JRA-VANコラム
実績馬か上がり馬か伏兵馬か! 高松宮記念を分析
今年も春のG1シリーズは高松宮記念が開幕を告げる。復活を期すG1馬、悲願のG1制覇を目指す実力馬、連勝中の上がり馬、虎視眈々と台頭を狙う伏兵馬が集う一戦を、過去10年のデータから読み解いてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
過去10年の高松宮記念は良馬場で開催されたのが4回と、半数に達しない。そこで人気別成績を「良」と「稍重~不良」に分けてみたところ、興味深い傾向が見て取れたため紹介したい。
良の場合、好走例は1~3番人気か10番人気以下のどちらかに限られ、中間の4~9番人気はすべて4着以下という極端な傾向が出ている。一方、稍重~不良の場合でも、1~3番人気はコンスタントに好走しているのだが、1番人気の1着がない点には注意したい。また、良馬場では好走なしの4~9番人気が合算して【4.3.1.28】、勝率11.1%、複勝率22.2%、単勝回収率209%、複勝回収率97%と、稍重~不良では悪くない成績を残している点も注目に値する。この通り、馬場状態に応じて、特に穴馬好走の人気ゾーンが変わってくるのが過去10年の高松宮記念の特徴となっている。
表2は馬番別成績。まず気がついたのが、1番枠および18番枠から3着以内に入った馬が1頭もいないこと。特に、18番枠は1番人気と3番人気が1頭ずついて、それぞれ13着、12着に終わっている。また、全体を見渡しても、10~18番枠の複勝率は16番枠を除いて10.0%以下にとどまり、外寄りの馬番はやや不利の傾向があるようだ。
表3は、牡牝別・年齢別・所属別の成績。「牡牝別」では、牡馬(セン馬を含む)の9勝に対して牝馬は1勝と、勝ち切れるのは牡馬。ただし、連対率や複勝率では大差ない数値が残っている。
「年齢別」では、5歳が4勝、4歳が3勝で、勝率でも6歳以上をややリード。ただし、近2年は6歳が連勝中。また、連対率と複勝率は6歳がトップの数値で、複勝回収率258%も際立っており、6歳までは十分チャンスがありそうだ。7歳になると好走率が下がるが、好走した2頭にはセン馬という共通項がある。そして過去10年、8歳以上の好走はなかった。
「所属別」では、中央所属だと関西馬7勝に対して関東馬2勝。1~3着数で見ても、関西馬が計19回、関東馬が計10回と、関西馬がリードしている。ただし、複勝率に関しては関東馬のほうが高く、複勝回収率289%も優秀。10番人気以下の好走5回のうち4回を関東馬が記録していることからも、激走に注意しておきたい。なお、外国馬も1勝しているが、今年は登録がなかった。
※好走例のある前走レースのみ掲載
表4は前走レース別成績。過去10年の高松宮記念1~3着馬延べ30頭のうち、前走でシルクロードS(7頭)、阪急杯(8頭)、オーシャンS(8頭)のいずれかを使っていた馬が23頭を占める。そこで、この主要な3つの前走を比較すると、好走率、回収率ともに優秀なのは前走シルクロードS組。ただし、このレースが中京開催となった過去2年に限ると【0.0.0.7】で、本番につながっていない。今年のシルクロードSも中京開催だっただけに、気がかりなデータではある。
前走阪急杯組は単複の回収率がいずれも36%にとどまるが、これは本番の好走が当日1~4番人気に推された馬に限られている影響が大きい。そして、「前走で阪急杯に出走し、高松宮記念で1~4番人気」に該当すれば【3.2.3.5】、勝率23.1%、複勝率61.5%、単勝回収率129%、複勝回収率130%と優秀な成績を残しており、一気に有望な存在となりうる。
前走オーシャンS組は出走数では最多ながら、好走率としてはもうひとつ。ただし、複勝回収率234%を記録しているように、人気薄の激走には注意しておきたい。
これら以外の前走レースの好走例は、多くても2頭までに限られる。そのなかでは、前走で香港の芝1200mG1(表4では香港スプリント、チェアマンズスプリントプライズ)を使っていた馬は注目に値しそうだ。また、前走京都牝馬S組も出走6頭から2着馬2頭が出ており、こちらも侮れない。
前項で述べた通り、高松宮記念では前走シルクロードS組、阪急杯組、オーシャンS組の好走が多い。そこで、この3レースに関連するデータを追加で確認しておきたい。
