JRA-VANコラム
新馬勝ちは必須条件? 2歳・3歳G1を制した馬のデビュー戦は?
今年の2歳戦開幕から約2カ月。これまで新馬戦では65頭が勝利を挙げ、初戦で敗れた馬も未勝利戦で30頭が勝ち上がっている(8月1日現在)。近年の超一流馬では、2018年と2020年の年度代表馬・アーモンドアイが初戦で2着に敗れていたが、他の多くのG1馬はデビュー戦でどんな結果を残していたのだろうか。今回は2歳限定G1と3歳限定G1の優勝馬にかぎって、そのデビュー戦での成績を調べてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、2011年以降の2歳・3歳G1優勝馬を対象とした。
表1は、集計対象となる78頭のデビュー戦での成績を調べたものである。まず3歳5月の未勝利戦デビューで10着に敗れたトーホウジャッカル(2014年菊花賞1着)は例外中の例外で、他の77頭は新馬戦でデビューしていた。このうち、2020年の三冠馬・コントレイルなど約4分の3にあたる57頭は新馬戦で勝利を挙げている。ただ前述のアーモンドアイのほか、2012年の牝馬三冠馬・ジェンティルドンナや、2015年のクラシック二冠馬・ドゥラメンテと、後に世代の主役を担うような馬が新馬戦では2着に敗れていた例もある。3着以下では苦しくなるが、2着さえ確保していればまだまだ2歳・3歳G1を制するチャンスは十分にありそうな印象があった。
しかし近年は、そんな印象通りの結果にはなっていない、というのが表2である。集計対象78頭のうち2008年~2015年生まれの58頭をみると、新馬戦を勝っていたのは全体の3分の2程度だった。ところが2016年~2018年生まれになると、該当馬20頭のうち18頭は新馬戦で1着。新馬戦2着はわずか1割の2頭で、新馬戦3着以下や未勝利戦デビューの馬はゼロ。2歳・3歳限定G1を勝つためには、新馬戦1着がほぼ必須になっているのが近年の傾向だ。
表3はその2016年~2018年生まれ、つまり現3歳~5歳世代の20頭。このうち、新馬戦で敗れていた2頭は2018年の阪神JFを制したダノンファンタジー、そして2020年の朝日杯FS優勝馬・グレナディアガーズと、ともに2歳G1を制した馬だった。2歳G1制覇なら新馬戦2着でも可能性あり、3歳G1制覇には新馬戦1着が必須。これを聞けば「逆ではないか?」と思ってしまいそうだが、そんな結果が出ているのが近年の2歳・3歳G1戦線だ。
以上、2歳・3歳限定G1を制した馬のデビュー戦について調べてみた。まだアーモンドアイ(新馬戦2着)の引退から1年も経っていないだけに、気になる馬のデビュー戦を見て「新馬戦2着ならひとまず合格点」と思う方も少なくないだろう。しかしここにきて傾向が変わってきているため、これまで以上に力を入れて新馬戦の走りを見守りたいところだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。