JRA-VANコラム
前走よりハンデ減がカギ? 荒れる函館記念を展望する
先週の七夕賞に続き、今週はサマー2000シリーズの第2戦・函館記念が開催される。過去2年、3着以内にふたケタ人気馬が2頭ずつ入るなどしばしば波乱の決着となるハンデG3の傾向を、過去10年の結果から調べてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。注目したいのは、1着馬と2、3着馬でまったく異なる人気傾向が出ていることだ。1着馬の多くを出しているのは1~5番人気で、10頭中9頭が該当する。ただし、1番人気1着は19年のマイスタイルだけで、残りの9頭は2、3着もない。この1番人気の不振傾向には気をつけたい。一方、2、3着馬の大半は7番人気以下から出ており、20頭中18頭を占める。たとえば、1着に2番人気のトーセンスーリヤ、2着に14番人気のアイスバブル、3着に12番人気のバイオスパークが入った昨年も、実は函館記念の典型的な人気パターンという見方もできるだろう。
表2は枠番別成績。過去10年の函館記念は大半が16頭立てで、唯一フルゲートにならなかった18年も15頭立てと例年頭数が揃う。では、枠の傾向はどのようなものか。表2を見る限り、好走率が高いのは2~4枠で、いずれも複数の勝ち馬を出している。基本的には内枠有利とみてよさそうだが、勝ち馬がおらず2着も1回だけの1枠に関しては過信しないほうがいいだろう。また、稍重の16年、重の17年の2年分に限ったデータでは、1、2枠が【0.0.0.8】と好走がないことも記しておきたい。1番人気2頭、2番人気1頭を含む数字でもあり、良馬場以外になった場合の1、2枠には注意が求められる。
表3は4角通過順別成績。このデータから明らかなのは、函館記念で4角を10番手以降で通過すると3着以内に入る確率が著しく下がること。有望なのは4角を1番手や2番手、3~4番手で回った馬で、いずれも複勝率40%以上を記録。これらを合算した成績は【8.5.7.25】、勝率17.8%、複勝率44.4%、単勝回収率119%、複勝回収率224%と抜群で、どの馬が前に行けるかを正確に予測することができれば、それだけで的中にグッと近づくことになりそうだ。
表4は牡牝別・年齢別・東西別の成績で、上から順に見ていこう。「牡牝別(セン馬は牡馬に含む)」の成績を見ると、函館記念の出走馬は大半が牡馬で、牝馬は1年に1頭も出走しない計算。牝馬の好走は18年3着のエテルナミノルが唯一となっている。「年齢別」では4歳が一歩リードするが、今年の登録馬に4歳は見当たらない。となると、明らかに数字を落とす8歳以上を除き、5~7歳ならチャンスありとみてもいいかもしれない。「東西別」では、単複の回収率に大きな差がついていて、関西馬の数値が関東馬をかなり上回る。これは10番人気以下から3着以内に入った8頭がすべて関西馬だった影響が大きい。関東馬も7~9番人気から6頭が2、3着に入っており、穴を期待できないわけではないが、より大きな穴は関西馬があけることが多いようだ。
表5はハンデ別成績。函館記念の出走馬、好走馬は大半が牡馬であるため、ここでは牡馬のみを集計の対象とした。出走例が多いのはハンデ54キロから56キロのゾーンで、好走率が際立って高いわけではないが、ここから1着馬が9頭出ていることは押さえておきたい。
56.5キロ以上のハンデを課された牡馬には注意すべきデータがある。それは1、2番人気に推されると【0.0.0.7】と好走がないことだ。一方、3番人気以下なら【1.3.2.18】、複勝率25.0%、複勝回収率144%と悪くない成績を残しており、重ハンデ馬を狙うならこちらか。
軽めのハンデでは、51キロ以下の牡馬に好走例はない。52キロか53キロであれば【0.3.1.9】、複勝率30.8%、複勝回収率236%、好走した4頭はいずれも7番人気以下と侮れない。ただし、今年は54キロがもっとも軽いハンデとなっており、当該馬は存在しない。