表5は、前走シルクロードS組に関する各種データを表したもの。上から順に、前走着順から見ていこう。10着以下から巻き返した例もあるが、これは19年2着のセイウンコウセイ。同馬が17年高松宮記念勝ち馬であることを考えると、例外的な存在とみるべきか。となると5着までには入っておきたい。前走人気は基準が明快で1~5番人気が目安。もうひとつ、前走馬体重の増減が興味深い傾向を示しており、この組から好走した馬の大半は、シルクロードSにプラス馬体重で出走していた。例外は20年1着のモズスーパーフレアだけで、同馬はシルクロードSがマイナス6キロでの出走だった。
表6は、前走阪急杯組に関する各種データを表したもの。なお、表4の項で述べた通り、この組の好走は高松宮記念で1~4番人気に推された馬に限られるため、当日の人気を必ずチェックするようにしたい。
このことを踏まえて、表6を上から順に確認していこう。前走着順は、阪急杯1~4着馬が好走例の多くを占めるが、19年にミスターメロディが阪急杯7着→高松宮記念1着と巻き返した例もある。むしろ、基準としては前走人気のほうが明快で、好走例は阪急杯1~4番人気に限られる。前述したミスターメロディも、阪急杯では1番人気に推されていた。最後にもうひとつ、前走4角通過順もチェックしておきたい。というのも、阪急杯で4角1~4番手だった馬と5番手以降だった馬では、本番の好走率にけっこうな差がついているからだ。できれば、阪急杯では4角を1~4番手で回っておきたいところ。5番手以降だった馬の好走も2例あるのだが、該当するのは13年1着のロードカナロア、21年3着のインディチャンプで、いずれもすでにG1を2勝という高い実績を持っていた。
表7は、前走オーシャンS組に関する各種データを表したもの。前走着順で目を引くのは、1着馬は【0.0.0.9】とすべて凡走に終わっていること。また、10着以下から巻き返した例もない。これらを除いたオーシャンS2~9着馬は、【1.2.5.28】、複勝率22.2%、複勝回収率404%と侮れない数値を残している。前走人気は、オーシャンS1~4番人気馬の好走がやや多いものの、人気薄にとどまっていた馬にもチャンスはありそう。それ以上にチェックしておきたいのが上がり3Fタイム順。まず、オーシャンSの上がり1位馬は複勝率50.0%を記録。そして、上がり2~5位馬の好走はないのに、上がり6位以下馬が2、3着に入ったケースが5回あるのは非常に興味深い。複勝回収率418%も抜群で、穴党には見逃せないゾーンとなりそうだ。
【結論】
以上のデータ分析に基づいて、今年の高松宮記念で有望と思われる馬を紹介していきたい。登録20頭のうち、前走シルクロードS組が5頭、阪急杯組とオーシャンS組が各4頭を占めているのは、例年通りの傾向だ。
前走シルクロードS組は、そこで「1~5着」「1~5番人気」「プラス馬体重」を満たしておきたいことを表5の項で述べた。この条件を満たす登録馬は、ナムラクレア(前走プラス6キロ、2番人気1着)、トウシンマカオ(前走プラス12キロ、3番人気4着)の2頭。過去2年、中京開催のシルクロードS組が本番で好走できなかった点がどうかだが、軽視はできない存在だ。
前走阪急杯組は、そこで「1~4番人気」「4角1~4番手」であることが重要だった。この条件を満たす登録馬は、アグリ(前走2番人気、4角2番手)、ダディーズビビッド(前走3番人気、4角4番手)、グレナディアガーズ(前走1番人気、4角4番手)の3頭。そして、表4の項で述べた通り、この組の好走は当日1~4番人気に限られており、実際の人気順のチェックが欠かせない。
前走オーシャンS組は、そこで「2~9着」「上がり1位もしくは6位以下」が好走していることを述べた。この条件を満たす登録馬はディヴィナシオン(前走2着、上がり6位)だけとなっている。
以上の3レース以外から臨む馬では、前走香港スプリントのピクシーナイトとメイケイエールはもちろん注目。ただし、好走例があるのは前年の香港スプリント以来の出走であり、メイケイエールはいいとして、2年前の香港スプリント以来となるピクシーナイトはデータの埒外の存在となる。また、前走京都牝馬S組も侮れず、昨年の2着馬でもあるロータスランドの2年連続好走の目もあるだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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