JRA-VANコラム
ダートG1前哨戦のみやこSを展望する
秋のG1シリーズの中休みとなる今週末。とはいえ、金曜にはJBCがあり、土日に計4重賞が組まれるなどいつもより忙しいぐらいかもしれない。その中から当欄では日曜京都のみやこSを取り上げる。チャンピオンSの前哨戦となる重要な一戦を、過去10年のデータから分析する。なお、18年はみやこSが開催されなかったため、実際には9年分のデータとなる。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
みやこS出走馬の前走クラスを確認すると、オープン特別かG3のどちらかに出走していた馬が好走の大半を占めていることがわかる。ほかのクラスはそもそも出走が少ないこともあるが、好走例は前走3勝クラスの2着1回だけ。このデータを見てしまったあとでは、前走オープン特別組および前走G3組の分析に注力すべきだろう。
前走オープン特別組は3つのファクターに注目したい。明暗がクッキリと分かれているのが「前走着順」と「出走間隔」。上表の通り、前走のオープン特別で10着以下だった馬や、そこから中7週以上でみやこSに出走した馬はすべて凡走に終わっている。また、「前走上がり」も1~3位と4位以下だった馬では成績に差が見られる。まとめると、前走オープン特別の場合は「前走1~9着」と「中6週以内」は極力満たしておきたい。加えて「前走上がり1~3位」までクリアすると期待度が上昇しそうだ。
前走G3組の場合は「前走着順」「斤量の増減」「前走騎手(乗り替わりの有無)」の3つをチェックしたい。「前走着順」は1着だった5頭が2着1回のみと案外で、むしろ2~5着だった馬のほうが好走しやすい。6着以下から巻き返すケースは多くないが、好走した2回が11番人気1着、10番人気3着といずれも激走で回収率が高く、警戒はしておきたい。「斤量の増減」では今回減の成績が優秀。こちらも回収率が非常に高く、激走に注意だ。「前走騎手(乗り替わりの有無)」は、明らかに継続騎乗の数字がよく、騎手が乗り替わった馬は少し成績を落とす傾向が見られる。
表4は、同年の中央ダート重賞1着馬の成績をレース別で表したもの。前走G3で1着だった馬が不振であることを前項で述べたが、実は前走に限ったことではない。同年のダート重賞を勝っていた馬が、みやこSでは思いのほか苦戦している様子が見て取れる。その中ではレパードS1着馬が連対率50%、アンタレスS1着馬が複勝率40%で比較的狙える部類か。
表5は、同年の中央ダート重賞2、3着馬の成績をレース別で表したもの。この通り、同年のダート重賞で2、3着だった馬のほうがむしろ狙いやすい。その中でも、複数の好走馬を送り出しているエルムS、アンタレスS、シリウスS、東海Sで今年2、3着だった馬がいるようなら注目に値するだろう。
【結論】
「エルムS2着のワールドタキオンにチャンス到来」
以上のデータ分析から、今年のみやこSで有望と思われる馬を紹介していきたい。
前走オープン特別出走馬のうち、絶対条件ともいえる「前走1~9着」「中6週以内」の両方を満たす登録馬が6頭と今年はけっこう多い。そこで、もうひとつの重要な条件である「前走上がり1~3位」に合致する馬を探すと、ハピとマリオロードの2頭。ただし、ハピは出走回避との報道があり、当欄ではマリオロードを注目馬としたい。
前走G3出走馬の場合は「前走2~5着」「斤量今回減」「継続騎乗」が有力なデータだった。注目は「前走2~5着」に唯一該当するワールドタキオン。前走はエルムS2着だが、このレースの2、3着馬が好成績を残していることは表5の項でも述べた通り。また、斎藤新騎手が継続騎乗予定である点も好感が持てる。前走G3組ではほかに、前走6着以下ではあるが、激走傾向のある「斤量今回減」に当てはまるサンライズホープとゲンパチルシファーの実績馬2頭にも警戒しておきたい。
最後に3歳馬のセラフィックコールにも触れておく。集計対象の計9年で前走3勝クラスの好走は2着1回しかなく、データからは推奨しづらいのだが、4戦4勝の無敗馬であればデータを覆す可能性を考慮しておくべきだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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