JRA-VANコラム
もはや二冠は確定的なのか? オークスを展望する
圧倒的な末脚を武器に、桜の女王の座を射止めたリバティアイランド。二冠がかかるオークスでは断然の人気も予想されるが、不安材料はないのだろうか。今回も過去10年のデータを元に、分析を加えていきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。1番人気は過去10年で5勝、複勝率80.0%と高い信頼性を誇る。加えて、2、3番人気も水準以上の成績を残している。人気薄の激走をまったく期待できないわけではないが、全体としては上位人気馬がしっかり走っている様子が見て取れる。
表2は枠番別成績。過去10年、6枠の好走馬はいないものの、さらに外の7、8枠から1~3着に入った馬が計10頭いる。また、1~5枠からもすべて好走馬が複数出ており、極端な有利不利はなさそうだ。ただし、細かく見ていくと気になる点はある。7、8枠は単複の回収率が低めで、特に1着になったのはアーモンドアイ、ラヴズオンリーユー、スターズオンアースの3頭。つまり、7、8枠からでも好走は十分可能ではあるが、勝ち切るとなると相当な実力が求められるのかもしれない。
表3はキャリア別成績で、前走が桜花賞だった馬と、それ以外だった馬に分けている。「前走桜花賞」の場合、出走例が多いのはキャリア4~6戦で、このうち好走例が多いのはキャリア4、5戦。一方、キャリア6戦も2勝を挙げているが、2、3着は1回もなく、安定感では少し見劣る印象だ。キャリア3戦の好走は20年1着のデアリングタクトだけだが、ほかに13番人気4着が1頭、7、8番人気から5着に入った馬が1頭ずついて、内容的には見た目の数字以上と言っていい。ただし、前走桜花賞かつキャリア7戦以上だった10頭はすべて掲示板外に終わっており、これは苦しいようだ。
続いて「前走桜花賞以外」のキャリア別成績。いわゆる別路線組においてもキャリア4戦が複勝率30.0%でトップの数値を残しており、現在のオークスではちょうどいいキャリアなのかもしれない。また、22年2着のスタニングローズが唯一の好走例であるキャリア7戦以上の苦戦傾向も同様だ。そのほか、キャリア3戦や5、6戦からはいずれも複数の好走馬が出ている。ただし、キャリア2戦で臨んだ6頭はすべて掲示板外という結果。今年の皐月賞を2戦2勝のソールオリエンスが勝利したように、最近はキャリア不足というだけでは軽視しづらくなりつつあるものの、気になるデータではある。
表4は前走着順別成績。この表を見る限り、前走では3着以内には入っておきたい。具体的な数字を記しておくと、前走1~3着だと【9.8.6.73】、勝率9.4%、複勝率24.0%という成績だが、前走4着以下では【1.2.4.74】、勝率1.2%、複勝率8.6%と、好走率が大幅に下がってしまう。
とはいえ、前走4着以下から7頭が好走しているのも事実であり、10年間の数字としては決して少なくはない。そこで、前走4着以下からオークス好走を果たした7頭の戦績をチェックしたところ、うち6頭は「前々走で重賞1着」の実績を収めていることがわかった。該当馬を列記しておくと、13年1着のメイショウマンボ(前々走フィリーズR1着)、14年3着のバウンスシャッセ(同フラワーC1着)、15年2着のルージュバック(同きさらぎ賞1着)、17年3着のアドマイヤミヤビ(同クイーンC1着)、21年2着のアカイトリノムスメ(同クイーンC1着)、22年3着のナミュール(同チューリップ賞1着)となる。
※オークス1~3着馬を出した前走のみ掲載
表5は前走レース別成績。なお、格付けは現在のものに統一している。過去10年のオークス1~3着馬のうち、前走桜花賞が16頭、前走フローラSが7頭と、この2レースだけで75%以上を占める。そこで、この両レースに関しては、表6、7の項でそれぞれ補足データを紹介する。
桜花賞とフローラS以外の前走では、過去10年で2頭のオークス馬を出した忘れな草賞が重要だが、今年は登録馬なし。そのほかでは、フラワーC、スイートピーS、皐月賞、矢車賞からオークスで好走した馬が各1頭いる。前述の忘れな草賞を含み、これら5レースはいずれも芝1800m以上というのが共通点。そして、牡馬混合G1の皐月賞を除く4レースの場合、いずれも前走1着馬がオークス好走を果たしている。
