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JRA-VANコラム

芝1600m適性がますます重要になってきた朝日杯FSを読み解く

2020年12月17日 11:40配信
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今週末も阪神芝1600mで2歳G1が行なわれる。朝日杯フューチュリティS (以下、朝日杯FS)は近年、勝ち馬だけでなく2着以下からものちのG1馬が多く出ており、先々という意味でも楽しみな一戦だ。今年も将来性あふれる18頭がエントリーした一戦を、阪神開催となった14年以降のデータを元に展望したい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

表1は人気別成績。ひと目でわかるのが1、2番人気の好成績で、単複の回収率も100%以上を記録している。なお、1番人気のうち16年4着のミスエルテ、18年3着のグランアレグリアは牝馬なので、阪神開催になってから牡馬の1番人気はオール連対ということになる。この通り、本命・対抗級の馬がしっかり結果を出している朝日杯FSだが、過去6年で10番人気以下が4頭好走と、けっこうな割合で人気薄が馬券になっているのも特徴だ。そして、この4頭には関西馬という共通項がある。

■表2 枠番別成績

表2は枠番別成績。複勝率ベースの数値で比較すると、6~8枠の数値がやや低い。8枠も2勝しているように致命的とまでは言えないが、外枠は若干不利なようだ。

■表3 キャリア別成績

表3はキャリア別成績。主流となっているのはキャリア2~4戦で、そのうちキャリア2戦と同3戦が各2勝をマーク。一方、キャリア4戦は【1.1.4.20】と好走はするものの、連対には至らないケースが多くなっている。そして、キャリア5戦以上は好走例がない。なお、キャリア1戦での好走は15年1着のリオンディーズである。

■表4 前走距離別成績(芝のみ)

表4は前走距離別成績で、前走の対象は芝のみとした。阪神芝1600mでの開催となった14年以降、1着馬6頭中5頭、1~3着馬18頭中11頭が、前走でも同じ芝1600mを走っていた。対して、前走芝1600m以外で勝ったのは15年のリオンディーズが唯一で、前項と同様にこのデータでも特異な存在となっている。なお、前走でダートを走っていた9頭は、その距離を問わず好走例がない。

■表5 前走レース別成績

表5は前走レース別成績で、朝日杯FSで好走例のあるレースのみ掲載した。最多の好走馬5頭を送り出しているのがサウジアラビアRCで、17年のダノンプレミアムと19年のサリオスが勝利。ベゴニア賞からも14年のダノンプラチナ、16年のサトノアレスが勝っており、東京芝1600mとの直結度はかなりのものだ。また、西の芝1600m重賞であるデイリー杯2歳Sからも好走馬4頭が出ている。東のサウジアラビアRCと比べて好走率は半減といったところだが、今年は朝日杯FSと同じ阪神芝1600mで開催されただけに、例年以上に注目すべきかもしれない。芝マイル以外のレースでは、東京芝1400mの京王杯2歳Sが2、3着馬を2頭ずつ出している。

■表6 芝1600m実績に関するデータ

表4、表5の項で、前走で芝1600mを走っていた馬の好走が多いことを確認した。そこで、芝1600mに関するデータをさらに調べてみたい。まずは芝1600mの勝利数別成績で、ご覧の通り、芝マイルの勝利数が多い馬ほど高い好走率を記録している。過去6年で唯一の芝マイル3勝馬だった18年のアドマイヤマーズは2馬身差の快勝を飾り、芝マイル2勝馬も2勝、複勝率50.0%と高確率で馬券圏内を確保している。

また、勝ち方についても調べてみたところ、「芝マイルで0秒3差以上1着」の実績を持つ馬が4勝を挙げ、好走率も非常に高いことがわかった。もうひとつ、「芝マイルで上がり1位1着」の実績を持つ馬も3勝、単勝回収率109%と侮りがたい成績だ。

一方、芝マイルに出走歴がありながら未勝利だった馬は苦戦。ただ、傾向を覆して好走した14年2着のアルマワイオリ、16年3着のボンセルヴィーソの2頭がどちらも10番人気以下だったこともあり、複勝回収率は100%を超えている。この2頭には「キャリア4戦」「デイリー杯2歳Sで掲示板」「関西馬」という共通項があり、朝日杯FSの激走パターンと言えるかもしれない。

芝マイル戦に出走歴がなかった馬で勝ったのは15年のリオンディーズのみ。ただ、好走率は決して高くないものの、2、3着に入った馬は計6頭おり、好走例は決して少なくない。この6頭のうち4頭は京王杯2歳Sを経由しており、そこで1着だった馬が3頭、3着だった馬が1頭という内訳。加えて、この4頭は京王杯2歳S以前にもオープン1着か重賞2着に入った実績を持っていた。

【結論】

阪神に移転した14年以降のデータを元に朝日杯FSの傾向を分析してきたが、表4~6の項で見たように、好走するためには芝1600m実績が重要となる。14年といえばホープフルS(中山芝2000m)がG2になった年。17年からはG1に昇格し、中距離向きの馬はそちらに向かうようになっている。そのぶん朝日杯FSでは、より高いマイル適性が求められるようになってきたのかもしれない。

実際、今年も芝1600mで結果を残してきた馬が多く登録。芝マイル3勝馬はいないが、2勝馬はステラヴェローチェ、レッドベルオーブ、ショックアクション、ホウオウアマゾンと4頭いる。しかも、この4頭は「芝マイルで0秒3差以上1着」と「芝マイルで上がり1位1着」の実績も備えている。いずれも甲乙つけがたいが、それでも順位をつけるとすれば、前走デイリー杯2歳S1着かつキャリア3戦のレッドベルオーブが一歩リードか。

もちろん、前走サウジアラビアRC1着かつキャリア2戦のステラヴェローチェも有力だが、良馬場を走ったことがない点は気になるところ。また、新潟2歳S1着以来となるショックアクションはローテーションの克服が必要で、ホウオウアマゾンは3着が多いキャリア4戦の傾向を覆さなければならない。

そのほか、京王杯2歳S組では1着のモントライゼ。重賞の小倉2歳S2着もあり、この組の好走条件を満たしている。あとは、芝マイル未勝利ながら、表6の項で述べた人気薄の激走条件「キャリア4戦」「デイリー杯2歳Sで掲示板」「関西馬」に当てはまるカイザーノヴァを最後に挙げておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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