績を持つ馬のほうが、持たない馬より高い好走率を記録。過去10年、初ダートで好走した唯一の馬である19年1着のワイドファラオも、芝1600mでニュージーランドT勝ちを含む【2.2.0.0】の良績を収めていたように、芝でもいいからなるべくマイル実績を有しておきたい。
一方、「1600m出走なし」の場合は、1700m以上の出走歴があるかどうかをチェックしたい。表7の通り、1600m未出走で好走した6頭には、すべて1700m以上の出走歴があった。しかし、1600m未出走かつ1700m以上にも出走したことがなかった16頭はすべて凡走に終わっている。ユニコーンSは、思った以上に距離経験が重要なレースと言えそうだ。
【結論】
今年のユニコーンSの出走登録は17頭。回避馬が出ない場合、収得賞金900万円の11頭中10頭が抽選で出走可能という状況になっている。なお、表6の項で距離短縮が好成績であることを述べたが、今年の登録馬の前走は、前走海外組を除けば、芝・ダートの違いはあっても1400mか1600mのどちらかに限られる。
表3の項で前走2~4着馬の好走率が高いというデータを確認した。今年の該当馬は2頭だけで、いずれも青竜Sを使ったバトルクライ(前走3着)とヴァルツァーシャル(前走4着)。データ的には、ダート1600mで1着の実績があり、前走2~4着の場合に好走率が高い前走1~4番人気にも当てはまるヴァルツァーシャルがより有望そうだ。
前走1着馬は8頭いて、そのうち前走クラスがオープンだったのは青竜S1着のハセドンと端午S1着のリメイク。この両馬では、1600mの青竜Sを勝って距離実績のあるハセドンのほうが狙いやすそう。一方、リメイクは出走馬で唯一の4勝馬ではあるものの、過去6戦がすべて1400mで距離経験を持たないことは看過できない。
残りの前走1着馬は1勝クラスを勝ってきた馬だが、このパターンが苦戦しているのは表4の項で確認した通り。ただし、当日1~3番人気に推された前走1着馬の好走率が高いことにも触れており、この場合は前走1勝クラスでも【1.0.1.1】と結果を出している。1600mを勝ってきたジュタロウ、ビヨンドザファザー、ロードジャスティスが当日人気になるようならマークはしておきたい。イグザルト、テーオーステルス、レッドゲイルは、やはり距離経験が1400mまでという点が気にかかる。
ほかに、前走海外戦のコンバスチョンとセキフウ、前走芝のインダストリア、タイセイディバイン、ティーガーデンの計5頭は、前走5着以下でも巻き返しがありうるパターン。海外帰りの場合は体調、前走芝の場合はダート適性に未知数なところもあるが、同コースのヒヤシンスS(リステッド競走)を制しているコンバスチョンは軽視できない存在だろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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