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JRA-VANコラム

巻き返しのパターンが見えた!? 波乱も多い七夕賞を展望する

2021年7月8日 16:00配信
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夏の福島の代名詞的存在と言えるG3・七夕賞。ハンデ戦ということもあって荒れるレースとしてもおなじみだが、今年はどのような決着が待っているのだろうか。データの集計期間は過去10年分としたいところだが、2011年が中山開催となったため、福島で行なわれた2012~2020年の9年分を対象とする。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 牡牝および所属別成績

※表1は牡牝別と東西の所属別の成績を示したもの。まず、過去9年の好走はすべて牡馬(セン馬を含む)が記録。牝馬は出走自体が少ないとはいえ、偏った結果が出ている。また、出走回数が68走で並ぶ関東馬と関西馬の比較は、前者が1~3着を4回ずつ、後者は1~3着を5回ずつ記録しており、関西馬が若干優勢となっている。

■表2 ハンデ別成績(牡馬・セン馬のみ)

表2はハンデ別成績。今回の集計期間では牝馬の好走がなかったため、牡馬・セン馬のみのデータを掲載している。1着馬の傾向から見ていくと、9勝中6勝を57キロ以上の馬が挙げており、重めのハンデを背負った馬が勝つケースが多いようだ。残りの1着馬は54、55、56キロから1頭ずつ。そして、軽ハンデの53キロ以下で連対した馬はいないものの、3着に入った4頭の内訳は7、11、12、16番人気で、人気薄が多いことに注意したい。

■表3 人気別成績(牡馬・セン馬)

表3は牡馬・セン馬に限った人気別成績で、「ハンデ57キロ以上」と「ハンデ56.5キロ以下」に分けて示している。

ハンデ57キロ以上で好走した馬は延べ11頭おり、うち8頭は1~3番人気に推されていた。ここに限ると【6.1.1.4】、勝率50.0%、複勝率66.7%、単勝回収率278%、複勝回収率141%と有望な数字が残っており、57キロ以上を背負った1着馬6頭もすべて含まれている。

ところが、ハンデが56.5キロ以下になると傾向が激変する。1~3番人気は【0.1.0.13】と大苦戦で、続く4~6番人気も【1.1.1.13】と振るわない。この1~6番人気を合算した成績を出しておくと、【1.2.1.26】、勝率3.3%、複勝率13.3%、単勝回収率40%、複勝回収率41%。対して7番人気以下でも【2.3.7.52】、勝率3.1%、複勝率18.8%、単勝回収率242%、複勝回収率215%と好走率は変わらず、回収率は明らかに有利だ。ハンデ56.5キロ以下の馬に関しては、穴馬の激走に気をつけたい

■表4 前走クラス別成績

表4は前走クラス別成績。2勝クラスからG1まで多彩な臨戦となっているが、前走の格は必ずしも好走率に直結していない様子が見て取れる。複勝率ベースで比較すると、重賞よりオープン特別、3勝クラスのほうが数値は高く、2勝クラスから臨んだ1頭も3着に好走。回収率も非常に高い。もちろん、前走重賞出走馬も1着7回、1~3着計14回と無視はできないが、妙味という点ではオープン特別組や条件戦組が一枚上とみていいだろう。

■表5 前走着順別成績

表5は前走着順別成績。前走1着、2着、4着が複勝率30%以上を記録しているように、全体的な傾向としては前走着順がよい馬が好走しやすい。ただ、1着が獲れるかという点では当てはまらず、1着馬9頭中6頭は前走で6着以下に敗れていた馬だった。言い換えると、軸馬探しには前走着順を参考にしやすいが、勝ち馬探しにはより広い視野が必要になりそうだ。

■表6 前走競馬場別成績

まず前走1~3着馬から。前走でも同じ福島で好走していた馬は複勝率44.4%で、やはりさすがに好成績を収めている。また、中山の当該例は1頭のみだが、そのゼーヴィントが17年に1着。福島と中山はどちらも最後の直線が短い競馬場で、好走が直結しやすい様子が見て取れる。逆に直線の長い競馬場はどうかといえば、前走東京は【0.0.2.7】と連対例なし。また、前走新潟の4頭はすべて日本最長の直線を有する外回りを走り、4頭とも七夕賞では1~3番人気に推されていたのだが、【0.0.0.4】と期待を裏切る結果に終わっている。

一方、前走4着以下からの巻き返しが多い競馬場として挙げられるのは、勝ち馬を3頭ずつ送り出している東京と阪神。出走例も多く、好走率自体が高いわけではないが、どちらも回収率は非常に高い。また、4頭に1頭以上の確率で巻き返している新潟や福島も軽視はできない。

■表7 前走距離別成績

表7は前走距離別成績。なお、距離を問わず前走ダートは別途、一番下にまとめて掲載した。注目は400m延長となる1600mで、12年に14番人気1着のアスカクリチャン、13年に14番人気3着のタガノエルシコ、18年に11番人気1着のメドウラークと大穴馬ばかりが3頭激走を果たしている。なお、前走ダートは複勝率60.0%と驚きの好成績。今年の出走登録馬に該当馬はいないが、来年以降は気をつけたいところだ。

【結論】

以上の分析をもとに、今年の七夕賞の出走登録馬17頭から有望なデータに合致する馬を紹介していきたい。ただ、17頭のうち前走1~3着馬は3頭と少なめ。その3頭の前走競馬場を確認すると中京が2頭、阪神が1頭で、好走が直結しやすい福島・中山ではなかった。

そこで前走4着以下馬に目をつけると、まず浮かび上がってくるのが前走東京かつ1600mのトーラスジェミニ。ハンデは57キロだから、3番人気以内に支持されると有力であることをデータは示す。同じくワーケアも前走東京かつ1600m。近3走は案外な結果に終わっているものの、昨年の日本ダービーでも人気の一角を占めた素質馬としては、そろそろ復活の狼煙をあげたいところだろう。

前走阪神も巻き返しの例が多い。昨年の勝ち馬クレッシェンドラヴは近3走G1に挑戦して結果にはつながらなかったものの、ここはコース適性を活かして挽回を目指したい。トップハンデ58キロは楽ではないように見えるが、データとしては複勝率50.0%で決して悪くない。また、前走阪神ではスカーフェイスも侮れない。2勝クラスを勝っての重賞挑戦で巻き返しのパターンではないが、前走1600m、前走条件戦と好走率の高い条件に該当する。

前走新潟も巻き返しが期待できるコース。今年登録がある3頭中2頭は過去9年で好走がない牝馬なので、必然的に残るのはヴァンケドミンゴということになる。【4.1.1.0】と大得意の福島に戻る昨年の3着馬にも注目したい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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