JRA-VANコラム
スプリンターズSとオールカマーの枠順傾向は今年もリンクする!?
秋のG1シーズンがいよいよ始まり、今週は中山競馬場でスプリンターズSが行われる。レース予想の前に気になるのが馬場状態の傾向。先週の開催は台風の影響を受けて、馬場状態が不安定だった。中山の芝は結局、日曜日正午までには良馬場に回復し、メインレースのオールカマーは比較的いい状態でレースが行われたように見えた。ただ、馬場の内と外では大きな違いがあったように感じた。オールカマーは内目の枠から出た馬が上位を占めて、4コーナーで外を回した上位人気馬は末脚不発に終わったからだ。
そこで今回は、最近2年のオールカマーとスプリンターズSで上位にきた馬の枠順を確認し、両レースに関連性があるかを調べてみることにした。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は2022年オールカマーの成績。冒頭で述べたように1着が2枠のジェラルディーナ、2着が1枠のロバートソンキー、3着が3枠のウインキートスと、上位は内目の枠だった馬が占めた。馬場の内側の状態が良かったせいか、終始経済コースを通ることができた馬が有利だったようだ。長期休養明けのバビットが、大外の8枠からハナへ行き、見せ場十分の粘りの走りを見せて4着に残った点も印象に残った。
一方、1番人気デアリングタクトや3番人気ヴェルトライゼンデは4コーナーで外を回って追い上げるも、伸びを欠いて着外に敗れた。馬場の外目を通らされたのが痛かったように見えた。仮にこの時のオールカマーの馬場状態が今週も続くのであれば、スプリンターズSも枠順やコース取りが、勝敗に大きく影響する可能性が高い。
最近2年のオールカマーとスプリンターズSを振り返ると、両レースの枠順傾向はリンクしている雰囲気がある。表2は2020年のオールカマーの成績(5着以内、以下同様)。勝ったのは4枠のセンテリュオで、4コーナーで大外を回して最後の直線に入り、鮮やかな末脚を繰り出して差し切った。2着には8枠のカレンブーケドール、3着には7枠のステイフーリッシュが入線。馬場の外目が伸びる状況で、7枠と8枠の2頭が馬券になった。
表3は2020年のスプリンターズSの成績。優勝したグランアレグリアは3~4コーナーで15番手とかなり後方に位置していたが、上がり3ハロン33秒6という強烈な瞬発力で直線大外から一気に差し切った。また、10番人気ながら3着に入ったアウィルアウェイは大外の8枠から出て、3~4コーナー16番手から上がり3ハロン33秒7の決め手で追い込んだ。
表4は2021年オールカマーの成績。この年は1枠1番のウインマリリンが勝利し、1枠2番のウインキートスが2着に入った。上がり3ハロンもこの2頭が最速(6着サトノソルタスを含めて3頭)であり、その他の馬にとってはお手上げの展開だった。6枠のグローリーヴェイズは2コーナーで15番手にいながらよく3着に入った。
表5は2021年のスプリンターズSの成績。2枠のピクシーナイトが勝利し、6枠のレシステンシアが2着だった。この2頭はスピード・先行力が秀でた地力上位馬だったので、枠順は関係なく好走していたかもしれないが、3着に入った10番人気のシヴァージは枠順の恩恵が強くあった印象だ。元々は追い込みタイプだった同馬が、3~4コーナーを5番手で通過し、なおかつ上がり3ハロン33秒4の脚をマークできたのは、1枠1番を引けたからだろう。もし他の枠だったら、3着に入るのは難しかったかもしれない。
以上、わずか2年のデータながら両レースともに2020年は『外枠』、2021年は『内枠』が有利だった印象を受ける。今年も両レースの枠順傾向がリンクするのであれば、今週のスプリンターズSは内枠が有利になる可能性が高いのではないだろうか。
枠順とは関係なく実績面だけに注目すれば、過去2年のスプリンターズSで上位にきた馬は、同じ年に芝1600m以下の重賞を一つは勝っていた。特にセントウルSの勝ち馬が有力。ダノンスマッシュ、レシステンシアが2着に入っている。また、シルクロードSの優勝馬にも注目。アウィルアウェイ、シヴァージと3着に入った穴馬がともに、同年のシルクロードSを勝っていた。
【結論】
馬場状態は天気次第で刻一刻と変化することもあるので、直前になってみないとわからない面がある。ただ、前週のオールカマーを見たうえで考えると、今のところ今年のスプリンターズSは内枠に注目してみたい。
表6は今年のスプリンターズS出走予定馬。今年芝1600m以下の重賞を勝っているのはウインマーベル、ジャンダルム、ダイアトニック、テイエムスパーダ、ナムラクレア、ナランフレグ、メイケイエール、メイショウミモザ、ヴェントヴォーチェと9頭いる。特にシルクロードS(中京芝1200m)、京王杯SC、セントウルSと3勝を挙げているメイケイエールが実績的に大きく期待できそう。枠順次第にはなるが、連軸として信頼できる存在ではないだろうか。あとは、内目の枠を引けた馬にチャンスがありそう。脚質・人気を問わず、そのあたりに注目して狙い馬を決めてみたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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