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JRA-VANコラム

名伯楽最後の重賞としても見逃せない中山記念を展望する

2022年2月24日 16:00配信
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2020/12/26 中山11R ホープフルステークス(G1) 1着 10番 ダノンザキッド

伝統のG2・中山記念は、春の中距離G1にもつながってくるレース。また、2月末はJRA騎手・調教師の入れ替わりの時期にあたり、藤沢和雄調教師と高橋祥泰調教師はこのレースが最後の重賞出走となる。そんな一戦を、過去10年のデータから展望していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

表1は人気別成績。いずれも3勝を挙げている1~3番人気を比較すると、2、3着が2回ずつある2番人気の成績がもっともよい。続いて、2、3着が1回ずつある3番人気。しかし、1番人気は2、3着が1回もない。過去2年は1番人気が連勝したものの、過去10年のスパンでは安定感に欠ける傾向が出ている。あとは5番人気が1勝しているだけだが、4~8番人気はいずれも複勝率20~40%を記録し、中穴馬が2、3着に絡むことは多い。しかし、9番人気や10番人気以下から3着以内に入った例はなく、大穴馬の激走はあまり期待できないようだ。

■表2 牡牝別・所属別・年齢別成績

表2は牡牝別、所属別、年齢別の成績をそれぞれ示したもの。「牡牝別(牡馬はセン馬に含む)」では、牝馬の高い好走率が目を引く。出走数は少ないが、出てきたら注目する価値はあるだろう。「所属別」では、関東馬の9勝に対して関西馬は1勝のみ。好走率からも、中山記念では地元の関東馬が優勢とみてよさそうだ。「年齢別」では4、5歳で計9勝をマーク。基本的には若い馬ほど好成績で、4歳は複勝率48.0%と安定している一方、8歳以上は3着1回のみと苦戦傾向が見られる。

■表3 出走間隔別成績

表3は出走間隔別成績。なお、前走が障害戦だった馬と、出走を予定していたレースを過去2戦連続で取り消していた20年3着のソウルスターリングも集計から除外した(表4も同様)。下調べの段階で成績の差を確認できた「中5週以下」と「中6週以上」に分けて示しており、好走の大半を中6週以上がマークしている。年によって異なるが、前走が中山金杯だと中6週か中7週となり、この間隔がひとつの目安となるのではないか。一方、中5週以内で出走した延べ38頭の好走は2着2回のみ。出走例の約3分の1を占めることを考えても、かなりの苦戦と言わざるをえないだろう。

■表4 前走クラス別成績

表4は前走クラス別成績。前走G1と前走G3の好走例が多く、好走率も高い。また、数は少ないが前走海外も同等の好走率を残している。なお、前走海外の9頭は、すべて年末に香港で行なわれるG1を使っていた。ただし、前走G1でもジャパンCは【0.0.0.4】、前走G3でも東京新聞杯は【0.0.0.6】、前走海外でも香港Cは【0.0.0.3】と、それぞれ結果を出していないレースが存在する点には注意したい。

一方、前走G2は連対例がない。なかでも前走AJCCは【0.0.0.11】と意外なほどの苦戦を強いられている。また、前走オープン特別とリステッド競走も合わせて【0.1.0.18】と、厳しい結果に終わることが多いようだ。

■表5 前走G1出走馬の各種データ

表5は前走G1出走馬に関するデータで、海外G1は集計の対象外とした。前走1、2番人気や前走1、2着はいずれも複勝率60%台を記録。G1で本命・対抗級に評価された馬や、実際に連対を果たした馬はさすがの力を見せている。全体的な傾向としては前走人気のほうが直結しているようで、前走G1で1~5番人気なら合わせて【5.3.2.11】、勝率23.8%、複勝率47.6%の好成績を収めている。一方、6番人気以下は【0.1.1.12】、勝率0.0%、複勝率14.3%。ノーチャンスとは言えないが、好走率としてはかなりダウンしてしまう。

■表6 前走G3出走馬の各種データ

表6は前走G3出走馬に関するデータ。前走人気の目安は前走G1組と同じで、前走G3で1~5番人気なら【4.3.1.8】、勝率25.0%、複勝率50.0%。逆に6番人気以下だと【0.1.1.12】とあまり結果が出ていない。また、前走着順では1~3着に入っていれば【4.2.2.5】、勝率30.8%、複勝率61.5%と有望。しかし、4着以下だった場合は【0.2.0.15】と苦しくなってしまう。

■表7 中山・福島の芝重賞1~3着実績

過去10年の中山記念好走馬の戦績をチェックしたところ、中山・福島の芝重賞で1~3着の実績を持つ馬が多いことに気がついた。同じ中山はもちろん、コース形態に中山との共通性がある福島の実績も活きてくるようだ。

それを示したのが表7。この通り、当該実績を持つ馬が、(出走歴を持ちながら)持たない馬より好成績を収めていることが見て取れる。また、「前年以降」の条件を加えると好走率がさらに高くなる。今年でいえば、当該実績が2021年以降ならより重視したい。

また、中山・福島の芝重賞に出走したことがない馬も思った以上に好成績を収めている。2着が多い傾向ではあるが、複勝率35.3%、複勝回収率138%は侮れない。未知数な馬の激走にも注意を払っておいたほうがよさそうだ。

【結論】

過去10年フルゲート(16頭)で行なわれたことはなく、そのうち7年は11頭立て以下と、例年はあまり頭数が揃わない中山記念。しかし、今年は17頭のエントリーがあり、2010年以来のフルゲートもありうる情勢だ。

この17頭のうち、中山・福島の芝重賞で1~3着の実績を持つ馬は10頭と半数以上にのぼる。もう少し絞り込みたいところで、前年以降(今回は2021年以降)にこの実績を記録した馬に限ると7頭。また、好走の大半を占める中6週以上も条件に加えると、ウインイクシード、コントラチェック、ダノンザキッド、パンサラッサ、ヒュミドール、ワールドリバイバルの6頭が残る。

この6頭のうち、前走G1出走はダノンザキッド、パンサラッサ、ワールドリバイバル。表5の項で述べた前走G1組の好走条件に合致する馬には、マイルCSで5番人気だったダノンザキッドが挙げられる。皐月賞こそ15着と崩れたものの、ホープフルS1着、弥生賞3着と中山実績も十分。好走率が高い4歳馬である点も評価できる。

前走G3出走はウインイクシード、コントラチェック、ヒュミドール。3頭とも前走が6番人気以下だった点は気になるものの、前走福島記念2着のヒュミドールはマークしておきたい。

なお、コントラチェックは前走G3組の好走条件は満たさないものの、中山重賞3勝は随一で、好走率が高い牝馬でもある。引退する藤沢和雄調教師の管理馬という点でも注目したい存在だ。牝馬にはあと1頭、マルターズディオサもいるが、前走東京新聞杯という相性の悪いローテがどうなるか。そのほか、意外に好成績の中山・福島の芝重賞に出走したことがない馬として、エブリワンブラック、レッドサイオン、ワールドウインズの3頭の名前も挙げておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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