JRA-VANコラム
サマーマイルシリーズの結末は!? 京成杯AHを分析する
先週で夏競馬が終わって、今週末から秋競馬が開幕する。重賞は土日で3レースが組まれており、今回は日曜の中山で開催される芝のマイルG3・京成杯AHを取り上げたい。集計期間はいつものように過去10年だが、新潟で開催された14年は除外し、実際には9年分のデータが対象となる。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。集計対象9回の1着馬の内訳は、1番人気が3勝、4番人気が2勝、2、3、7、13番人気が各1勝。穴馬の1着もあるが、1~4番人気が計7勝しており、ハンデ戦にしては上位人気がしっかり勝っている印象を受ける。また、複勝率ベースでは1番人気から7番人気まで差がなく、このあたりまでは馬券圏内。10番人気以下も複勝回収率81%で、いわゆる人気薄にも一定のチャンスはありそうだ。
表2は年齢別成績。勝率と複勝率がもっとも高いのは3歳。出走例はそれほど多くはないが、出てきたらしっかりマークしておきたい。勝率では4歳と5歳も差がなく、こちらもチャンス十分。また、回収率が高い7歳も侮れないところだが、今年は登録がなかった。
表3はハンデ別成績。大きく「3歳」と「4歳以上」に区別し、さらに「牡馬(セン馬を含む)」と「牝馬」を分けたデータを掲載している。
もっとも、出走例が決して多くはない「3歳」は牡牝ともに傾向を読み取りづらく、ひとまず言えるのは明らかに不利なハンデはなさそうということぐらい。表2の項で確認した通り、基本的に3歳は好走率が高めで、どのハンデでも一定以上の注意を払っておこう。
「4歳以上の牡馬」では55キロや56キロの出走例が多いものの、どちらも好走率は普通。もっとも重い58キロでも複勝率40.0%としっかり走っていることや、もっとも軽い53キロだった15年のフラアンジェリコが激走1着を決めたことを指摘しておきたい。
「4歳以上の牝馬」では、52キロで出走した4頭中2頭が1着だった点は注目に値する。また、牝馬としては重い部類の55キロや55.5キロにも好走例があり、牡馬同様に重いハンデでもさほど苦にせず走っているようだ。
表4は、前走と比べてハンデが「今回減」「増減なし」「今回増」となった馬の成績をそれぞれ表したもの。なお、表4の集計対象は「前走が中央かつ同クラス(=オープン)」の馬のみとし、さらに「前走1~2着」と「前走3着以下」に分けている。
「前走1~2着」の場合、「今回減」だと成績が振るわない。同クラスの前走で連対を果たしながらハンデ減という有利にも思えるシチュエーションだが、結果にはつながりにくい。むしろ「増減なし」や、前走の連対をしっかり評価されて「今回増」のハンデを課された馬のほうが結果を出している。
また、「前走3着以下」だった場合でも、「今回減」に大きなアドバンテージは見られない。連対率と複勝率の数値は「今回増」がもっとも高く、次いで「増減なし」の順。ただし、前走3着以下から巻き返し1着があるのは「今回減」だけで、単勝回収率109%ということからも一発には注意が必要だ。
表5は、前走と比べて距離が「今回延長」「同距離」「今回短縮」となる馬の成績をそれぞれ表したもの。最多の4勝を挙げているのは「今回短縮」だが、2、3着はなしという偏った結果が出ている。同様の傾向は「今回延長」にも見られ、3勝に対して2、3着は各1回しかない。逆に「同距離」は2勝に対して2、3着は各8回と、好走はするものの勝ち切れないことが多い。まとめると、延長、短縮を問わず前走で異なる距離のレースを使っていた馬が1着、同距離を走っていた馬が2、3着に入るのが京成杯AHでよくあるパターンとなっている。
表6は前走クラス別成績。出走例、好走例ともに最多を記録しているのは前走G3組。単複の回収率も高く、ここの取捨はひとつのポイントとなりそうだ。次いで好走例が多いのは前走G1組で、連対率と複勝率の数値は前走G3組を上回る。ただし回収率はもうひとつで、G1帰りの馬は人気になりやすい傾向も見られる。なお、前走G3組に関するデータは表7、前走G1組に関するデータは表8の項でも補足する。
