JRA-VANコラム
「あの馬」への挑戦権を獲得するのは? フローラSを分析
今回はオークスのトライアル競走にあたるG2・フローラSを取り上げる。過去10年のフローラS組はオークスで計7頭が1~3着に入り、そのうち21年にはユーバーレーベンが樫の女王に輝いている。圧巻の末脚を武器に二冠を目指す桜花賞馬リバティアイランドへの挑戦権を獲得するのはどの馬か。過去10年のデータから占ってみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。フローラSの1番人気は2勝、2着1回という成績で、本命馬としてはやや心許ない印象を受ける。対して2番人気は連対率50.0%、複勝率70.0%を記録し、3~5番人気も各2勝かつ複勝率30.0~40.0%と良好な成績を収めている。また、9番人気が3着3回、10番人気以下も計6頭が1~3着を記録し、いわゆる人気薄の激走も少なからず見られる。ただし、単勝100倍以上になると【0.0.0.35】と好走例がない。
表2は馬番別成績。フローラSの舞台となる東京芝2000mはスタート直後に左カーブを迎える独特のレイアウトで、枠(馬番)については気になるところだろう。まず1着馬の傾向を確認すると、1~5番枠が計7勝をマーク。1~3着馬というくくりでも、1~7番枠からはすべて2頭以上が好走している。12、15、18番枠からも1着馬が出ており、外寄りの馬番に入ってもチャンスはあるが、全体としては内の馬番がやや有利と言えそうだ。
表3はキャリア別成績。キャリア1戦で出走した8頭はすべて着外という結果。キャリア2戦なら1着馬2頭を含む3頭の好走があるものの、同程度の出走例があるキャリア3~5戦と比較して勝率、複勝率、複勝率は落ちる。また、少しデータを掘り下げたところ、「キャリア1、2戦で1~3番人気」というケースでは【0.0.0.9】と、すべて4着以下に終わっていることがわかった。キャリア2戦のソールオリエンスがG1を制した直後だけに、G2でもキャリアを絶対視する必要はなくなったのかもしれないが、気になるデータではある。
表4は前走クラス別成績。出走例が多いのは、前走未勝利戦、前走1勝クラス、前走G3のいずれか。このうち好走例も多いのは前走1勝クラスおよび前走G3で、前走未勝利戦は好走率が少し落ちる。また、前走1勝クラスから1着馬が6頭出て、前走G3は安定感では上回るものの1着馬が2頭にとどまる点も押さえておきたい。なお、前走が未勝利戦、1勝クラス、G3だった馬に関しては、表5~7の項で関連するデータを補足説明する。
そのほか、前走オープン特別と前走G1にも好走例が1頭ずつある。前走オープン特別だったのは16年1着のチェッキーノ。同馬は前走アネモネS1着のあと桜花賞には出走せず、オークスを目標にフローラSへと駒を進めてきた。前走G1だったのは22年2着のパーソナルハイで、同馬は桜花賞6着から中1週での出走だった。
※「前走レース」はフローラS1~3着馬が出たレースのみ掲載
表5は、前走G3出走馬に関する各種データをまとめたものである。まず注目したいのが「所属」で、前走G3出走の場合は関東馬しか好走例がない。このことと関係がありそうなのが「前走レース」で、好走例があるフラワーC、フェアリーS、クイーンCはいずれも関東で開催される。つまり、関西馬にとっては2戦連続で関東に遠征しての重賞出走となり、3歳春の牝馬にとっては過酷なローテーションになってしまうのかもしれない。
「前走人気」は、前走のG3で1~3番人気に推されていた馬は合算して【1.4.2.8】、複勝率46.7%と高い確率で3着以内に入ってくる。一方、4番人気以下だった馬は【1.1.3.26】、複勝率16.1%と、好走例はあるものの率が落ちてしまう。「前走着順」の相関関係はさほど明確ではなく、巻き返した例も少なからず見られる。
表6は、前走1勝クラス出走馬に関する各種データをまとめたものである。このパターンでも「所属」は注目で、好走した12頭中9頭を関西馬が占める。前項で確認した前走G3出走馬とは逆の傾向であることに注意が必要だ。「前走距離」は芝1800mか芝2000mが主流で、好走率、回収率ともに芝1800mが優勢だ。
「前走人気」は4番人気までには入っておきたいところだが、そのうち1番人気はフローラSで【0.1.1.10】と意外に結果を出していない。一方、5番人気以下だった馬は【0.0.1.23】と、これは明らかに苦戦している。「前走着順」はできれば1着、悪くても2着には入っておきたい。3着以下だとフローラSで【1.0.1.32】となり、好走例こそあるものの苦戦の傾向が否めない。
表7は、前走未勝利戦出走馬に関する各種データをまとめたものである。なお、当然ではあるのだが、該当する31頭はすべて前走の未勝利戦で1着だった。
この組でチェックすべき項目はふたつで、まずは「前走人気」。前走の未勝利戦で1番人気に推されていた馬の成績はなかなか優秀で、複勝回収率212%という点からも侮れない。一方、2番人気以下は【0.0.1.22】で、13年3着のブリュネットの例はあるものの、過大な期待は持ちづらい。もうひとつの「前走タイム差」も興味深い傾向が出ている。まず、2着馬に0秒1以下の僅差だった13頭はフローラSで全滅。また、0秒4差以上だった5頭もすべて4着以下に終わっている。したがって、0秒2~0秒3のほどほどのタイム差で未勝利戦を勝ち上がってきた馬が結果を出しやすいようだ。
【結論】
今年のフローラSには15頭がエントリー。フルゲート18頭に満たないため、全馬が出走可能となっている。この15頭のうち、今回の分析で有望と思われるデータに合致する馬を紹介していきたい。
前走G3組は2頭。そして、この組の好走はすべて関東馬であることを表5の項で確認した。該当する2頭のうち、関東に所属するのはゴールデンハインド。前走のフラワーCは7番人気4着という成績で、表5の項で述べた前走人気・着順の条件には合致しないものの、好走例がないわけではない。同じことは前走クイーンCで7番人気4着のイングランドアイズにも言えるのだが、こちらは関西馬。母にオークス馬ヌーヴォレコルトを持つ血統だけに、過去10年のデータを覆してなんとか本番へと進出したいところだろう。
前走1勝クラス組は6頭。このうち、表6の項で述べた前走人気・着順の条件である「前走1勝クラスで1~4番人気かつ1、2着」を満たすのはキミノナハマリアだけだ。関西馬であることや、前走の君子蘭賞が芝1800mであることも好都合といえる。唯一これも表6の項で述べた通り、前走1番人気が意外に結果を残していない点は気にかかるものの、残る5頭の前走1勝クラス組より有望なデータが揃っているのは間違いない。
前走未勝利組も6頭。しかし、表7の項で述べた「1番人気かつ0秒2~0秒3差で1着」の両方に合致する馬は見当たらない。そこで片方だけ満たす馬を挙げておくと、前走1番人気だったのがソーダズリング、0秒2~0秒3差勝ちだったのがドゥムーランとなる。
そのほかの臨戦過程では、前走アネモネS3着のクイーンオブソウルがいる。同じくアネモネSで1着だった16年のチェッキーノと同一視まではできないが、一応チェックしておく。
なお、登録15頭のうち、キャリア1戦馬が3頭、キャリア2戦馬が5頭と、今年はキャリア1、2戦馬が半数以上を占めている。表3の項で述べた通り、過去10年のフローラSで「キャリア1、2戦で1~3番人気」に推された9頭はいずれも4着以下に終わっており、上位人気に推される馬がいる場合は注意が必要になるかもしれない。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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