JRA-VANコラム
今年も好メンバーが集結! 札幌記念を占う
今週は札幌競馬場で札幌記念が行われる。夏のローカル唯一のG2競走であることに加え、実績馬も出走しやすい定量戦で行われるため、毎年のようにG1級の好メンバーが顔を揃えるレースだ。今年も大阪杯を制したジャックドールや、一昨年の日本ダービー馬・シャフリヤールなどが参戦予定。今後の大レースへ向け弾みをつけるのはどの馬か。過去の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
過去10年、1番人気は【0.4.3.3】で複勝率は70.0%と上々ながら、2011年のトーセンジョーダンの優勝を最後に11連敗中。その分、2番人気が5勝と好結果を残している。また、2018年以降の後半5年は穴馬の好走が少なく、近5年の3連単はいずれも1万円以上1万7000円未満。1番人気が勝っていないため極端な低配当こそないものの、波乱は期待しづらいレースになっている。
年齢別では4勝を挙げている4歳と、8連対の5歳が中心。ただ6歳以上の馬も8頭が馬券に絡んでおり、まったく軽視してしまうのは避けたい。勝率~複勝率トップの3歳は、牝馬2戦2勝に対し牡馬【0.0.1.6】と牡馬は苦戦。今年は3歳牝馬の登録がない。
函館で代替された2013年を除く9回の枠番別では、1~3枠が【5.5.3.27】複勝率32.5%、4~8枠が【4.4.6.75】同15.7%と内枠が優勢。人気馬なら中~外枠でも大きな減点は必要なさそうだが、4枠より外を引いた穴馬の連対は望みづらい。
表4は前走クラスと主な前走レース別の成績である。まず前走が重賞以外だった馬は【0.0.0.19】と好走なし(本年は該当馬不在)。また、函館記念を中心とした前走G3組は2013~17年の前半5年に【4.2.2.28】複勝率22.2%と好走馬8頭を出していたのに対し、2018年以降は【0.0.1.25】同3.8%と極度の不振に陥っている。近5年の中心は【4.4.3.12】複勝率47.8%を記録する中央G1組で、その結果として表1で触れたように穴馬の出番が減少したと考えられる。
前走中央G1組の3着以内好走馬は表5の17頭。以前は前走5着以内馬が大半を占めていたのに対し、2020年以降は掲示板外から巻き返した馬が多い。そもそも前走好走馬の出走が少なかったという事情もあるが、いずれにせよ前走が中央G1なら前走着順は無視して構わないだろう。
表6は同じく前走中央G1組について、主なG1実績を調べたものである。好走馬17頭のうち、G1で馬券に絡んだ実績がなかったのは昨年のジャックドール1頭のみ。17頭中11頭にはG1優勝実績があった。また、マイル~2000mがベストと思われる馬が多いのも特徴だ。
最後に表7は、前走中央G2以下か海外G1からの好走馬13頭。前述のようにここ5年はこの組の好走馬が激減しており、馬券に絡んだ4頭はすべてG1馬だった。また海外G1組のモズカッチャンとラヴズオンリーユーはともに牝馬で、G1で馬券圏内が3回以上あったことでも共通している。
【結論】
以前とは違い近年の札幌記念は前走中央G1組が中心になり、それにともなって穴馬の出番も減少している(表1、4)。今年のメンバーで前走中央G1かつG1優勝実績馬は、昨年の覇者・ジャックドール1頭のみ。昨年はG1未勝利の身で優勝したが、大阪杯でG1タイトルを獲得した今年はより信頼性の高い存在と言える(表6)。ひとつ年齢を重ね5歳になったことも特に不安材料とはならない(表2)。ひとつ気になる点を挙げるとすれば1番人気に支持されそうなことで、大きくは崩れないまでも2~3着止まりの可能性は考えて馬券を組み立てたい(表1)。
逆転の1番手は昨年の3着馬・ウインマリリンだろうか。宝塚記念7着後だった昨年と違って今年は海外(ドバイシーマクラシック6着)からの参戦になるが、香港ヴァーズ優勝などG1で馬券圏内3回(以上)の実績を持つ牝馬という点は、海外組の好走馬・モズカッチャンやラヴズオンリーユーと同じだ。その他では、中央G1組ならG1で3着以内の経験があるラーグルフやヒシイグアス。海外組では牝馬でこそないが、G1・2勝2着1回と実績面の条件はクリアするシャフリヤールが候補に挙げられる。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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