JRA-VANコラム
実績か、未知の魅力か? 朝日杯FSを分析する
先週の阪神JFに続き、今週も阪神芝1600mを舞台に2歳G1の朝日杯FSが行われる。昨年の優勝馬ドウデュースは日本ダービー馬となり、2着にマイルCSを制することになるセリフォス、3着にNHKマイルCを勝利するダノンスコーピオンとハイレベルなレースだった。今年はどんな素質馬があらわれるか、注目の一戦だ。今回は2014年以降近8年のレース傾向ならびに今秋の阪神芝1600mにおける2歳戦での種牡馬別成績から狙える馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は朝日杯FS近8年の人気別成績。1番人気馬は2019年サリオスら最多の3勝をあげており、連対率62.5%・複勝率87.5%と高い。4着以下に敗れた1回も16年ミスエルテの4着で、安定して上位に入っている。2番人気馬は18年アドマイヤマーズら2勝で、連対率50.0%・複勝率62.5%と1番人気馬に次いで高い。これら1・2番人気馬の単勝回収率・複勝回収率はともに100%以上となっている。
以下、3・6・7番人気馬が1勝ずつ。2・3着馬は下位人気まで幅広く分布しており、10番人気以下も2着1回、3着3回と馬券に絡んでいる。ダノンプレミアムが勝利した17年(1→3→2番人気)、ドウデュースが優勝の昨年(3→1→4番人気)以外は7番人気以下の伏兵が1頭は馬券に絡んでいる。出走馬のレベルは年によって違いがあり、今年は伏兵の出番があってもいいのではないか。
表2はキャリア別成績。出走数こそ少ないものの、1戦の馬は15年リオンディーズが勝利している。2戦と3戦の馬が3勝ずつで並んでおり、連対率では3戦、複勝率では2戦が上回っている。4戦の馬は1勝をあげており、勝ち馬はすべて4戦以内の馬だった。複勝率では少ないキャリアの馬が高い傾向にあり、5戦以上の馬からは3着以内馬が出ていない。
表3は前走距離別成績。前走1600m組が16年サトノアレスら過半数の5勝をあげており、複勝率トップだ。昨年は2着セリフォス(前走デイリー杯2歳S1着)が該当しており、毎年1頭は3着以内に入っている。1600m組の中では前走サウジアラビアRC組が【2.2.1.4】で19年サリオスら2勝をあげ、複勝率55.6%と好相性だ。
前走1800m組は昨年のドウデュース(前走アイビーS1着)、前走2000m組は15年リオンディーズ(前走新馬戦1着)がそれぞれ優勝。前走1400m組からは一昨年のグレナディアガーズ(前走未勝利戦1着)が勝利しているが、連対率・複勝率ともに低め。この中で京王杯2歳S組は【0.2.2.18】で勝ち星がなく、2・3着止まりとなっている。
表4は前走着順別成績。近8年の勝ち馬はすべて前走で勝利をおさめていた。前走1着馬は前走時の人気別成績も示したが、優勝馬8頭は前走を2番人気以内で勝利していた。前走1番人気で勝利した馬の複勝率が高いのだが、今年の出走予定馬には該当馬がいない。前走2番人気1着馬は昨年のドウデュースら3勝をあげており、勝率は前走1番人気1着馬とそれほど差がない。前走5番人気以下で勝利した馬はいずれも着外に敗れている。
前走2着馬は2・3着1回ずつで、複勝率は10.0%と低い。なお、前走5着以下から好走したのは18年2着クリノガウディー(前走東京スポーツ杯2歳S7着)の1頭のみで、巻き返しは厳しい。
表5は前走上がり別成績。前走上がり1位の馬が一昨年のグレナディアガーズら4勝をあげ、複勝率33.3%と高い。昨年は2着セリフォス、3着ダノンスコーピオンが該当している。前走上がり2位の馬が3勝で、これら前走上がり2位以内が大半の7勝をあげている。前走上がり3位以下からは唯一17年ダノンプレミアムが勝利している。
近3年では3着以内馬9頭中8頭が上がり1位の馬で、昨年1着ドウデュースは前走上がり2位だった。近年の朝日杯FSは前走での上がり上位馬を重視すべきレースとなっている。
※1勝または2連対以上している種牡馬を掲載。
表6は今年10月開始の4回開催から先週までの阪神芝1600mで行われた2歳戦における種牡馬別成績。モーリス産駒が最多の3勝をあげており、2勝でハーツクライ、エピファネイア、ドゥラメンテ、リアルスティール各産駒が続いている。なかでもリアルスティール産駒はエンファサイズ、オールパルフェと今回の朝日杯FSに登録している2頭が勝利している。他にもダイワメジャー、イスラボニータ各産駒も複勝率50%を超えているが、朝日杯FSには登録馬がいなかった。
なお、出走数最多のロードカナロア産駒は勝ち星がなく、複勝率もそれほど高くない。
<結論>
※フルゲート18頭
今年の主な有力馬は表7のとおり。
今回人気を集めそうなのはダノンタッチダウンだが、前走のデイリー杯2歳Sは上がり最速ながら2着。秋以降の阪神マイルで勝ち星がないロードカナロア産駒ということもあり、押さえ評価までに留めたい。
替わって一番手に評価したのがドルチェモア。前走サウジアラビアRCを上がり最速の脚で勝ち切っている。キャリア2戦で、前走2番人気1着もプラス材料だ。先行して速い上がりも使えるだけに好勝負できる可能性は高いと見る。
実績馬を相手に未知の魅力を感じさせるのがレイベリング。前走東京芝1600mの新馬戦で上がり最速となる33秒1の脚で3馬身半差の快勝。新馬戦とはいえ、スローペースで直線だけで後続を引き離すのは能力の高さゆえといえる。キャリア1戦馬ながら勝ち切ってしまう可能性もありそうだ。
他ではコース相性の良さを見せるリアルスティール産駒のオールパルフェもしっかりと押さえておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。
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