JRA-VANコラム
今年のプロキオンSの舞台となる小倉ダート1700mを分析
京都競馬場の改修に伴う変則日程のため、プロキオンSは今年も中京ダート1400mを離れて行なわれる。昨年は阪神ダート1400mで開催され、これは2010年までの条件に戻ったと考えることもできた。ところが今年の小倉ダート1700mは、JRA-VAN DataLab.で調べられる1986年以降、プロキオンSに限らず重賞が行なわれたことのないコースとなる。なかなか難しい状況ではあるのだが、こういうときは基本に忠実に、まずは舞台設定を知っておくことが重要になるだろう。そこで今回は小倉ダート1700mの傾向を、さまざまな角度から調査してみたい。集計期間は過去3年(18年7月28日~21年3月7日)。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は「牡牝別」と「東西の所属別」の成績。まず牡牝の比較では、牡馬(セン馬を含む)の好走率が上。といっても、一般的な牡牝の差と言っていいレベルだから、性別による有利不利はほぼないと考えていいだろう。一方、東西の差は明らかで、関西馬がだいぶ優勢だ。より詳細に言えば、関東馬の出走は大半が冬開催のもので、夏開催に限ると【0.0.0.12】という成績。夏の小倉ダート1700mに関東馬はほとんど遠征しないし、出てきても好走なしという結果に終わっている。
表2は人気別成績。目を引くのは2番人気の好成績で、1番人気にも迫る好走率を記録し、単複の回収率も高い。この2番人気の強さに割りを食っているのか、1番人気の好走率は水準を少し下回っている。3番人気以下に関しては特筆するほどの傾向は見られず、2番人気が強いコースというのが小倉ダート1700mの特徴とみたい。
表3は馬番別成績。なお、小倉ダート1700mはフルゲート16頭立てで、これはダート1700mの設定がある4場では唯一かつ最多頭数となっている。好走率、回収率ともに優秀な馬番として挙げられるのが1番枠と3番枠。また、その間の2番枠も単複80%台の回収率を残している。4~6番枠の成績はそれほどでもないため内枠有利とまでは断言しづらい部分もあるが、少なくとも1~3番枠は狙ってみる価値がありそうだ。一方、12番枠から外は好走率がダウン。特に15番枠や16番枠は厳しめの数値が並んでおり、外枠は不利と判断してもいいかもしれない。
表4は脚質別成績。その傾向は一目瞭然で、「逃げ」または「先行」が有利と言える。そして、勝率では「逃げ」、連対率と複勝率では「先行」の数値が高く、馬単や3連単で狙う際には参考にしたい。また、数は少ないが、道中でポジションを大きく上げる「マクリ」の成績も優秀だ。
表5は、前走と比べて距離が「延長」「同じ」「短縮」となった馬の成績を比較したもの。なお、前走はダートのみを集計対象とした。手堅いのは「同距離」。ダート1700mがあるのは小倉および福島、札幌、函館の4場で、いずれもローカルに分類される。そして、この4場のダート1700mには、コーナーは4回、最後の直線は300m未満という共通項がある。そう考えると、前走でも似た条件を走っていることが有利に働いているのかもしれない。
「今回延長」と「今回短縮」の比較では後者のほうが上。というより、「今回延長」の成績が振るわない、と言うべきかもしれない。「今回延長」の場合、前走ではダート1600m以下の距離を走っていたことになるが、該当するのはすべてコーナー2回のコース(地方は除く)となり、小倉ダート1700mとの共通点があまりない。対して「今回短縮」のケースでは前走でコーナー4回(以上)を経験しており、その差が表れているようにも思われる。
表6は前走コース別成績(着別度数順)。圧倒的に出走例が多いのは同コースの小倉ダート1700mで、際立って好成績というほどではないものの安定感はある。ただ、1着より2着、2着より3着が多い傾向が見られる点には注意したい。好相性のコースとして挙げたいのは福島ダート1700m。特に勝率、単勝回収率が高く、馬単や3連単を好む方には狙い目となるかもしれない。また、阪神ダート1400mは要注意。前項で距離延長は振るわないと述べた通り、この前走コースも複勝率20%に満たず、全体としてよく走っているとは言えない。ただ、該当する14勝中9勝が5~9番人気とダークホースの1着が多く、勝率10.7%、単勝回収率144%という数字が残っているからだ。また、京都ダート1400mも単勝回収率136%を記録しており、こちらも単穴に気をつけたい。
今年のプロキオンS出走登録馬では、アードラーとペプチドバンブーが前走阪神ダート1400m。ともに前走では掲示板を外しているが、穴が多い前走コースだけにマークはしておきたい。
表7は騎手別成績。ここでは夏開催のみを対象に、着別度数順1~5位および6位以下から好成績の騎手5人を掲載した。最多勝は松山弘平騎手で、2位以下を突き放す12勝をマーク。オープンの阿蘇Sでは3年連続4着という惜しい成績だが、3勝クラスで6戦2勝と上級戦でも結果を出している。2位の川田将雅騎手は傑出した好走率を記録。騎乗馬は1~3番人気のみという豪華な布陣ではあるのだが、単複の回収率が高く、無理に嫌う必要はないだろう。また、川田騎手を含め、浜中俊騎手、鮫島克駿騎手、鮫島良太騎手と、九州出身のジョッキーが100%以上の回収率を記録していることにも触れておきたい。
表8は厩舎別成績。着別度数順1~5位および6位以下から好成績の5厩舎を掲載した。なお、2位の石坂正厩舎は今年2月をもって解散したため、6位の佐々木晶三厩舎を繰り上げて掲載している。掲載した計10厩舎はいずれ劣らぬ好成績で、プロキオンSに限らず出走馬がいれば注目したい。今年のプロキオンS出走登録馬では、トップウイナーが鈴木孝志厩舎、スマートセラヴィーが矢作芳人厩舎、ダノンスプレンダーとメイショウウズマサが安田隆行厩舎、ウェスタールンドが佐々木晶三厩舎にそれぞれ所属している。
表9は種牡馬別成績。着別度数順1~5位および6位以下から好成績の種牡馬5頭を掲載した。トップのオルフェーヴルには意外な印象もあるが、その成績は非常に優秀。プロキオンSに産駒の登録はないが、オープンで2戦2連対など、このコースで結果を出している。同じく三冠馬では8位のディープインパクトもなかなかの数字を残しており、こちらは1勝クラスを中心に要注目。ほかにサンデーサイレンス系種牡馬では、直仔のゴールドアリュール、ネオユニヴァース、孫のスマートファルコンも好成績だ。そのほかの系統では、4位のパイロと13位のシニスターミニスターがA.P. Indyの直系。表には掲載していないが、この系統では18位のカジノドライヴが単勝回収率366%、26位のマジェスティックウォリアーも複勝回収率120%となっており、好相性の系統と言えそうだ。
2020/4/19 阪神11R アンタレスステークス(G3) 1着 8番 ウェスタールンド
今年のプロキオンS出走登録馬では、アードラーとタイガーインディがシニスターミニスター、メイショウカズサがカジノドライヴ、ケイアイパープルがパイロ、サンライズホープがマジェスティックウォリアー、タイサイがスマートファルコン、ウェスタールンドがネオユニヴァースをそれぞれ父に持っている。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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