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JRA-VANコラム

多種多様な馬が集まり、見どころが多い桜花賞を展望する

2020年4月9日 15:10配信
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2019/12/8 阪神11R 阪神ジュベナイルフィリーズ(G1) 1着 4番 レシステンシア

一昨年のアーモンドアイ、昨年のグランアレグリアと2年連続で休み明けの馬が勝っている桜花賞。今年もリアアメリアが阪神JF以来、サンクテュエールがシンザン記念以来での出走を予定しているが、先輩2頭に続くことはできるだろうか。とはいえ、2歳女王のレシステンシアやエルフィンSを圧勝したデアリングタクトなども黙ってはいないはず。そんな牝馬クラシックの第一弾を、過去10年のデータから占ってみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

表1は人気別成績。1番人気は過去10年で2勝、1~3着でも5頭と水準に満たない。むしろ2番人気のほうが好走率は高く、3番人気も複勝率で1番人気を上回っている。この表を見る限り、1~3番人気なら大きな差はないと考えたほうがいいかもしれない。続く4~8番人気も複勝率ベースでほぼ横一線の数値が出ており、このゾーンもほとんど互角。しかし、9番人気の好走はなく、10番人気以下も3着2回のみと、人気薄の食い込みは難しいようだ。

■表2 枠番別成績

表2は枠番別成績。4枠と5枠が各3勝を挙げ、好走率、回収率も高い。複勝率20.0%の6枠を含め、真ん中あたりの枠が好成績を収めていることがわかる。また、外の7、8枠からも計9頭が1~3着に入っており、年にほぼ1頭は馬券になる計算となる。ただし、7、8枠から馬券になった9頭中8頭は1~4番人気。外枠から好走するには相応の実力が必要で、それは回収率にも反映されている。一方、内の1、2枠は勝ち馬を出せず、好走率、回収率ともに苦しい数字が並んでいる。

■表3 敗戦数別成績

表3は桜花賞までに「何敗していたか」で分けたデータで、過去10年で無敗のまま桜花賞に出走した馬は9頭いたものの、勝った馬は1頭もいないのは驚く。さらに遡れば無敗の桜花賞馬は誕生しており(直近の例は04年のダンスインザムード)、決して不可能ではないはずだが、これは気になる傾向だ。なお、勝てなかったが2、3着は確保した4頭の無敗馬(14年レッドリヴェール、16年シンハライト、17年ソウルスターリング、18年ラッキーライラック)に共通するのは、同コースの阪神JFまたはチューリップ賞で1着の実績を持っていたことである。

無敗馬の1着がないことを除けば、基本的には敗戦数が少ない馬ほど高い好走率を記録している。好走例があるのは4敗までで、桜花賞までに5敗以上していた馬が3着以内に入ったケースは過去10年には存在しない。

■表4 芝1600m実績の有無

表4は、「芝1600m実績」の有無による成績の差を調べたデータ。ここで言う実績とは「1着、重賞2着以内、G1で3着以内」を指す。ご覧の通り、過去10年の1着馬には漏れなくこの実績があり、2着馬も9頭は該当と、連対するためには芝1600m実績を極力持っておきたい

■表5 芝レース上がり1位1着実績の有無

表5は、「芝で上がり1位を記録して1着」の実績の有無による成績の差を調べたデータ。こちらはより明確な違いが出ており、1、2着馬の計20頭はすべてが、3着馬も9頭がこの実績を持っていた。一方、実績なしで好走したのは10年3着のエーシンリターンズのみで、10年2番人気5着のアプリコットフィズ、13年1番人気4着のクロフネサプライズといった人気馬でも、馬券圏内までひと押しが足りなかった。

■表6 前走レース別成績

表6は前走レース別成績で、関西馬と関東馬を分けて示している。関西馬から見ていくと、中心となるのは本番と同コースのチューリップ賞組。勝ち馬が多く出ているだけでなく、複勝回収率が高いことから穴馬が2、3着に入るケースにも注意したい。一方、出走頭数でチューリップ賞を上回るフィリーズレビュー組は、43頭のうち好走したのは2頭しかいない。その2頭、16年3着アットザシーサイドと17年1着レーヌミノルはいずれも阪神JFで掲示板に載っており、阪神芝1600mへのメドをつけていた。ほかに勝ち馬を出しているのはエルフィンS組で、関東で行なわれるフラワーC(ただし11年は阪神開催)やクイーンCから臨んだ馬は2、3着までとなっている。

