JRA-VANコラム
トライアルの傾向に変化あり!?最近の皐月賞の傾向とは?
今週日曜日に中山競馬場で皐月賞が行われる。今年のメンバーは実力が拮抗していて、人気的にも混戦になりそうな雰囲気がある。そんななか勝利を飾るのは果たしてどの馬か。いつものように過去10年のデータを分析し、レースの傾向を探ることにする。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV を利用した。
近年は桜花賞同様、皐月賞においてもトライアルの重要度が下がっている印象を受ける。皐月賞のトライアルは弥生賞ディープインパクト記念、スプリングS、若葉Sの3つが組まれているが、いずれのレースも使わずに皐月賞本番に直行するケースが当たり前になっている。調教技術や育成牧場の設備向上により、休み明けでも馬が仕上がりやすい環境ができているように感じる。トライアルを使う有力馬が減少することで、対戦経験がないケースが増えて、力関係の把握もより難しくなっている印象だ。
表1は過去10年の皐月賞で好走した馬。2014年から16年にかけて勝利したイスラボニータ、ドゥラメンテ、ディーマジェスティはいずれも前走が共同通信杯だ。この頃からトライアルを使わないで皐月賞を勝つケースが確立しつつあった。19年以降は休み明けで皐月賞を使われる傾向がさらに強まり、前年の朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS)やホープフルS以来でも普通に好走できるようになった。さらに22年イクイノックスは前走東京スポーツ杯2歳S1着以来、21週のブランクがありながらも2着と好走を果たした。
トライアルの重要度が低下している一方で、重要度が増していると感じるのが朝日杯FSとホープフルSだ。特にホープフルSは17年にG2からG1に昇格したことが大きい。翌年以降の皐月賞に強く影響を与えている。18年以降、皐月賞で好走を果たしたサンリヴァル、サートゥルナーリア、コントレイル、ガロアクリーク、タイトルホルダーの5頭にホープフルS出走経験があった。
同様に18年以降、皐月賞で好走したサリオス、ステラヴェローチェ、ジオグリフ、ドウデュースの4頭に朝日杯FS出走経験があった。つまり18年以降の過去5年で3着以内に好走した15頭中9頭が、朝日杯FSかホープフルSいずれかに出走していたということになる。現在はこの両2歳G1が皐月賞の最重要ステップレースになっていると言っても過言ではない。
一方、18年以降、朝日杯FSやホープフルSに出走経験がなくて皐月賞で好走した馬は6頭(エポカドーロ、ジェネラーレウーノ、ヴェロックス、ダノンキングリー、エフフォーリア、イクイノックス)いる。そのうち重賞勝ち馬は5頭。しかもジェネラーレウーノは3連勝中、ダノンキングリーとエフフォーリアは共同通信杯を含めて3戦3勝の無敗。イクイノックスは東スポ杯2歳Sを含めて2戦2勝という目立つ戦績だった。G1出走経験がないという、不利になるかもしれない点をカバーするには、それだけの地力や底力が必要ということだろう。
表1には各馬のデビュー戦の月と、その時の着順を記している。比較的早い時期にデビューしていた馬が多く、なおかついい結果(1着)を出しているという印象だ。過去5年ではサートゥルナーリアやサリオス、ジオグリフが6月のデビューであり、大半の馬が10月までには新馬を走っている。年明け以降にデビューして皐月賞で好走したのは、過去10年でキタサンブラック1頭しかいなかった。12月デビューもリアルスティール1頭だけであり、年末のデビューでは遅いと言える。仮に朝日杯FSやホープフルSに出走せずとも、早めにデビューして賞金を稼ぐことが、余裕を持ってクラシックを目指すのに大きなメリットとなる。
以上の点を踏まえて、今年の皐月賞を展望する。出走予定馬は表2の通り。
フルゲート18頭。他にも登録馬あり(4/5時点)。
まず昨年の朝日杯FSに出走したのはグラニットとダノンタッチダウン。総合的な成績を考えると朝日杯FS2着のダノンタッチダウンの方が断然有力と見るべきだろう。休み明けで芝1600mしか経験がないという点は気になるが、20年2着のサリオスも同じで、似たタイプとも言える。
ホープフルS出走経験馬はグリューネグリーン、トップナイフ、ファントムシーフの3頭。この中ではファントムシーフが1番手の評価。ホープフルSは4着だったが、サンリヴァルやタイトルホルダーもホープフルSは4着だった。過去10年、かなり活躍が目立つ共同通信杯の勝ち馬であり、6月にデビューして1着という成績も強調材料だ。
朝日杯FS・ホープフルS不出走組では、京成杯を含めて2戦2勝のソールオリエンス、きさらぎ賞を含み3連勝中のフリームファクシ、スプリングSを含み3戦3勝のベラジオオペラあたりに目が行く。この3頭で優劣をつけるのは難しいが、まずは2戦2勝のキタサンブラック産駒という点でソールオリエンスに注目してみたい。昨年、イクイノックスは皐月賞2着、日本ダービー2着とクラシックは勝てなかったが確かな実力を示し、休み明けを問題にしなかった。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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