JRA-VANコラム
3歳馬の頂点に輝く馬は? 日本ダービーを分析する
3歳馬の頂点を決する一戦・日本ダービー。1932年の創設以来、シンザンやディープインパクトといった歴史に名を残す数多くの名馬が栄冠を手にしてきた。過去10年では2015年のドゥラメンテと20年のコントレイルが皐月賞に続くクラシック2冠を達成。コントレイルは秋に菊花賞も制し三冠馬に輝いている。今年はどの馬が頂点に立つのか。過去の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
過去10年の人気別成績は、1番人気【3.2.2.3】と3番人気【3.3.1.3】が複勝率70.0%の好成績。連対馬20頭中19頭は5番人気以内から出ており、6番人気以下から連対を果たした馬は2019年に12番人気で優勝したロジャーバローズ1頭のみとなっている。対して3着馬は10頭中6頭が7番人気以下で、ここ3年の1~3着は1→2→10番人気、4→1→9番人気、そして3→2→7番人気の順だった。3連単を購入するなら1、2着に上位人気馬、3着には穴馬という組み合わせに妙味がありそうだ。
枠番別では1枠が【3.2.1.14】と唯一3勝を挙げ、勝率、連対率、複勝率いずれもトップ。1枠1番が【2.2.1.5】複勝率50.0%、2番は【1.0.0.9】同10.0%のため、特に最内1番を引いた馬への注目は欠かせない。また6番人気以下の馬にかぎった成績をみると1~4枠が【1.0.5.50】、5~8枠は【0.0.1.71】と、6番人気以下の好走馬7頭中6頭は1~4枠から出ていた。
種牡馬別の成績をみると、過去10年の優勝馬はディープインパクト(6勝)、ハーツクライ(2勝)、キングカメハメハ(同)に集中していたが、このうち今年出走を予定しているのはハーツクライ産駒1頭のみである。
そこで種牡馬の系統に注目すると、やはりサンデーサイレンス系に好走馬が多い。表には連対馬の父のみを挙げたが、ほかにブラックタイド、ジャスタウェイ、ドリームジャーニーが3着馬を出している。一方、ミスタープロスペクター系はキングカメハメハ産駒を除けば【0.0.0.17】と好走なし。キングカメハメハ直仔のロードカナロアが【0.0.0.4】、同じくルーラーシップが【0.0.0.6】に終わるなど、キングカメハメハ以外のミスタープロスペクター系は不振だ。ロベルト系(2着2回)、ノーザンダンサー系(3着2回)、ナスルーラ系(3着1回)も目立たず、サンデーサイレンス系中心という見立てでいいだろう。
続いて表4は過去10年の日本ダービー3着以内馬について、日本ダービー前までの成績を調べたものである。30頭すべてに共通するのは2勝以上を挙げていたことで、キャリア3戦だった2021年のシャフリヤール以外の29頭は3連対以上を記録していた。また、2014年まではマイネルフロスト(4着以下4回)など4着以下に複数回敗退していた馬の好走も見られたが、2015年以降の3着以内馬24頭はすべて「4着以下1回以内」だった。
前走別では、皐月賞組が出走数、好走数とも最多で【7.9.6.69】。連対率17.6%、複勝率24.2%もトップだ。中でも前走皐月賞1~3着馬は【4.8.3.14】複勝率51.7%と安定しており、複勝回収率も100%に到達。同じ皐月賞組でも同レース4着以下だった馬は【3.1.3.55】で複勝率11.3%・複勝回収率34%にとどまる。
表6はその皐月賞4着以下から日本ダービーで3着以内に入った7頭である。すべて2走前は重賞で連対しており、皐月賞では5番人気以内(6頭)または単勝10倍未満(5頭)のいずれかには該当していた。皐月賞でさほど注目されておらず、結果も馬券圏外だった馬がダービーで巻き返すのは困難だ。
最後に表7は前走皐月賞以外から好走した8頭で、前走が青葉賞または京都新聞杯(6頭)、前走1~2番人気(6頭)、そして前走連対(7頭)に該当する馬が多い。プリンシパルS組のコズミックフォース、毎日杯組のシャフリヤールが好走した2018年と21年は、この3項目すべてを満たす馬が不在だった。今年は3頭が該当するため、皐月賞組以外なら青葉賞組か京都新聞杯組に絞りたい。
【結論】
日本ダービーは皐月賞上位馬が安定した成績を残している(表5)。今年の皐月賞は1着ソールオリエンス、2着タスティエーラ、そして3着ファントムシーフという結果で、3頭とも4着以下は1回以内だ(表4)。しかしそれぞれの父をみると(表3)、ソールオリエンスの父キタサンブラックは好走馬の多いサンデーサイレンス系で、キタサンブラック自身も既に昨年2着のイクイノックスを出している。これに対し、タスティエーラの父サトノクラウンとファントムシーフの父ハービンジャーは過去10年で連対馬が出ていないノーザンダンサー系のため見劣りは否めない。ソールオリエンスの中心は不動だ。
皐月賞4着以下の組では、フリームファクシ(9着)とベラジオオペラ(10着)がともに馬券圏外1回で(表4)、皐月賞では5番人気以内(表6)の支持を受けていた。ただ、フリームファクシはルーラーシップ産駒、ベラジオオペラはロードカナロア産駒で、やはり血統面から強くは推しづらい(表3本文)。
このことから、ソールオリエンス以外なら皐月賞組よりも別路線組に注目したい。青葉賞を1番人気で制したスキルヴィング(【3.1.0.0】、父キタサンブラック)、京都新聞杯を同じく1番人気で制したサトノグランツ(【3.1.0.1】、父サンデーサイレンス系サトノダイヤモンド)の2頭が有力だ。もう1頭加えれば、青葉賞2番人気2着のハーツコンチェルト。全成績【1.1.1.2】と1勝馬で馬券圏外も2回あることはマイナスだが、表3本文で記したハーツクライ産駒という点が強調材料になる。皐月賞2着以下の各馬は、この3頭に次ぐ候補としたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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