JRA-VANコラム
無敗の皐月賞馬の日本ダービー挑戦を考える
今週日曜日はいよいよ日本ダービー(東京優駿)が行われる。中央競馬を代表するビッグレースで、「競馬の祭典」とも呼ばれる大一番だ。依然として無観客でのレースを余儀なくされており、生で観戦できないのは本当に残念だが、今年も見どころはたくさんある。まずは無敗の皐月賞馬・コントレイルがどのようなレースをするかに注目が集まることだろう。おそらく今回も1番人気に支持される可能性が高い。日本ダービーも制し、春のクラシック2冠達成なるか。無敗での2冠達成となれば、競馬史に名を残す偉業となる。
今回はかつてコントレイルと同じように無敗で皐月賞を制し、日本ダービーに挑戦した馬たちを振り返ってみたい。その上で、コントレイルの春のクラシック2冠達成の可能性について考えてみることにする。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
まずはコントレイルと同じように、過去に無敗で皐月賞を制した馬を調べた。ただし、調査対象年はグレード制が導入された1984年以降とした。表1は無敗の皐月賞馬と、彼らの日本ダービーでの成績だ。
グレード制が導入された1984年にいきなりシンボリルドルフがデビューから6連勝で春のクラシック2冠を達成した。同馬を皮切りにミホシンザン(85年)、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、アグネスタキオン(01年)、ディープインパクト(05年)、サートゥルナーリア(19年)、そしてコントレイル(20年)と、8頭の馬が無敗で皐月賞を制した。1984~2020年までの37年間で8頭誕生しているので、単純に割ると約4.6年に1回の割合で無敗の皐月賞馬が出現していることになる。ただ、実際には2年続けて(84・85年、91・92年、19・20年)出現するケースが目立っている。
あらためて無敗で皐月賞を制した馬たちを見ると、競馬史に残る名馬ばかりだ。日本ダービーも優勝したのはシンボリルドルフ、トウカイテイオー、ミホノブルボン、ディープインパクトの4頭。ありきたりで簡単な言葉だが、とにかく強かった。ただ、その他の馬も相当な実力があった。ミホシンザンとアグネスタキオンは故障に泣いたが、前者は後に菊花賞や天皇賞(春)を制したし、後者はデビュー2戦目のラジオたんぱ杯3歳Sで、後のダービー馬・ジャングルポケットを2着に下してレコードで優勝していた。もし無事であればダービーも勝っていて不思議はなかった。
つまり、無敗で皐月賞を勝てるような馬は、間違いなく圧倒的な力を持っていると言える。皐月賞から400m距離が延びても心配はいらない。無事に日本ダービーに出走できれば、勝利できる確率は高いと考えるのが普通だ。それだけに昨年のサートゥルナーリアの結果(4着)は意外なものになった。果たしてコントレイルにはどのような結果が待っているだろうか。
続いて、無敗かどうかにこだわらず、春のクラシックで2冠(皐月賞と日本ダービー)を達成した馬たちを調べてみることにした(表2参照)。先ほどと同じように1984年以降では、シンボリルドルフ(84年)、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、ナリタブライアン(94年)、サニーブライアン(97年)、ネオユニヴァース(03年)、ディープインパクト(05年)、メイショウサムソン(06年)、オルフェーヴル(11年)、ドゥラメンテ(15年)と10頭が達成した。シンボリルドルフとディープインパクトは無敗のまま3冠馬となり、ナリタブライアンとオルフェーヴルもクラシック3冠を達成。こちらも素晴らしい馬たちが名を連ねている。
父親に注目すると、シンボリルドルフとトウカイテイオーは親子で達成したことになる。コントレイルの父はディープインパクトなので、今年も親子による春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)制覇という記録がかかっている。これまでディープインパクト産駒は皐月賞も日本ダービーも勝っているが、両方を勝った馬はまだ出ていない。なお、ブライアンズタイム(ナリタブライアン、サニーブライアン)とサンデーサイレンス(ネオユニヴァース、ディープインパクト)は春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)馬を2頭も出している。
最後に表2で記した春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)馬の日本ダービーでの単勝オッズ、および2・3着馬について調べた(表3参照)。10頭中9頭が日本ダービーで1番人気に支持されていて、その内5頭が単勝1倍台の圧倒的人気だった。皐月賞で見せたパフォーマンスがオッズにも相当影響を与えるので、基本的にはかなり人気を集める場合が多い。しかし、11年のオルフェーヴルは1番人気ながら単勝は3.0倍もついた。この年は皐月賞も東京競馬場(芝2000m)で行われて、そのレースを3馬身差で圧勝していた。それでもダービーで圧倒的人気にならなかったのは、今となっては意外な感じがする。
サニーブライアンが勝利した97年のレースも印象深い。他の馬が1番人気で優勝しているなか、同馬は単勝13.6倍の6番人気だった。この年だけ異質に見えることだろう。だが、その前の皐月賞ではもっと軽視されていて、11番人気だった。皐月賞はノーマークでの逃げ切り勝ちという結果となり、素直に実力を評価しづらい面があった。日本ダービーでは人気は上がったものの、依然として半信半疑という見方をするファンが多かった。しかし、東京芝2400mのダービーでも再び逃げ切りを果たし、堂々と2冠を達成。低評価を覆す走りを続けて、本当の実力を証明してみせた。異例ではあったが、今後見られるかわからないような貴重なケースだったように思う。
最後にダービーでの2着馬を調べると、意外な人気薄の活躍も目立つ。84年2着のスズマッハは21頭立ての20番人気だった。92年のレースからフルゲートは18頭となり現在に至るが、同年は16番人気のライスシャワーが2着に入った。また、11年は10番人気のウインバリアシオンが2着に好走した。それ以外の年は2~5番人気の馬が2着に入っている。つまり、6~9番人気は1頭も2着に入っていない。その分、3着が多いという傾向が出ている。仮に今年はコントレイルが優勝すると予想する場合、2着には2~5番人気もしくは10番人気以下の馬がくると想定してみるのも面白い。
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