JRA-VANコラム
高松宮記念へと続くG3・阪急杯をデータから読み解く
今回取り上げる阪急杯は、春のスプリント王決定戦・高松宮記念を見据える一戦。過去10年、ここをステップに本番を制した馬が3頭、2、3着に入った馬が延べ5頭と、前哨戦としてしっかり機能している。4週後のG1にもつながるレースを、過去10年のデータから分析していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。1番人気が過去10年で4勝。2番人気も1~3着に2回ずつ入り単複の回収率は110%オーバーと、本命・対抗級が水準以上の成績を残している。加えて4番人気も2着4回、3着1回を記録して複勝回収率172%と、1着こそないものの好成績と言っていい。ただし、1、2番人気および4番人気の割りを食っているのか、3番人気の好走が一度もないことには気をつけたい。そのほか、6、7番人気も計3勝を挙げており、中穴馬が勝ち切るケースも少なからず見られる。
表2は、牡牝別・年齢別・所属別の成績をまとめたもの。「牡牝別」で出走が多いのは牡馬(セン馬は牡馬に含む)だが、勝率~複勝回収率は5項目とも牝馬のほうが高い数値を記録している。「年齢別」では、4~7歳が2、3勝ずつをマーク。また、複勝率ベースでは4、5歳の数値が若干高いものの、6~8歳との差はさほど大きくはない。年齢に関してはフラットな見方をしたほうがよさそうだ。「所属別」では、地元の関西馬が大半の好走を記録。ただし、関東馬の好走4回は6番人気1着、7番人気1着、8番人気2着、2番人気3着という内訳で、来たときには穴をあける傾向が見られる。
表3は前走クラス別成績。なお、海外戦の2走はいずれもG1の香港スプリントで、国内G1とは集計を分けている。その前走海外は、13年のロードカナロア、16年のミッキーアイルで2戦2勝とさすがの結果を残しているものの、今年該当する馬はいない。
前走国内戦の場合、連対率や複勝率で優位に立つのはG1やG2に出走していた馬。ただし、前走G1は3着2回、前走G2は2着5回と、勝ち切れない傾向も見え隠れする。前走G1・G2組を中心視する場合でも、取りこぼすケースの想定は必要かもしれない。そのほか、前走G3以下のクラスから臨む場合は、いずれも複勝率10%台かそれ以下にとどまり、厳選する必要がありそうだ。
表4は前走距離別成績。基本的には前走芝を対象とし、前走ダートの場合は距離を問わず集計を分けて表している。
「同距離」は勝率、連対率、複勝率、複勝回収率の数値がトップ。単複の回収率も水準以上で、もっとも堅実な成績を収めている。「今回短縮」は最多の4勝を挙げ、単勝回収率111%も優秀。一方、「今回延長」は全体的に数値が苦しい。また、今回延長の3勝中2勝は前走香港スプリントのロードカナロアとミッキーアイルが挙げており、前走国内に限った今回延長は【1.2.2.52】、勝率1.8%、複勝率8.8%と苦戦の傾向が強い。
そして、前走ダートは5頭中2頭が好走して複勝率40.0%、複勝回収率632%。19年2着のレッツゴードンキのように元々芝で実績を収めていた馬だけでなく、17年3着のナガラオリオンが初芝で激走した例もあり、侮れないパターンとなっている。
表5は前走着順別成績。なお、前走海外戦は集計から除外した(表7も同様)。前走1着馬はあまり成績がよくなく、3勝クラスからの昇級馬を除いても【0.1.1.9】と振るわない。また、前走クラスを問わず、今走(阪急杯)で1~5番人気に推された前走1着馬が【0.0.0.8】と結果を出していない点も大いに気がかりだ。
となると、有力なのは前走2~5着馬ということになるか。特に前走4、5着は、合算して【2.5.2.18】、勝率7.4%、複勝率33.3%、単勝回収率106%、複勝回収率215%という好成績。これは前走2、3着の【1.2.1.14】、勝率5.6%、複勝率22.2%、単勝回収率36%、複勝回収率55%より明らかに有利な数値で、ひとつの狙い目となりそうだ。
前走6着以下馬は、合算して【4.2.6.85】、勝率4.1%、複勝率12.4%、単勝回収率58%、複勝回収率52%という成績。前走2~5着馬に比べて好走率は下がるものの、計12回の1~3着を記録し、単純計算で年に1頭(以上)は3着以内に入ってくる。ここから上手に選んで、馬券の的中につなげたいところだ。
