JRA-VANコラム
今年も超豪華メンバーが集結! 天皇賞・秋を展望する
三冠馬コントレイル、3階級制覇を目指すグランアレグリア、長距離G1を2勝したワールドプレミア、古馬に挑む皐月賞馬エフフォーリアなど、今年も豪華なメンバーが揃った天皇賞・秋。現代競馬で重視される芝2000mの大一番を、過去10年のデータから展望していきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。1番人気は過去10年で5勝を挙げ、複勝率80.0%と好成績を収めている。88年から99年にかけて1番人気が12連敗したこともあるレースだが、現在は本命馬が強いG1となっている。2番人気も複勝率60.0%としっかり好走。3、4番人気はやや振るわないものの、5番人気は3勝、6番人気も複勝率50.0%、7番人気も2頭が連対を果たしており、このあたりの中穴級にも注意したい。これより人気のない馬は苦戦が否めず、激走はあまり期待できないようだ。
表2は枠番別成績。舞台となる東京芝2000mは、スタート直後にカーブが設けられている関係で外枠が不利とされる。表2の成績を見る限り、天皇賞・秋でも事情は変わらないようで、過去10年で8枠から連対した馬は見当たらない。また、隣の7枠の好走率は決して悪くないものの、1着となると20年のアーモンドアイだけ。同馬は単勝1.4倍の圧倒的な支持を集めていたことを考慮すると、7枠から勝ち切るのも容易ではなさそうだ。かといって内枠の好走率もあまりよくない。狙いやすそうなのは過去10年で4勝の4枠や単勝回収率262%の6枠で、真ん中から少し外ぐらいの枠が好成績を収めている。
表3は、牡牝別と年齢別の成績をまとめたもの。単純に牡馬(セン馬を含む)と牝馬の好走率を比べると牝馬のほうが圧倒的に高い。とはいえ、アーモンドアイが2勝、ジェンティルドンナが2着2回、クロノジェネシスとアエロリットが3着1回ずつと、好走したのはいずれ劣らぬ名牝ばかり。この4頭はすべて牡馬混合G1を勝っており、これが牝馬の好走条件となるか。
年齢別では5歳が7勝、4歳が3勝で、過去10年では3歳の勝ち馬は出ていない。また、6歳は30頭走って3着1回と苦しく、7歳以上の好走例はない。4、5歳が中心となり、古馬に挑む3歳がどこまでやれるか、というのが天皇賞・秋の構図となっている。
表4は前走レース別成績。G1から見ていくと、相性がいいのは前走安田記念で、出走した延べ8頭中4頭が連対を果たしている。前走宝塚記念は2番目に多い延べ7頭が好走を果たしているが、勝ったのは17年のキタサンブラックだけで2、3着が多い。前走天皇賞・春は1200mもの大幅な距離短縮となるが、複勝率33.3%となかなかの好成績で侮れない。
G2では、出走例、好走例ともに最多の毎日王冠が最重要の前哨戦で、この組に関しては後述する表6の項で改めてデータを確認したい。前走札幌記念は、そこで2着以内に入っていれば【2.1.0.4】と怖い存在になる。前走オールカマーは18年にレイデオロ、前走京都大賞典は15年にラブリーデイがそれぞれ勝っているが、ともにこれが唯一の好走例。どちらもあまり直結しないようだ。なお、セントライト記念は2頭がいずれも好走した注目の前走だが、今年の登録16頭に該当する馬はいない。
表5は前走G1出走馬について、そのG1の人気別と着順別の成績をまとめたもの。どちらの相関関係が強いかといえば、人気であることは明らかだ。前走G1出走馬で1着があるのは、前走で1番人気に押されていた馬だけ。2番人気だった馬の好走率も非常に高く、合わせて前走G1で1、2番人気ならかなり有望とみなせるだろう。以下、連対例があるのは3番人気までで、4番人気以下だった場合は3着までという傾向が見て取れる。
表6は前走毎日王冠出走馬について、前走の人気別・着順別・4角通過順別・上がり順位別の成績をまとめたもの。前走人気にさほどの相関関係は見られず、9番人気までに収まっていればいいかなというところ。着順は5着までには入っておきたいが、6~9着から巻き返した例もあり、10着以下でなければ注意を払っておきたい。前走4角通過順は「1~4番手」と「5番手以降」に分けているが、連対例があるのは5番手以降のほうだけ。1~4番手だった馬は3着までで、毎日王冠では差す競馬をしておいたほうがいいようだ。前走上がりは1~3位の脚を使っておきたいところで、4位以下だと好走の確率が下がる。
表7は、出走時点における芝2000mの複勝率別成績。100%だった馬の好走率が高い一方で、75%以上100%未満でも数値が大きくダウン。75%未満になるとさらに下がってしまい、芝2000m未出走だった馬の好走例はない。天皇賞・秋は芝2000mの日本最高峰ともいえるレースだけあって、求められる水準は非常に高いようだ。
【結論】
今年の天皇賞・秋に登録があるのは16頭で、フルゲート18頭に満たないため全馬が出走可能となる。ここまで述べてきたデータと照らし合わせて、有望と思われる馬を紹介したい。
まずは前走G1出走馬から。該当するのはコントレイル、グランアレグリア、ワールドプレミア、エフフォーリアのG1馬4頭と、G1好走の常連であるカレンブーケドールの計5頭という豪華すぎる顔ぶれが並ぶ。
表5の通り、前走のG1で1、2番人気に推されていた馬の好走率が高く、該当するのはコントレイル、グランアレグリア、エフフォーリアの3頭(順に大阪杯、安田記念、ダービーで1番人気)。このうち、コントレイルとエフフォーリアの2頭は芝2000mで複勝率100%と距離実績も十分。年齢的には4歳のコントレイルのほうが有望かもしれないが、3歳のエフフォーリアも黙ってはいないだろう。
一方、グランアレグリアは芝2000m初出走となった今年の大阪杯で4着に敗退。かなりの道悪だったため情状酌量の余地は大いにあるが、データ上は複勝率75%未満に該当する。やはりここでも距離の克服が最大のテーマとなりそうだ。
ワールドプレミアとカレンブーケドールはいずれも5歳で、前走のG1で3番人気だったことでも共通する。ワールドプレミアは3000m級のG1を2勝しているが、芝2000mの2戦でも2、3着に入って複勝率100%。天皇賞・春以来の臨戦馬はなかなかの結果を出しており、チャンスは十分あるのではないか。カレンブーケドールも芝2000mで複勝率100%。ただし、牝馬の好走条件である牡馬混合G1勝利は、G1未勝利のこの馬には満たすことができない。データを覆し、ここで悲願のG1制覇はなるか。
前走G2出走馬は、毎日王冠組の5頭から見ていくのが妥当だ。毎日王冠では人気、着順ともにシングルには収まっておきたいところで、これを満たすのは4番人気3着のポタジェと9番人気6着のサンレイポケットの2頭。ただし、サンレイポケットは6歳の年齢が引っかかり、狙うとすれば4歳のポタジェか。毎日王冠の4角通過順が4番手で、できれば5番手以降のほうがベターだったが、芝2000mで9戦して複勝率100%の距離実績は侮れない。
札幌記念組も2頭いるが、そこでどちらも連対には至らず。であれば、4連勝で制した中山記念以来となるヒシイグアスか。こちらも芝2000mで3戦3勝と距離適性が高く、強豪たちを一挙に撃破したいところだ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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