表6は、前走桜花賞出走馬に関するふたつのデータをまとめたもの。前走着順については、表4の項で前走を問わないデータを確認済だが、桜花賞に限っても3着以内に入っておくことは重要だ。前走桜花賞で1~3着なら【6.2.3.13】、勝率25.0%、複勝率45.8%だが、4着以下だと【1.2.2.49】、勝率1.9%、複勝率9.3%と段違い。なお、前走桜花賞4着以下からオークスで3着以内に巻き返した馬は5頭いるが、いずれも桜花賞で1~4番人気と高く評価されていた馬だったことも記しておきたい。
もうひとつは前走4角通過順。表6の通り、桜花賞で4角1~4番手だった馬は過去10年のオークスで連対がなく、18年3着のラッキーライラックが唯一の好走となっている。つまり、桜花賞で先行していた馬がオークスで結果を残すのは思った以上に難しい。そんなデータが残っている。なお、前走着順の条件を加味した「前走桜花賞で4角5番手以降から1~3着」だった馬は【6.2.2.8】の好成績で、そのなかでもオークス当日に1番人気なら【4.1.0.0】と完璧に近い。
表7は、前走フローラS出走馬に関するふたつのデータをまとめたもの。まず前走着順については、フローラS1着なら複勝率40.0%となかなかの好成績。また、確率は少し下がるものの、フローラS2、3着からオークスで連対を果たした例もある。フローラS4着以下はさらに数字を落とし、該当19頭のうち16年のビッシュ(フローラS5着→オークス3着)が唯一の好走例となっている。
ただし、前走フローラSの場合は、着順よりも上がり3Fタイム順に着目すべきかもしれない。表7を見れば、フローラSで上がり1位か2位を記録した馬が、オークスでも好成績を収めていることは一目瞭然。しかし、フローラSで上がり3位以下だった32頭のうち、オークスで好走したのは13年2着のエバーブロッサムしかいない。ちなみに、前述のビッシュも、フローラS5着ながら上がり順は1位だった。逆に、フローラS1着でも上がり3位以下だと【0.0.0.3】と、オークスでは苦戦の傾向が見られる。
【結論】
さて、リバティアイランドである。前走桜花賞の好走データのうち、前走1~3着はもちろん合格。また、4角16番手から圧倒的な末脚を披露しており、もうひとつの好走条件である4角5番手以下も文句なく満たす。さらに、1番人気が確実な情勢であり、表6の項で述べた「桜花賞で4角5番手以降から1~3着」かつ「オークス1番人気」なら【4.1.0.0】という条件も、無事にゲートインさえ果たせばクリアするだろう。キャリア4戦も問題なく、今回のデータ分析からは二冠達成に向かって視界良好と考えたい。
このリバティアイランド以外に、桜花賞で4角5番手以降から1~3着に入った馬は見当たらない。2着のコナコーストは4角2番手、3着のペリファーニアは4角4番手と先行していた点が、オークスでは少々気にかかる。そこで4着以下の中から、表4の項で述べた巻き返し条件である「桜花賞1~4番人気」と「前々走で重賞1着」を満たす馬を探すと、3番人気4着のハーパー(前々走クイーンC1着)が該当する。桜花賞で4角6番手だった点も好走条件にも合致し、巻き返し候補ナンバーワンとしたい。
続いて前走フローラSを見ていく。表7の項で述べた通り、この組はフローラSで上がり1、2位を記録していることが重要だった。しかし、今年のフローラSで優先出走権を得た1着のゴールデンハインドは上がり7位、2着のソーダズリングも上がり5位にとどまった。その点、フローラSでは4着ながら、上がり1位をマークしたイングランドアイズが抽選を突破するようなら注目したい。母が14年のオークス馬ヌーヴォレコルトという点にも魅力を感じる人は少なくないはずだ。
前走が桜花賞、フローラS以外の場合は、芝1800m以上で1着が条件であることを表5の項で述べた。過去10年は出走例がない前走未勝利戦のクインズカムイを除けば、今年該当するのはミッキーゴージャスで、この馬も15年オークス馬のミッキークイーンを母に持つ。表3の項で確認した通り、キャリア2戦で経験不足の懸念はあるものの、血統的なポテンシャル込みでデータを覆す大駆けに期待する手はあるかもしれない。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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