JRA-VANコラム
リステッド競走優勝馬はハイレベル!?
先週日曜には東京競馬場でG1・天皇賞(秋)が行われたが、同日の阪神ではカシオペアS、オータムリーフSと珍しくオープン特別が1日に2競走組まれていた。このうちカシオペアSは2019年より新たな格付けとして導入された「リステッド競走」で、同じ年齢条件・コース(芝ダート別)であればリステッド競走のほうが他のオープン特別(以下「非L競走」とする)より高い賞金額が設定されている。先週の例ではリステッド競走のカシオペアS(芝)は1着賞金2600万円、非L競走のオータムリーフS(ダート)は同2200万円。レースレベルもリステッド競走のほうが高い印象だ。
そこで今回は、リステッド競走優勝馬がその後どんな活躍を見せているのかを、非L競走と比較しつつみていきたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。また、2歳のオープン特別はリステッド競走の設定が少なく、3歳戦は逆にリステッド競走ばかりのため、集計対象は2019年以降本年10月24日までの3・4歳以上の平地競走とした(次走以降の集計期間も同様)。
※リステッド競走を2勝以上した馬は、1勝目の次走以降のみを集計
まず表1はリステッド競走優勝馬の次走以降のクラス別成績。2勝以上馬は1勝目の次走以降のみを対象とし、2勝目以降の重複カウントは行っていない(表2も同様)。表にあるとおり非L競走に出走した際の成績が非常に良く、勝率18.1%、複勝率37.2%と安定している上、単複の回収率も100%を超えている。また、ふたたびリステッド競走に出走したときの成績も上々だ。
※非L競走を2勝以上した馬は、1勝目の次走以降のみを集計
一方、表2は非L競走優勝馬の次走以降のクラス別成績。表1との違いは明らかで、リステッド競走優勝馬に比べ、非L競走出走時、リステッド競走出走時とも好走確率は低い。オープン特別に出走しているかぎりは、やはりリステッド競走優勝馬のほうが非L競走優勝馬より信頼性は高いと言えるだろう。
ただ、ここで「オープン特別に出走しているかぎり」としたのは、重賞競走が舞台になると両者の関係が逆転しているためだ。G3への出走数はリステッド競走優勝馬のほうが多いにもかかわらず、勝利数は非L競走優勝馬が多いなど、重賞での好走確率は全体的に非L競走優勝馬のほうが高い傾向にある。また、リステッド競走優勝馬からは後のJRA・G1馬が出ていない一方、非L競走優勝馬は2020年にモズスーパーフレアが高松宮記念を制した。
※背景灰は表4と重複
表3は非L競走優勝馬のうち、後にJRAで重賞を制した18頭である。先に触れたモズスーパーフレアがその筆頭格で、ほかに府中牝馬Sを制したサラキアの名前も見られる。2018年夏の500万特別優勝後は勝利から遠ざかっていた馬が、2020年の小倉日経オープン優勝を足がかりに府中牝馬S制覇、エリザベス女王杯2着と飛躍し、さらに年末には有馬記念でクロノジェネシスの僅差2着に激走したのは記憶に新しい。
※背景灰は表3と重複
最後に表4は、後にJRA重賞を制したリステッド競走優勝馬。このうちアルクトスは盛岡でダートのJpn1・南部杯を連覇しているが、2019年に非L競走の欅Sを制しており表3と重複。今年のドバイゴールデンシャヒーンで2着になったレッドルゼルも同様で、表4でのみ名前が挙がった馬としてはヴィクトリアM2着のランブリングアレー、高松宮記念3着のダイアトニックあたりが代表になる。
以上、3・4歳以上のオープン特別優勝馬の次走以降について、リステッド競走優勝馬と非L競走優勝馬に分けて検証してみた。まだリステッド競走が設定されてから3年足らず。今後この傾向に変化が出る可能性もあるが、現状では重賞でリステッド競走優勝馬を非L競走優勝馬より上位にとる必要はない。しかし一方で、オープン特別で戦っているかぎりはリステッド競走優勝馬が優位。この2点を踏まえてレースの予想にあたりたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。