関東馬もチューリップ賞組が最多の好走4回を記録。なお、10年1着アパパネと13年1着アユサンの勝ち馬2頭について、チューリップ賞後は栗東トレセンに滞在して桜花賞に臨んだことを付記しておくべきだろう。また、18年1着のアーモンドアイは前走シンザン記念、19年1着のグランアレグリアは前走朝日杯FSからそれぞれ直行して制したが、これは遠征が必要な関東馬ゆえに効果的だった可能性もあるのかもしれない。ほかにクイーンC組では11年2着のホエールキャプチャ、フィリーズレビュー組では12年3着のアイムユアーズがそれぞれ唯一の好走馬。アイムユアーズも阪神JFで2着に入っているので、これは東西を問わずフィリーズレビュー組には欠かせない実績となっている。なお、関東のトライアルであるアネモネS組は東西合わせて20頭が出走も好走例はなく、表6の掲載外となった。

■表7 前走チューリップ賞出走馬・前走着順別成績

表7は、前走チューリップ賞出走馬について、関西馬と関東馬に分けて前走着順別成績を示したもの。このデータで気になるのは、チューリップ賞1着馬があまり桜花賞を勝っていないこと。過去10年、両方勝ったのは14年のハープスターしかおらず、2~4着の惜敗に終わるケースが目立っている。関西馬はチューリップ賞4着以内、関東馬は同3着以内なら十分チャンスありと考えたい。また、関西馬に限ってはチューリップ賞6着以下から巻き返した例が4頭あり、そのうち3頭はディープインパクトの産駒だった。

■表8 種牡馬別成績

表8は種牡馬別成績で、1着および複数の好走を記録した種牡馬のみ掲載している。過去10年で半分の5勝を記録したのがディープインパクトで、単複の回収率も90%台となかなかの水準にある。キングカメハメハも2勝しており、好走率はディープインパクトを上回るほど。ダイワメジャーの好走3回は7番人気、8番人気、14番人気とダークホースばかりとなっており、大駆けへの警戒が必要な種牡馬と言える。

■表9 2020年桜花賞登録馬

今年の桜花賞には表9の23頭が登録。加えて、今回のデータ分析から導き出した好走条件の合致具合と前走の結果を記している。なお、本稿執筆時点では優先出走権を持つ8頭に加え、収得賞金1100万円以上の10頭が出走可能で、残る5頭は除外の対象となっている。

過去2年の桜花賞馬と同様に休み明けで出走する馬から見ていこう。シンザン記念1着以来となるサンクテュエールは先輩2頭と同じ関東馬。リアアメリアは、1番人気6着と期待を裏切ってしまった阪神JF以来のローテで巻き返しを図る。両馬ともに父はディープインパクト。前者はシンザン記念、後者もアルテミスSという芝1600m重賞を上がり1位で制しており、きっちり仕上がっていれば戴冠の資格は備えていそうだ。

最有力トライアルであるチューリップ賞組では、1番人気3着のレシステンシアが捲土重来を狙っている。前走で初めて土がついたが、チューリップ賞組の関西馬は4着までなら大丈夫だし、無敗馬でなくなったことは桜花賞1着を狙ううえでは好材料になりうる。加えて、多少なりとも人気が落ちるのであれば、桜花賞で穴馬の好走が多いダイワメジャー産駒の傾向にも合う。こう考えると、前走の負けを本番で活かすことは十分に可能ではないか。

チューリップ賞1着のマルターズディオサは関東馬。過去10年に限らず、本番で勝ったことがないパターンではあるのだが、前走後も栗東トレセンに滞在しての調整が伝えられているのは前向きに考えられる材料だ。同2着のクラヴァシュドールは、チューリップ賞でちょっと負けた関西馬で、桜花賞で怖いタイプ。同6着のウーマンズハートと合わせて、このハーツクライ産駒2頭も虎視眈々と狙っている。

フィリーズレビュー組は阪神JFで掲示板に載っていたことが条件だった。今年該当するのは2着のヤマカツマーメイドで、阪神JFでは5着に入っている。いかんせん、すでに5敗を喫し、上がり1位1着の実績もない点は大きな減点材料になるが、可能性があるとすればこの馬ではないか。

クイーンCで1、2着に入ったミヤマザクラマジックキャッスルはいずれもディープインパクト産駒で、芝1600mと上がり1位1着の実績も満たす。そして最後に、エルフィンSを圧勝して2戦2勝のデアリングタクトにも触れておきたい。表3の項で述べたように、過去10年で無敗の桜花賞馬は誕生しておらず、2、3着に入った無敗馬4頭には阪神JFかチューリップ賞で1着の実績があった。しかし、この馬はこの条件を満たしておらず、今回のデータ分析では厳しめのジャッジを下さざるをえないだろう。

文:出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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