ほかに、前走オープン特別・リステッド競走組も一定の出走数があるものの、成績は合わせて【1.1.1.31】と振るわない。また、前走3勝クラス組は8頭出走して3勝と侮れない成績を残しているのだが、今年の登録馬には該当する馬がいなかった。
表7は、前走G3組について、前走の着順別と人気別の成績を表したもの。この前走G3組で気になるのが、前走1着の3頭がすべて凡走に終わっていることである。内訳を確認すると、前走関屋記念1着が2頭、前走中京記念1着が1頭となっており、左回りで直線が長い新潟(外)や中京→右回りで直線の短い中山へのコース替わりの影響は考えられそうだ。前走2着は【3.1.1.5】と好調で、前走3着も複勝率42.9%を記録。以下、前走9着までは十分チャンスあり。しかし、前走10着以下からは15年にフラアンジェリコが大穴をあけた例こそあるものの、あとの25頭は馬券圏外で、ここから巻き返すのはなかなか難しいようだ。
続いて前走人気を見ていくが、前走で上位人気に推されていた馬の成績が思いの外よくない。好走が多いのは前走5番人気や前走6~9番人気で、回収率も高く、注目のゾーンといえる。しかし、前走10番人気以下は3着1回だけと苦戦。こうしてデータを確認すると、前走G3組は前走の人気、着順ともにひとケタには収まっておきたいところだ。
表8は、前走G1組について、前走の着順別と馬体重増減別の成績を表したもの。前走着順に関しては、強豪の揃うG1だけあって前走10着以下からの巻き返しも十分可能。合算して【0.1.1.7】の前走2~9着より走っているぐらいで、前走G1の着順はあまり気にしなくてよさそうだ。
もうひとつの前走の馬体重増減別成績は、なかなか興味深い傾向を示している。注目したいのは「前走減」の7頭がすべて4着以下に終わっていること。つまり、前走のG1でマイナス馬体重を記録していた馬は、今走(京成杯AH)の馬体重にかかわらず好走できないことを意味している。馬体重を絞り込んで春のG1に出走した馬にとって、秋競馬の開幕週に組まれる京成杯AHは、思った以上に回復するための時間的な余裕がないレースなのかもしれない。
【結論】
今年の京成杯AHには15頭が登録。フルゲート16頭に満たないため全馬の出走が可能となっている。
このうち8頭が前走G3組で、今年も最大勢力となっている。表7の項で述べた通り、この組は前走の着順と人気がいずれもひとケタ台に収まっていたい。これを満たすのは前走中京記念のベレヌス、ファルコニア、ミスニューヨーク、シャーレイポピーと、前走エプソムCのダーリントンホールの5頭となっている。
サマーマイルシリーズ優勝をかけての出走となるのが、前走中京記念1着のベレヌス。表7の項で確認した通り、前走G3で1着だった馬は3頭とも凡走に終わっている(注:集計から除外した14年は、前走関屋記念1着のクラレントが1着。この年は関屋記念、京成杯AHともに新潟芝1600mで開催)。この不振データは気になるものの、過去の凡走例では新潟→中山もしくは中京→中山のコース替わりがあった。その点、今年の中京記念は小倉開催で、小倉→中山のコース替わりとなる。急坂の有無はあるが、小倉、中山ともに右回りで最後の直線が短いことも共通しており、通常のカレンダーの年より対応しやすい可能性はある。
もちろん、複勝率42.9%の前走3着に該当するファルコニアとダーリントンホール、複勝率40.0%の前走2番人気に該当するミスニューヨークもチャンスは十分。また、表3の項で4戦2勝と述べた「4歳以上牝馬でハンデ52キロ」のシャーレイポピーにも注目しておきたい。
前走G1組はクリノプレミアムのみ。表8の項で述べた通り、前走ヴィクトリアマイルの16着という着順は気にしなくていいだろう。チェックしたいのは、表8で確認したもうひとつのデータである前走馬体重増減。同馬のヴィクトリアマイル時はどうだったかといえば増減なしで、前走G1組の好走条件はクリアしている。
あとは前走オープン特別・リステッド競走組が6頭いるが、この組は京成杯AHとの相性がもうひとつ。それでも馬名を挙げるとすれば、表2の項で好走率が高いことを確認した3歳馬コムストックロードと、表4の項で好成績と述べた「前走1~2着→今走斤量増減なし」に該当するダディーズビビッドの2頭としたい。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。