表6は、前走2~5着馬に関するデータから、傾向が出ているふたつをまとめたもの。ひとつは「前走競馬場」で、関西圏(阪神、京都、中京、小倉)を使っていた馬が好走の大半を占め、好走率でも関東圏(東京、中山、新潟、福島)を大きく上回る。このケースで前走が関東圏だった唯一の好走馬は22年2着のトゥラヴェスーラだが、前年5月の京王杯SC以来とかなり間隔があいていた。前年秋以降に出走歴がある前走2~5着馬に関しては、前走が関西圏かどうかを確認しておきたい。
もうひとつは「騎手」で、前走2~5着馬に同じジョッキーが継続騎乗した場合の数値が非常にいい。ただ、乗り替わりの好走率も致命的というほどではなく、複勝回収率155%なら軽視はできない。
表7は、前走6着以下馬に限った前走人気別成績。この通り、前走6着以下でも、その前走で1~4番人気に推されていた馬の成績は悪くないことが見て取れる。合算して【3.2.3.13】、勝率14.3%、複勝率38.1%、単勝回収率114%、複勝回収率127%という成績で、巻き返しの候補として有力な存在となりうる。
一方、前走5番人気以下かつ6着以下だった場合は、合算して【1.0.3.72】と苦戦傾向が見られる。ここから巻き返しに成功した4頭の内訳を確認すると、14年3着のレッドオーヴァルと21年3着のジャンダルムはG1連対の実績を持ち、19年1着のスマートオーディンは重賞3勝馬。13年3着のオリービンは実績面でやや見劣るが、それでもNHKマイルCでは4着に入り、重賞で複数の好走を記録していた。
【結論】
今年の阪急杯には17頭が登録。フルゲート18頭のため、全馬が出走可能な状況となっている。この17頭を「前走1着馬」「前走2~5着馬」「前走6着以下馬」の3グループに分けて、今回のデータ分析から有望と思われる馬を紹介していきたい。
今回は前走2~5着馬から見ていきたい。該当する3頭で注目度が高いのは、かつての2歳王者グレナディアガーズだろう。前走2~5着から好走した馬の大半が、前走で関西圏のレースを走っていたことを表6の項で確認したが、阪神C2着以来の同馬はこの条件をしっかり満たす。また、前走G2や前走同距離という点も好材料。惜しむらくは、前走が短期免許のクリスチャン・デムーロ騎手だったため継続騎乗にはならないことだが、有力な存在であることは間違いなさそうだ。
ほかに前走2~5着に当てはまるのは、前走北九州短距離S4着のリレーションシップと、前走武庫川S3着のショウナンアレスで、この両馬も前走は関西圏のレースを走っている。前者は苦戦傾向の距離延長に該当し、後者は3勝クラス3着(※注:過去10年、前走3勝クラス出走の8頭はすべて前走1着)だった点は気になるものの、チェックはしておきたい。
前走6着以下馬は、その前走で1~4番人気だと油断できないことを表7の項で確認した。今年の登録馬では、グレイイングリーン、ダディーズビビッド、ラルナブリラーレが前走1~4番人気に該当。この3頭では、牝馬かつ前走と同距離のラルナブリラーレを最注目としたい。
一方、前走5番人気以下かつ6着以下の場合は、G1好走や複数の重賞勝ちといった実績がなければ巻き返しが難しいことを述べた。その観点から実績を確認して目にとまるのは、アーリントンC1着のほか重賞で2着3回、3着1回を記録し、G1でもマイルCS5着があるホウオウアマゾン。初ダートだった前走の根岸Sでは12着に大敗も、阪急杯では前走ダートが好成績を残しており、プラス材料に転じる可能性も考慮したい。
最後に前走1着馬だが、表5の項で述べた通り、阪急杯ではあまり結果を残していない。特に1~5番人気に推された場合は【0.0.0.8】と、まさかの大不振。今年の登録馬には前走1着馬は3頭おり、そのなかでも上位人気が予想される3連勝中のアグリにとっては不吉なデータかもしれない。逆に言えば、この不利なデータを乗り越えてくるようなら、今後さらに楽しみが増してくるのではないか。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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