表6は、前走で重賞に出走していた馬に関するふたつのデータをまとめたもの。ひとつめは斤量の増減別で、「今回増」「増減なし」「今回減」で好走率の決定的な差はない。ただし、単複の回収率は「今回減」が圧倒的に高く、穴を多く出していることが見て取れる。
もうひとつのデータは前走人気。この通り、前走の重賞で1~5番人気だった馬は苦戦しており、合算して【1.0.1.15】、勝率5.9%、複勝率11.8%、単勝回収率37%、複勝回収率29%と数字も冴えない。むしろ、前走の重賞で6~9番人気や10番人気以下の評価にとどまっていた馬のほうが結果を出していて、合わせて【7.5.5.42】、勝率11.9%、複勝率28.8%、単勝回収率202%、複勝回収率182%という数字が残っている。ちなみに「前走重賞で6番人気以下かつ1~5着」だった馬は【6.2.0.3】。今年も該当馬がいるようなら注目の存在になりそうだ。
表7は、前走でオープン特別もしくはリステッドに出走していた馬に関するふたつのデータをまとめたもの。まず、前走と比べてハンデが増えているのか減っているのかは非常に重要で、この組の好走例の大半は「今回減」から生まれている。
前走着順もチェックしておきたい。まず、前走1着だった12頭はすべて4着以下というまさかの結果が残っている。前走2~5着でも【1.1.2.23】、勝率3.7%、複勝率14.8%、単勝回収率26%、複勝回収率59%と苦戦気味で、前走6~9着のほうが好走率はかえって高いぐらいだ。
そのほか、表6と表7の集計対象外の馬、つまり前走が条件戦だった馬は【0.0.1.5】という成績を残している。好走したのは14年3着のステラウインドで、同馬は前走1600万下(現3勝クラス)1着のあとハンデが3キロ減での出走だった。
【結論】
以上の分析をもとに、今年の函館記念に出走登録がある18頭のなかから有力と思われる馬を紹介していきたい。
表6からも読み取れるように、過去10年の函館記念1着馬のうち8頭は前走で重賞に出走していた。そして、表6の項で述べた通り、前走重賞の場合はそこで6番人気以下の評価にとどまっていた馬のほうが結果を出しており、なおかつ1~5着に入っていると抜群の成績を残していることも前述した。
今年この条件に該当する唯一の馬が、前走の目黒記念で6番人気2着のマイネルウィルトス。今回のハンデ56キロは1着馬が多く出ているゾーンでもあり、3番人気8着に終わった昨年の雪辱を重賞初制覇で果たしたいところだろう。また、前走重賞出走馬は、斤量が今回減だと回収率が高いというデータも表6で示した。今年該当する馬として、アドマイヤジャスタ、ギベオン、スカーフェイス、ハヤヤッコの4頭も挙げておこう。
前走重賞出走馬では、回収率は別として、好走率自体は斤量が今回増や増減なしでも落ちない。ただし、ハンデそのものが56.5キロ以上の場合、1、2番人気に推されると好走が皆無であることを表5の項で述べた。今年、人気の一角を占めることが予想されるトップハンデ57.5キロのサンレイポケットにとっては、データ上は3番人気以下にとどまったほうが好走しやすいことになる。
前走オープン特別・リステッド出走馬の場合、好走の大半は斤量が今回減の馬から生まれていて、なおかつ前走で9着以内には入っておきたい。好走率が落ちる8歳以上を除き、今年の前走オープン特別・リステッド組で「斤量が今回減かつ前走9着以内」に該当するのは、アラタ、モンブランテソーロ、ランフォザローゼスの3頭だ。
最後にもう1頭、前走で3勝クラスを勝ち、3キロ減のハンデ54キロで出走するタイセイモンストルもマークはしておきたい。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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